Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
3月4日、「サカイ(sacai)」が2024年秋冬ウィメンズコレクションをパリで発表した。これまでは開放的な空間でのショーが多かった「サカイ」だが、今回は屋内に視線を遮断するように蛍光灯を並べ、光の迷宮を作り上げた。「こんな時代に服にできることはなにか?」。コレクションの制作の始めにそう思考を巡らせたというデザイナー阿部千登勢が出した答えは、"ドレスアップ"だった。
今年25周年を迎える「サカイ」は、ブランド創設当初から続く"普通のものを普通じゃないものにする"という考えのもと、ブランドのデザインコードである"ハイブリッド"を再考した。コレクションを見渡すと、ジャケットの上にジャケットが取り付けられ、肩がずり落ちたようにくっついていたり、前はケーブルニットに見えるが、後ろはジャケットだったりする。アイテムとアイテムのドッキング。これが今シーズン再びフィーチャーされた手法だ。そして驚くことに、そのすべてがドレスなのだ。つまりスタイリングではなく、つながった一着の服である。
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「サカイ」の素晴らしさは、ただドッキングするだけでなく、新しいシルエットを探求している点にある。スリーブは筒のようにストンと落ちていたり、大きくカーブし円を描いていたりする。レースやパファーをあしらった大胆なペプラムは、ボリュームのあるAラインを生み出す。平面と奥行きのハイブリッドを自在に操り、意外性に富んだフォルムは360度どこから見ても美しく、どの角度から見ても「サカイ」なのだ。
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すべてのモデルが一貫して着用した、タキシードパンツとハイブリッドさせたニーハイブーツは、ドレスアップを大きく底上げする。これさえ履けば、デニムジャケットやグランジ風のニットウェアでさえも、たちまちドレッシーになる。蛍光色のベルベッドで作られたフリルネックのワンポイントは、ドレスアップのニュアンスを高めながら、控えめなカラーパレットの中でアクセントとしてうまく機能していた。
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ハイブリッドを実現するにあたり、生地は重なれば重なるほどに服は重たくなり、実用的でなくなってしまうものだが、サカイは中心が空洞になっている糸を開発し、実はとても軽く仕上げてある。25年前のブランド開始から掲げていた"日々の様々なシーンにおいて成立する「日常の上に成り立つデザイン」"というコンセプトは、形骸化することなく現在も実直に反映されている。そしてそのプロダクトアウトのレベルの高さこそが、サカイが世界で賞賛される理由のひとつだ。コレクションを重ねるごとに、すでに確立されたと思われるハイブリッドというデザイン言語のさらなる次元を見せてくれるサカイは、特にシルエットの探求という点では、今季のファッションウィークで1、2を争うほどだった。
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