Fashion インタビュー・対談

【インタビュー】デザイナー滝沢直己が語る ユニクロの新しい服とプロセス

―「ISSEY MIYAKE」や「HELMUT LANG」でデザイナーとしてキャリアを積んできた滝沢さんですが、今までとの違いは?

 ファッションデザイナーのアプローチ手法とは少し違いますね。柳井さんに言われて印象に残っているのは「あなたの前で失礼だけど、僕はファッションデザイナーの仕事があまりよくわかりません」という言葉です。その真意は「ファッションデザイナーはお客様をセグメントする。すごくいい服が作れる良いデザイナーだと思うけれど、だったらそのデザインを何故1人でも多くの人にシェアするという発想に生かさないのか」ということでした。

 ファッションデザイナーは、マーケティングやブランディング、時にはアーティストとしての表現が必要で、だから「多くの人」というよりも「好きな人だけ買ってください」という側面もあります。それが悪いということではなくて、自分が今まで経験してきたことを、多くの男性や女性、子供やお年寄りまで、ファッションという情報を全く持っていない人に対してもデザインを活かしていくということは、大きなチャレンジだと思ったんです。服を通じて不便なことを便利に変えるということが、今の使命だと思っています。

―大量生産の中で、デザインの意味をどう捉えているか。

uniqlo-2013-06-05-interview-20130605_005s.jpg ファッションデザイナーが常に新しいデザインを発表するのは、新しい波=モードを作るという目的があります。マーケットが飽きないように、個性を打ち出したデザインで流れをグンと変えるということが必要なんです。

 でも、例えば1千万枚という大きな数量の服を作る時には、途端に「いいデザイン」の値が変わってきますよね。さらに1億人をターゲットにするということは、ひとつの角度ではなく360度、全方向からアプローチすることが必要になるでしょう。感覚だけでデザインするのではなくて、完全な裏付けがないといけない。素材もカッティングも、VMDまで全て総合的にわからないとできないことで、これについて私は三宅一生さんに学んだことが活かされていると思って感謝しています。本当に必要な機能やデザインだけが残っていくでしょう。

―メゾンから一転、低価格の服を作る事についてどう考えているか。

 私は手の届きやすい価格の服を作ることについては、とても贅沢で豊かなことだと思っているんです。特にユニクロには、これまで培ってきた技術や背景があって、東レとの提携や外部からのサポートもある。もちろんそれぞれに多くの努力の積み重ねがあるからこそ、いいものを世界中に売ることが出来るんですね。生き方に沿ったファッションをどんな人でも手に入れられる自由や楽しさを提供できたら、本当の豊かさがあるんじゃないのかなと思っています。「LifeWear」で、それを実現できたら素晴しいですよね。


【詳細レポート】ユニクロの新コンセプト「LifeWear」と2013年秋冬コレクション


滝沢直己(Naoki Takizawa) ファッションデザイナー

東京生まれ
桑沢デザイン研究所 卒業
1982年三宅デザイン事務所に入社。1993年~ 2006年 ISSEY MIYAKE MEN のデザイナー、1999年〜2006年 ISSEY MIYAKE WOMENSのデザイナーを兼任。2006年に株式会社NAOKI TAKIZAWA DESIGNを設立。ウイリアムフォーサイス率いるフランクフルトバレエ団のコスチュームデザイン、パリの国立ケ・ブランリー美術館のカーテンのデザイン、パリ・カルティエ現代美術財団での展覧会「ヤノマミ:スピリット・オブ・ザ・フォレスト」展に作品を出展するなど、ファッションデザインの域を超える多面的な活動が注目されている。2009年 東京大学総合研究博物館/インターメディアテク寄付研究部門特任教授に就任。1998年第16回毎日ファッション大賞、1999年ベッシーアワード(The New York Dance and Performance Award)受賞。2007年フランス芸術文化シュバリエ勲章授章。

(聞き手:小湊千恵美)

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