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インバウンド売上が過去最高を更新するなど、円安の加速が業績の“追い風”となった百貨店業界。三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、阪急阪神百貨店の大手4社の2023年度の業績と主なトピックスを解説するとともに、今期のポイントをまとめた。
※()内の増減は前年同期比
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三越伊勢丹HD
■三越伊勢丹ホールディングス 百貨店業 通期業績(2023年4月〜2024年3月)
総額売上高:1兆1373億4100万円(11.8%増)
セグメント利益:451億5900万円(121.0%増)
主なトピック
- 伊勢丹新宿本店の売上高は過去最高売上を更新。三越日本橋本店は1500億円、銀座店は1000億円を超える売上を記録。地域主要店舗もそれぞれ大幅増収を達成した。
- 国内百貨店のインバウンド売上が初の1000億円を突破。
- 2024年2月開催のグループ上位顧客向けのイベントは過去最高の売上高を計上。売上には海外外商顧客が寄与し、約160組が来場したという。
- 伊勢丹新宿店は新宿三丁目に移転して90周年を迎えた。
- 三越日本橋本店は創業350周年。さまざまな催事を開催し、オリジナル包装紙「華ひらく」では「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」とタッグ。
- 伊勢丹新宿店本館3階に上質なデイリーウェアが揃う新コンセプトゾーン「コンテンポラリー(Contemporary)」がオープン。
- 伊勢丹新宿店が開催する毎年恒例のフレグランスの祭典「サロン ド パルファン」は参加ブランド数過去最多、売上は前年比微増だった。
2025年3月期の注目
- 百貨店業は全体で営業利益515億円を計画し、500億円の大台を突破する見通し。
- 伊勢丹新宿本店では初めて4000億円を超える計画。三越銀座店も過去最高の更新を目指す。
- 地域各社については岩田屋三越を中心に大きく売上を伸ばす考え。
- 国内百貨店のインバウンド年間売上は1563億円(前期比44%増)を計画。この数字は、コロナ前の年間売上高の2倍強にあたるという。5月14日時点で足元の状況は好調で、通期目標をクリアする水準で推移している。
- 中国・上海市で展開する「上海梅龍鎮伊勢丹」を6月30日に閉店。
- タイ・バンコクの複合開発「ワン バンコク」のオフィス事業と小売事業への参画を発表。
2025年3期通期業績予想
総額売上高:1兆1820億円(3.9%増)
セグメント利益:515億円(14.2%増)
高島屋
■高島屋(国内百貨店)通期連結業績(2023年3月~2024年2月)
総額売上高:7900億円(6.9%増)
営業利益:204億円(85.5%増)
主なトピック
- 売上高増大、商品利益率改善、コスト削減により大幅な営業増益。
- 円安もありインバウンドが好調。昨年に引き続き高額品への需要が高い。
- ファッションの売上は前年比11%増だが、コロナ前の2019年比では同19%減。ジャケットやスーツといったオフィス需要やハレの日需要で動きが見られた。
- グループ商業施設において原則休業日を導入。
- 高島屋新宿店でのプロレス催事が話題に。
- ジュンと高島屋限定の新業態「モア サロン エ ロペ(moi salon et ropé)」を開発。
- 「立川高島屋S.C.」や「京都高島屋S.C.」が開業。百貨店区画縮小と専門店ゾーン拡大の動きが進む。
- 独自で運営を行うサイト「高島屋クラウドファンディング」をスタート。
- 高島屋元会長の仁科和雄氏が逝去。
- 鈴木弘治会長が辞任。(訃報)
- 公式サイト上で販売したクリスマスケーキの破損が相次ぎ騒動に。謝罪会見を実施。
- エルメス岡山高島屋店が閉店。中四国の店舗がゼロに。
- ベースアップを実施。
2025年2月期の注目
- 2024年度のインバウンド売上は目標850億円(前年比24%増)を見込む。中国の団体旅行の増加でなく、円安や他の地域からの訪日の増加などを織り込んでいる。ただし保守的な設定であり、達成は十分可能としている。
- 柏高島屋ステーションモールが、春のリニューアルを実施。
- タカシマヤ ゲートタワーモールが開業以来最大規模のリニューアルを実施。
