Image by: Burberry
今年、40周年を迎えたロンドンファッションウィーク。5日間に渡って開催され、その最終日に締めくくりを任されたのが、ダニエル・リー(Daniel Lee)が率いる「バーバリー(BURBERRY)」だ。昨シーズンでは、ロンドン中心部の駅や著名カフェをジャックするなど、ランウェイ外でも大きな広告施策が見られたが、それは今シーズンでも継続。1834年創業の老舗百貨店「ハロッズ」を2月いっぱいテイクオーバーし、館全体をブランドカラーのナイトブルーに染め上げた。「ハロッズ」の名物ドアマン「グリーンマン」は、「バーバリー」の新チェック柄のユニフォームに衣替えし顧客を招き入れた。その制服が、ファッションブランドによってデザインされるのは初だという。
ハロッズ 外観
ショー会場となったのは、ロンドン東部のヴィクトリアパークに設置された、ブラウンカラーの特設テント。ダニエルのデビューコレクション以来、3回連続で公園でのコレクションを発表となり、ブランドの原点であるアウトドアのレガシーを印象づける戦略的な選択だ。床はモスグリーンのチップで覆われ、ゲストの席には厚手の茶色のクッションが用意された。前回までは、タープやブランケットなどにチェック柄が配されていたが、今回はモノクロームのアースカラーで統一され、落ち着きが感じられた。
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Image by: BURBERRY
会場には、スケプタ(Skepta)やバリー・コーガン(Barry Keoghan)、リトル・シムズ(Little Simz)、カノ(Kano)、ソン・フンミン、チョン・ジヒョンなど豪華ゲストが集結。日本からは森星が駆けつけた。すべてのゲストが着席すると、エイミー・ワインハウスの「You Know I'm No Good」が鳴り響く。DJのBenji Bがキュレーションするショー音楽は、毎回英国のミュージシャンがフィーチャーされてきており、ブリアル、ディーン・ブラントに続き、今回はエイミー・ワインハウスだ。その理由は、コレクションの内容とマッチしているからというより、エイミーの伝記映画『Back to Black』が4月にイギリスで封切られるからだろうか。そういえばエイミー役のマリサ・アベラ(Marisa Abela)もショーに来場し、フォトコールに応えていた。
スケプタ
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Iラインのトレンチコートをまといファーストルックとして歩いてきたのは、かつてのスーパーモデル、アギネス・ディーン(Agyness Deyn)。のちにナオミ・キャンベル(Naomi Campbel)やリリー・コール(Lily Cole)、リリー・ドナルドソン(Lily Donaldson)といった英国を代表するモデルのほか、リアム・ギャラガー(Liam Gallagher)の息子のレノン・ギャラガー(Lennon Gallagher)やフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の娘のマヤ・ウィグラム(Maya Wigram)など2世モデルもランウェイを闊歩した。トレンチコートは、沈んだチェック柄のワックスドコットンやレザーなど豊富なバリエーションが見られ、ダニエルが「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」時代から好んでいるモップのようなディテールも多く登場。フロントに配されたオーバーパンツ由来のロングジップやスタッズなど、パンク要素も随所に取り入れられている。
アギネス・ディーン
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レノン・ギャラガー
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マヤ・ウィグラム
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そのほか、ヘソまで届くほどに深いVネックのニット、床すれすれのマキシスカート、ウォッシュ加工によるレザーコート、ジップのうねった縮絨ウールジャケット、英国産ウールを使用したワイドパンツなども印象的だった。
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“控えめ”というのが今シーズンのキーワードだろう。モスグリーン、ミリタリーグリーン、カーキ、ブラウン、グレーといったカラーパレットだけならず、ブランドのエッセンスであるチェック柄の使い方にしても、これまでの大胆な色使いとは異なり、控えめな印象だ。そしてその“控えめさ”は、イギリスの国民性に深く結びついている。実際、「バーバリー」のチェック柄も、表地ではなく、そもそもはレインコートの裏地として使用されていたのが起源だ。
Image by: BURBERRY
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Image by: BURBERRY
Image by: BURBERRY
ダニエルが「バーバリー」で実現しようとしている“ブリティシュネス(英国らしさ)”、その意味する範囲は広大だ。服飾の歴史を見れば一目瞭然であり、他文化まで辿ればなおさらだ。服、音楽、モデル、モチーフ、ミュージシャン、キャンペーンで、“ブリティシュネス”の包括的な接続を図ろうとしてきたが、就任一年目はややチグハグだったように思える。しかし今シーズンは、どのカルチャーにも通底する英国的メンタリティを取り入れたことで、まとまりを見せることができたようだ。強いて言えば、アウトドアやキャンプとの本格的な結びつきももっと見てみたいが(実際にトレンチコートをアウトドアシーンで着る人は、今日ではあまりいない)、これはダニエルの基盤が安定してから展開されるのかもしれない。ラグジュアリーファッションハウスにおける、アウトドアの席はまだ空いているのだ。
今シーズンより、新クリエイティブディレクターにショーン・マクギアー(Seán McGirr)を迎える「マックイーン(McQUEEN)」が、コレクション発表の場をパリに移したことは、ロンドン・ファッションウィークにとって大きな痛手となった(「マックイーン」が英国資本でなく、フランスの「ケリング」傘下であることを痛感する)。いま、ダニエルは「バーバリー」だけでなく、ロンドン・ファッションウィークの看板をも背負っている。メガブランドである「バーバリー」の改革は、一朝一夕にできるものではなく、まだ道半ばである。しかし、今回のコレクションは、ダニエルが何かを掴んだことを感じさせるものだった。
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