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人に教えたくなるフレグランスの話:vol.11「KIIKS」水原希子の日本発ウェルネスプロジェクト

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人に教えたくなるフレグランスの話:vol.11「KIIKS」水原希子の日本発ウェルネスプロジェクト

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 フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。

 第11回は、モデル、俳優として活躍する水原希子が、友人のネイリスト 松永英地と立ち上げたウェルネスブランド「キークス(kiiks)」をピックアップ。

ハマナスの花やエキス、ダマスクローズオイルやツバキ種子油など、自然由来成分100%のマルチバーム「ハマナスローズバーム」 (35g 税込4235円)

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 ファーストプロダクトはハマナスローズバーム。帯広市浦幌町に自生するハマナスの、ややグリーン味のある甘やかなバラの香りが豊かに広がるマルチバーム。アルミ缶に入った小さなバームに込められた壮大な思いを、水原希子と松永英地がたっぷりと語ってくれた。

古来、日本に自生するバラの原種のひとつ、ハマナス。北海道ではアイヌ民族が花を煎じて飲み、壊血病の予防などに役立てていたという

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水原希子(以下、希子):私たちは元々モデルとネイリストという関係でお仕事をしてから仲良くなって、2人とも自然が好きで海や山にも行ってたんです。2年半ほど前にある映画のお仕事がきっかけでスキューバダイビングの免許を取りに行かなければならなくなったので誘ったんですね。それで海に行く機会が一気に増えたんですけど、やっぱりその時に美しいサンゴを目の当たりにすると、ケミカルな日焼け止めがサンゴを傷つけ、海のエコシステムが壊れてしまうということをリアルに感じてしまう。美しいだけでなく、海のエコシステムがサンゴによって壊れてしまうんだということを強く意識するようになったんです。自然に近づけば近づくほど、実は私たちにパワーを与えてくれるものなんだと肌で感じるようになる。そんなことをみんなにシェアしていきたいな、と思ったのが始まりなんです。

宮古島をはじめ各地の海に潜るうち、海にすっかり魅了され、自然環境保護の意識が強くなっていったという

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松永英地(以下、英地):海という生命の根源、それを言葉よりも肌で感じてしまって。それで自然環境破壊などについて深く考えるようになった時に、僕もネイリストとして長く美容業界でやってきているので、自然のプロダクトをシンプルに作れないかなと。そこで僕は“髪も体も洗える石けんがいいな”と思っていろいろリサーチした時に、今ご協力いただいている鹿児島のボタニカルファクトリーに辿り着いたんです。そして同じ頃に希子もスキンケアに興味があって作りたいと言っていたので、じゃあ一緒に行こうと誘って。でも考えていることが同じだから一緒にやろうか、ということで始まりました。プロダクトを作る、というのもあったんですけど、自分たちの自然に対する考え方を探っていくうちにプロダクトにつながり、気づいたら2年半経っていた、という感じですね。

製品作りを担うのは、鹿児島にある「ボタニカルファクトリー」。廃校となった登尾小・中学校校舎をリノベーションして化粧品工場に

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希子:最初のプロダクトは違うものを出そうと思っていたんです。でもハマナスの畑を訪れた時にハマナスの香りとエネルギーが凄まじくって、これが日本古来のローズなんだということにすごく感銘を受けて。バラの香りってやはり魔法の香りというか、香りを嗅いだ瞬間に心が満たされますよね。バラの花言葉って“愛”ですけど、ハマナスの花言葉を調べたら“旅”。それを見つけた瞬間にこれだ!とピンときてしまって。日本古来のローズであるハマナスを日本から世界へ伝えて、日本からの愛が旅をしてまた日本に戻ってくる、というような思いを込めたんです。それを最初にリリースしてキークスのスタートにしたかった。“愛”、それが私たちのメッセージ。自分が満たされて初めて人を満たすことができる、自分のコップが満たされてないと人を満たすときに自分がすり減っちゃう。“自己愛”というと“わがまま”を連想する人もいると思うんですけど、そういうことではなくて、まずは自分を大切に、ちゃんと時間を取って自分を癒やすことで、その波動が周りに伝播していくと思うんです。

キークスのキービジュアル。「自己愛」をテーマに韓国のフォトグラファー、チョ・ギソクが撮影

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英地:最近よく2人で話しているのは、これからは女性の時代、女神の時代だということ。まず女性が先導して、それを男性が支えていく時代だと感じているんです。今回のハマナスは全抽出しているので、あえてバラのエグ味も入れていて、最初は女性的な甘い匂いがするんですけど、後から男性的なスパイシーな香りがする。そんなことも後付けだけどつながってきて。プロダクト的に使っていただくのは女性が多いと思うんですけど、まずは女性が癒やされて、男性も癒やされて、みんなで楽しんでいけたら、と。

約4000種の植物が自生すると言われるロケーションを生かし、大自然が育む豊かな植物原料を活用して製造

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希子:ちょうどコロナ禍に始まったプロジェクトなんですけど、やはりコロナ禍は私にとっても大きなメッセージでしたね。全人類にとって苦しい側面ではあったし、誰もが死というものを意識した時期だと思うけれど、だからこそ何が大切なのか、何がやりたいのか、自分にとって何が一番響くのかということを、より深いレベルで感じ取れたし、それが私たちにとって“自然”だったんです。そこからキークスが生まれた。これを日本のみならず、世界の人に伝えていきたい。ハマナスは帯広市浦幌町、ファクトリーは鹿児島、英地は伊豆に住んでいるんですけど、私と英地は40代と30代で、日本の魅力をよく知っているし、私はグローバルで活動する星のもとに生まれたと思っているので、どうにかこのプロジェクトが世界の人に伝わり、日本の若い世代に伝わって、地方に眠っている植物や面白い街や人、伝統を私たちの世代が学んで次に繋げていけたらいいなと思っているんです。

 シェアしていく方法はいろいろあるけれど、SNSだけでなく、ワークショップを開催して、実際に対面して伝えていきたい。コロナ禍で人に会えなかった時期を経験しているので、人や自然に会えた時の感動が今まで以上に大きかったし、人や自然に触れ合うことは心に大きな影響をもたらすということを痛感したので、コロナ禍が落ち着いた今でもその感覚を忘れずに大切にしていきたいと思います。私たち人間って、言葉もあるけど、結局は感覚的な生き物であって、そういうところを大事にしてワークショップで一緒に体験して学んでいく。ワークショップはキークスにおいて、プロダクトと同じくらい大切に考えているんです。

ブランド名「kiiks」は水原希子のニックネーム「keeks」の「e」を「i(愛)」に変え、ロゴは「平等」の意味を込めてシンメトリーにデザイン

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希子:今計画しているのは、インドネシアでサステナビリティ活動を積極的に行っているコミュニティとのコラボレーションです。バリでゴミ拾いイベントなどをやっているんですけど、ケータリングやDJブースを用意して、友達と遊ぶついでにゴミ拾いをするという感じ。ゴミを拾うグッズもすごくおしゃれに作っていて、ノベルティも可愛いし、ファッション性も遊びも入っている。拾ってきたゴミはその場で溶かしてキーホルダーを作ってお土産として持って帰れたり。楽しくないと続かないし、興味がない人も参加したくなることが大事だと思っていて。そういうイベントを日本で一緒にやりたいですね。プロダクトのほうは、ハマナスシリーズを広げていきつつ、日本の食を支えるお米、竹害が問題になっている竹、耕作放棄地を活用した月桃などのハーブのシリーズを企画中。ワークショップと併せて楽しく発信していく予定です。

ビューティ・ジャーナリスト

木津由美子

大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。

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