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女性政治家とファッションの関係〜着用スーツから見るイメージ戦略〜

小池百合子都知事 Photo by: World Economic Forum(https://flic.kr/p/4PPr3X)

 女性政治家の活躍が顕著だ。国内では小池百合子都知事を始め、蓮舫民進党代表、稲田朋美防衛大臣など要職への女性の就任が目立ち、海外に目を向けると大統領選を控えたヒラリー・クリントン候補も連日メディアの注目を浴びている。男社会と言われ続けてきた政治の世界において、女性政治家はどのように「戦闘服」であるスーツを選び、存在感を示しているのか。政界をはじめとする女性リーダーにとって、ファッションの役割とは。

■米国と日本、ファーストレディが選ぶ服の条件

 国際的な政治の世界で最もファッションに視線が注がれるのが外交のシーンだ。とりわけファーストレディはしきたりや文化に沿った装いが求められるが、アメリカのミシェル・オバマ大統領夫人は自国デザイナーのドレスを外交手段の一つとして積極的に取り入れていることで知られる。これについて、政治家のスタイリングアドバイスなども手掛けているファッションディレクターの軍地彩弓氏は、「アメリカは日本と異なり、大統領夫人の衣装代は国の予算から出ていると聞いた。国民投票で大統領を選出するシステム上、アメリカではパブリックイメージの構築が一つの戦略として成り立っている。そしてそこにファッションが関係してくることも熟知している」と分析。ラルフ・ローレンといった代表的なデザイナーではなく、フィリップ・リムやジェイソン・ウーなど、特に若手デザイナーのドレスを積極的に着用しているのが特徴で、そのセンスには定評がある。

 日本の安倍昭恵首相夫人も、若手を含め自国デザイナーの服を身に着けているファーストレディのひとりだ。過去にASEAN首脳会議に随行した際、ファッションスタイルについて進言したという軍地氏は、服選びで気をつけた点について「TPOを理解する」「できるだけメイド・イン・ジャパンにこだわること」を挙げている。フォーマルで、かつ日本の若手デザイナーが手がけるブランドということに重きを置き、軍地氏とフィッティングのプロが同席する中、40〜50着の候補の中からデザイナー前田華子が手掛ける「アディアム(ADEAM)」や、天津憂が手掛ける「ハナエモリ マニュスクリ(HANAE MORI manuscrit)」をセレクトし、着用に至ったという。しかし「日本では例え戦略であったとしても外見にこだわることを嫌厭されがちで、女性は男性よりも批判の対象になりやすい」と指摘する。政治家の服選びについては「庶民感覚とズレていないか」という点も重要視されるという。ブランド名やマーク、ロゴなど、ひと目でブランドやメーカーが分かる服もNGだ。

hanaemori-09-01-16-odd-20160901_003-th.jpg「ハナエモリ マニュスクリ」のショーに訪れた安倍昭恵首相夫人とデザイナー森英恵

■「上半身が語る」女性知事と政治家のスタイル

 都政改革で連日注目を浴びる小池百合子東京都知事は、ファッションの観点からもその手腕を発揮する。「百合子グリーン」をテーマカラーに選挙戦に挑んだことが記憶に新しいが、軍地氏は小池都知事のファッションについて「元ニュースキャスターというキャリアが大きく影響している」と分析する。「小池知事は上半身で自分を語ることに長けている。キャスターとしての経験から政治家のパブリックイメージの重要性を理解し、戦略的に色や柄を選んでいる」と評価した。議会や会見などの場で、多くの人の視線に触れる主に上半身。多様なカラーバリエーションを使い分け、小物使いにおいても「ゴールドのチョーカーなどアクセサリーが顔の輪郭を強調させ、人と向き合った時に強い印象を与える効果がある」。そして「人と『対峙』するのではなく『対話』していく」という、ファッションで自身の政治意志を伝えることを実践しているエポックメーカーとも言える。

 一方で、小池都知事と同時期に政党のトップに就任し、何かと比較されることも多い蓮舫民進党代表については「代表就任後初の代表質問で着用していた首元が光る装飾のスーツは好ましくなかった。光る素材は基本的にイブニング用なので、17時前にパブリックの場では避けるべき」と、TPOの観点から指摘する。「蓮舫さんのポイントは首。よく襟を立てているが威嚇に見えることがある。また細い首に筋を立てて演説しているのを見受けるが、いきり立っている人という印象を与えてしまうので損をする」といい、これは首元にスカーフなどを取り入れることで、印象やパーソナリティを補うことができるという。

■注目の大統領候補が着るパワースーツの色と意味

 決選投票を控えたヒラリー・クリントン大統領候補は、パンツスーツを自身のトレードマークとして政治活動を行い、シーンによって色を使い分けていることで知られている。ある時は民主党の政党カラーの「青」を、またトランプ候補とテレビ討論会で対峙する場面では攻撃的な印象もある「赤」をセレクト。3回に渡って行われた討論会では、その後「青」と「白」のスーツを着用し、アメリカ国旗を連想させる3色で愛国心を有権者に示したとも言われている。また最近ではイギリスのテリーザ・メイ首相やビルジニア・ラッジローマ市長といった要職に就いた女性にも注目が注がれているが、それぞれのファッションの評価の高さと新体制への期待の高まりが比例しているとも受け取れる。

■ファッションが「イメージ」において重要な役割を担う

 1956年の創業以来、女性政治家らから支持されている婦人服ブランド「銀座マギー」では、「社会的に認められ、尊敬される女性に相応しい、フェミニンな中に佇む威厳のあるファッション」を提案してきた。仕立てと着心地が良く、好感を持たれるデザインが基本。実際に好まれているスタイルや色について担当者は「かっちりとしたスーツスタイルよりも、ジャケットにワンピース、インナーにパンツもしくはスカートといったスタイルで、色はベーシックなものが人気。インナーは、レースや色物、ロールカラーのブラウスをコーディネートすることが多い」と話す。逆に避けられているのは「派手目な色や柄物、デザイン性の強いもの」。以前は国会中継や選挙活動中に何処にいるかわかりやすい色やデザインが求められていたが、近年は「自分らしい色やデザイン」を重視する傾向に移り変わっているという。

 男性と比べてスーツ一辺倒ではない女性のスタイルは、視覚的な印象だけではなく意思を伝えるひとつの手段として価値を持ち、「イメージ」を構築し易いのは明らかだ。政府が男女共同参画社会を推進し、女性の活躍や格差の解消によってリーダーシップを求められる役員クラスの女性が増えている時代。しなやかに戦い続ける世の政治家らのスタイルを参考に、イメージの重要性を理解しファッションをセルフブランディングのツールとして多いに活用することで、その人ならではの「戦闘服」が女性たちの強い見方になってくれることだろう。