- 玉川高島屋S・C「ガーデンアイランド」が5月に閉館。
- 「高島屋岐阜店」が7月末に閉店。
2025年2期通期業績予想
総額売上高:8266億円(4.6%増)
営業利益:225億円(10.5%増)
大丸松坂屋百貨店
■大丸松坂屋百貨店 通期連結業績(2023年3月〜2024年2月)
総額売上高:6854億2200万円(13.8%増)
事業利益:255億3200万円(97.3%増)
主なトピック
- 訪日外国人観光客による売上が大きく伸長。香港、台湾、韓国など東アジアがメインで、中国本土からの観光客も徐々に増加している。免税売上高は約250億円。
- 引き続きラグジュアリーや時計、アートカテゴリーが売上を牽引。
- 店舗別ではターミナル立地の大丸東京店や大丸梅田店、大丸札幌店が好調。また、大丸心斎橋店においては訪日外国人が売上を押し上げ、入店客数とともに大きく改善。
- ファッションサブスクリプション「アナザーアドレス」のサービス拡充に加えて、冷凍グルメ宅配のサブスクリプションサービス「ラクリッチ」をスタートさせるなど、オンラインビジネスを強化。アナザーアドレスではブランド「リアドレス(reADdress)」を立ち上げ、一点物のレンタルに乗り出した。
- 百貨店業界としては初となるオリジナル3Dアバターの販売を開始。
2025年2月期の注目
- 売場改装による一時的な影響はあるものの、富裕層の消費およびインバウンド売上の伸長などにより増収を予想。
- インバウンド効果の大きい大丸心斎橋店と、改装が奏功している大丸札幌店は2桁増収の見込み。
- 松坂屋名古屋店では大型改装を予定。名古屋店は大型改装工事に伴う売場面積減少影響により伸び幅は縮小を予想。
- 大丸心斎橋店 本館が今年7月から2025年にかけて、2019年の建て替え以来初の大規模リニューアルを実施へ。
2025年2期通期業績予想
総額売上高:7313億円(6.7%増)
営業利益:266億円(4.2%増)
阪急阪神百貨店
■阪急阪神百貨店 通期連結業績(2023年4月〜2024年3月)
総額売上高:5736億8500万円(17.2%増)
営業利益:217億9900万円(111.1%増)
主なトピック
- 高額商材、インバウンド売上が強い都心店が好調。
- 阪急本店は圧倒的な地域一番店として国内・インバウンド売上ともに成長を続け、売上高は3000億円を超え、過去最高を記録。
- 売上連動経費が増加したものの、売上増による粗利益増加が大きく上回り、増益となった。
- インバウンド売上は過去最高だった2018年度の2倍となる800億円を記録。円安により客単価が2018年度比で67%上昇。客数も月を追うごとに回復を強め、同比18%増加した。
- 全カテゴリーで前年実績を超え、中でも衣料品・化粧品は2ケタ伸長した。
- D2Cブランドの期間限定店を通年で運営する売り場「イットコンテンポラリー(IT CONTEMPORARY)」や、サステナビリティを意識した売り場「グリーンエイジ(GREEN AGE)」といった、コロナ禍以降新たに開発した売り場も売上は順調に伸長。若い世代からの支持も高いという。
- 阪神百貨店で「祝・リーグ優勝 阪神タイガースご声援感謝セール」を開催し、大きな成果を上げた。
- 阪急うめだ本店に韓国発のアイウェアブランド「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」日本1号店がオープン。
- 阪急メンズ大阪が地下1階メンズビューティ売り場を改装オープン。
- 神戸阪急の全館改装が完了。
- 2022年2月から全館リモデルのため約1年半にわたり大規模な改装工事を行っていた高槻阪急が、「高槻阪急スクエア」に屋号を変更して10月にグランドオープン。
2025年3月期の注目
- 国内は引き続き堅調の見通しで、通期で前年4%増、インバウンドは上期に伸びしろを見込み、通期で前年24%増を計画。
- 韓国発のユニセックスブランド「アーダーエラー(ADER ERROR)」が日本初の直営店を5月3日に阪急百貨店 神戸阪急に出店。
- 韓国のフレグランスブランド「タンバリンズ(TAMBURINS)」が日本で2店舗目、関西地域初となるショップを阪急うめだ本店3階に出店。
2025年3月期通期業績予想
総額売上高:6102億7700万円(6.4%増)
営業利益:224億4500万円(3.0%増)
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