luv(ラブ)。
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早耳の音楽リスナーなら、この名前にピンとくるだろう。メンバー全員が2003年生まれの現役大学生かつ、結成からわずか1年あまりながら業界の内外で大きな注目を集める、関西発の5人組バンドだ。
バンドの中心人物として作詞とサウンドメイク、クリエイティブ全般を手掛けるのは、ボーカル&ギターのHiyn(ヒン)。その類まれなる才能を武器に、ソロアーティストのミヤケ武器としても活躍するHiynを形づくるもの、そしてluvのニューシングル『好人紀行』に込めた思いに迫った。
音楽とファッション
― 音楽的なルーツについては他のインタビューでも答えられていたので、少し音楽から離れたところから聞かせてください。まず、Hiynさんの出身地は?
兵庫県の川西ってとこです。生まれてから今までずっと実家で。
― これからも関西をベースに活動を?
大学卒業のタイミングで上京する予定です。
― そうなんですね。大阪と東京で音楽シーンに差を感じることはありますか?
めちゃくちゃ感じます。東京はわりと音楽の幅広い知識を持った人たちがライブハウスに集まってきてて。大阪にもそういう人はいるんですけど、母数が圧倒的に違う。東京では盛り上がったけど大阪ではまったく盛り上がれへん、みたいなことも結構あるんで。
― 東京の人はインテリジェントなんですね。
僕らのルーツと似ている人が多い気がします。
― luvの結成は2023年6月とのことですが、メンバーにはHiynさんから声かけを?
そうですね。まず、DJのOfeenと僕が幼馴染みで、中学校で同じサッカーチームになってからの付き合い。ドラムのShoは高校が一緒。ベースのZumとキーボードのRosaは大学のジャズ研が一緒で声をかけました。
― 全員が同じ大学ってわけじゃないんですね。
歳は全員一緒なんですけど、大学はバラバラです。
― 大学はちゃんと通えていますか?
結構みんな真面目に行ってますよ。僕は起きられないし、家から2時間かかるんで……卒業もちょっと危ないです。
― 文学部だそうですが、音楽だけでなく本にも多く触れてきたのでしょうか?
一時期は読んでたんですけど、今となってはもう活字ファッキン状態で。でもたしかにluvの歌詞には、文学的なノリがあるかもしれません。
― 純文学のような、前衛詩のような、ユニークな歌詞が多いですよね。どういう本を読んできましたか?
推理小説を。中学生のときはずっと東野圭吾とか。あとは松岡圭祐の『黄砂の籠城』がめっちゃおもろかったなあ。
― 音楽や文学以外でHiynさんを形づくっているものはなんでしょう?
服は大好きですね。インディーズ期のluvのジャケをやってくれていた子が同い年で、服飾の学校に行ってて、そいつからいろいろ教えてもらっています。
― 服はどこで買うことが多いですか?
大阪の中崎町にある「giorno loobus」って店。最近できたんですけどめっちゃかっこいい。luvのMVもそこで撮ったりしてて。
あとはまた中崎町で「然」という店にもよく行きます。
― ファッションは子どものころから好きだった?
父親がいろんな文化に敏感なので。
― 音楽もお父さんの影響でEric ClaptonやB.B.Kingを幼少期から聴いてきたそうですね。
感性までがっつり影響を受けてますね。父親が最近まで、シボレーのでっかいバンに乗っていて、小さいころはなんも思ってなかったんですけど、今見たらめっちゃかっこよくて。
― お父さん、服も良いものを持ってそう。
でも父親はUSで、僕はユーロが好きなので、そこは違うんです。
― 好きなブランドはありますか?
COMME des GARCONSがめっちゃ好きで、基本ギャルソンって感じ。giorno loobusで初めて買ったスーツもギャルソンです。
― luvはビジュアル面もすごくファッショナブルですけど、バンドとしての見せ方も意識していますか?
そうですね。僕の見てきたバンドが、見た目も全員かっこいいから。見た目と音楽の良さは関係ないけど、音楽の聴こえ方はやっぱりオーラ的な部分にも左右されるので。
― luvへの評価で「おしゃれ」というキーワードがよくあげられていますが、冷静に考えるとおしゃれって曖昧な言葉ですよね。
自分が聴いてきたミュージシャンたちへの憧れをそのまま表現している感じなので、要するに先人はすごいということですね。90’sのヒップホップやソウルなどをおしゃれやと思って聴いてきたわけじゃなく、ただ好きで聴いてきただけなんで。それを今はファッションとして聴いている人が多くなったのかなと。
入り口はもちろん「おしゃれ」でもいいけど、最終的には「マジでluvいいな」ってなってくれたらうれしいですね。
luvの根本は「楽しく」
― Hiynさんが曲作りを始めたのはいつからでしょう?
中3とかかな。最初はただの趣味で、徐々に人に聴かせるようになったんですけど。高校卒業前、受験が終わったタイミングで1日3曲を1か月間バーッて作ったときがあって。
― すごい。そこから趣味を超えたレベルになっていった?
そうですね。
― 曲作りで最初に手応えを感じた瞬間は覚えていますか?
(ミヤケ武器名義の)個人の曲でアルバムに入っている『黒電話』って曲があるんですけど、人生で初めて納得できる1曲ができて、やっとスタートラインに立てたと思えた曲でした。
― ソロアーティストのミヤケ武器としての活動からスタートして、現在は主にluvのHiynとして活動しています。ご自身の中で、すみ分けのようなものはありますか?
