コーセーが、皮膚常在菌の数が多い人は少ない人に比べて“肌が粗い”、“毛穴が多い”、“赤みが強い”など、一部の肌状態と菌数の間に相関があることを確認した。同研究は肌の菌数を簡便に計測する手法を確立したことによる成果であり、肌研究においてこれまで一般的だった指標に“菌数”という新たな評価軸を与える。
皮膚には目には見えない常在菌が存在し、これまでの肌研究の分野では、遺伝子解析技術を用いることで常在菌の種類と存在比率を分析することが一般的だった。コーセーでは常在菌比率は人それぞれで安定的で、肌状態を説明するには限界があると考えた、皮膚常在菌の数に着目した計測方法の確立と、肌状態との関係性を調査した。
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同社は菌に共通して存在する「tuf gene」という遺伝子に対象を見出し、実験手法の検討を重ね、皮膚常在菌の数を網羅的かつ高い定量性をもって計測する方法を確立した。
また、皮膚常在菌の数と肌状態の関係を調査するため、20歳から80歳の一般女性269人の頬部の皮膚の一部を採取し、今回開発した計測方法で分析。人によって菌数が1平方センチメートルあたり数100個から数10万個とバラつきがあることがわかった。加えて、年齢と反比例して菌数が少なくなる傾向も認められた。
この計測結果で菌数が多かったグループと少なかったグループの肌状態を比較したところ、菌数が多いグループでは「肌の粗さ」のスコアが大きく、毛穴が多い傾向にあった。この結果は、肌の凸凹や毛穴が多い肌の方が、常在菌が住みやすい可能性があるためだという。また、菌数が多い人の方が肌の赤みが大きいことが判明し、これは常在菌やその代謝産物によって肌の炎症が引き起こされるためではないかと考えられる。皮脂量についても菌数が多い人の方が数値が大きく、皮脂が常在菌の栄養源になっていることなどが示唆。皮脂量は加齢とともに減少することが知られているが、年代別の解析においても菌数が多い方が、皮脂量が多い傾向という傾向が認められる。
一方で、角層水分量やpHといった菌の生育に関係しそうな要素は菌数との間に相関関係はなかった。このことから、顔の菌数に与える影響は水分量やpHよりも、皮脂量や毛穴数、肌の粗さ(凸凹の多さ)のほうが大きいことが考えられる。これらの結果から、肌状態と皮膚常在菌との関係性を研究する上で菌数は重要な因子のひとつだと言える。
同社は、「皮膚常在菌は保湿成分を産生して肌を保護し、免疫応答により病原菌の定着を防ぐなど、人体と共生する有益な存在」であると考え、今後も肌と常在菌の研究を継続。肌の健康に有用な成果の創出に取り組んでいく。
なお、同研究の成果は、2023年9月の日本化粧品技術者会誌(SCCJ ジャーナル)に掲載。2024年5月に同誌の「2023年度 最優秀論文賞」を受賞した。
皮膚の常在菌数と肌状態の関係(女性、269人、20~80歳)
Image by: コーセー
個人ごとの皮膚常在菌の存在比率の一例
Image by: コーセー
皮膚の常在菌数と皮脂量の年代別分析
Image by: コーセー
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