ミヤケ武器として初めて音楽業界に入って、その中でどう音楽に向き合っていくのかいろいろ葛藤も生まれていたなか、ノリで始めたのがluv。だからluvの根本は「楽しく」ですね。
ソロやとどこの現場に行っても一番年下で、でも演者側やから敬語を使われる。そういう大人な感じを1人で抱えるのはしんどいけど、luvで5分割ならなんとか(笑)。
― たしかにミヤケ武器の仕事には、大人がかなり関わってくるプロジェクトもありますよね。
それでしか経験できないこともあって、いろいろ学べました。
― 一方で、luvの活動は純粋に楽しみたいと。
マジで楽しいです。
― そもそも音楽をやっていくうえでの指針や、大切にしていることはありますか?
できるだけプライドを捨てないようにしながら、より多くの人のグッドミュージックになれたらと。
― 多くの人に聴いてほしいという気持ちは強い?
最近強くなってきましたね。最初は好きな人だけ聴いてくれればいいというノリでしたが。
― やっぱりメジャーに来てから心境に変化が?
メジャーに行くと、luvで動く人の数が違うから、そのぶんこっちもいろんな人に届けたいなと。謙虚ではいたいなと思っています。
ニューシングル『好人紀行』
― 2024年9月4日には、メジャー第二弾となるシングル『好人紀行』がリリースされます。前作の『Fuwa Fuwa』も耳に心地いい曲でしたが、今回はよりポップスに振り切っている印象です。
「ほんま、聴いてくれ!」って感じで。『好人紀行』はluv として2曲目にできた曲で、実は個人的には出さないでおこうかとも思っていた曲なんです。
― 2曲目ということは、かなりluvの原点に近いような曲ではある?
ですけど、わかりやすすぎやなという気持ちもあって。でもそのぶん、いろんな人に届く可能性があるということで出すことになりました。
― シティポップ的な懐かしい雰囲気もあります。
はっぴいえんどの『風街ろまん』に、現代のドリームポップをプラスしたいなって。
― 今回リリースする際に挑戦したことはありますか?
一般的にこういう曲調やと、歪んだギターかアコースティックなギターが入ってるんですけど、エレキでエフェクターをフェイザー増し増しにして、ドリーム感を増し増しにして、けっこう現代寄りにできたかなと。
― 『好人紀行』という、漢字のタイトルは珍しいのでは?
luvでは2曲目だったんですけど、それまで2、300曲ぐらいを作ってきた中で、初めての漢字タイトルで。「これが今のアジアサウンドです」と押し出したい気持ちがあったのかも。
― 内容的にはどういう?
あるカップルの何気ない日々の小さなことから幸せを汲み取るような歌詞で。
― そう聞くとすごくかわいい曲ですね。
結構きもいんですけど(笑)。『Fuwa Fuwa』もそうですけど、歌詞をちょっと聴こえやすくしてて。でもこの日本語ハキハキというのが個人的にはほんまに苦手で。
― それはシンプルに恥ずかしいってこと?
恥ずかしいし、自分のルーツがあんまり出てない感じがして。でもそのぶんいろんな人に届いているみたいだからよかったです。これからは曲ごとに使い分けたいなと。
― そういう音楽性や表現の幅広さ、柔軟さがluvの魅力でもありますよね。
たしかに。ソロだけのころにプロデューサーのcorin.さんという人から、いろんなタイプの曲を作ることで自分のルーツの曲でももっといい曲ができると言われたので、ほんまに総ジャンルの曲を作ったんです。そのおかげで、自分のルーツはこれやからこれしかやらないという概念はなくなりました。
― バンドメンバーも個性豊かで。過去のインタビュー記事を読むと、Rosaさんとかおもしろいですよね。
やばいっす。彼だけクラシックがルーツで。luvのサウンドはそのクラシカル味がかなりでかいです。
― ブラックミュージックに影響を受けてきた数多くのアーティストの中でも、たしかな「luvっぽさ」があります。
luvの聴きやすいところは、キーボードとベースが担っていますね。その2人のルーツが、メインストリーム的なノリを汲んでいて、いい按排にしてくれているのかなと思います。
― メジャーデビュー前からずっと、かなり早いペースで曲を発表していますよね。
メジャーまでずっと宅録で、僕が全部ミックスやマスタリングをしてポンポン出して、そのぶんめっちゃ早くここまで来たんですけど。傍から見るとトントン拍子やなってよく言われるんですけど、この1年でえげつない量のいろんなことをやって、脳みその使用量えぐいですよ(笑)。
― トントン拍子というか、単純に全力疾走していただけだという。
ガチで休みなしやったんで。
― このまま全力で走り続けますか?
とりあえずこのまま行けるとこまで行きたいですね。というのもあってこの『好人紀行』なのかな。
― 今後luvというバンドをどう進めていきたいか、目標があれば教えてください。
とりあえず、来年のフェスは総ナメしたいです。
Profile _ Hiyn(ヒン)
メンバー全員2003年生まれの新世代5人組フューチャーソウルバンド「luv」のVocal & Guitar。Luvは2023年6月始動、関西出身、メンバー4人が現役大学生。90s-Y2KのNeoSoulを中心にJazz、Hip-Hopなどのブラックミュージックに影響を受けたサウンドを奏でる。卓越したセンスと演奏力から生み出されるライブパフォーマンスで注目を集めている。2024年9月4日に最新シングル「好人紀行」をリリース。
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