【インタビュー】山田孝之がブランドを作ったワケ

(左から)山田孝之「フォリエッジ」代表取締役兼CCO、山口友敬「フォリエッジ」代表取締役兼ブランドプロデューサー Photo by: FASHIONSNAP

 山田孝之がブランドを立ち上げるーーー。あらゆる役柄をこなす"カメレオン俳優"の意外な一面に驚いた人も多いだろう。「どのくらいの人が楽しんでくれるだろうか、という感覚は役者と同じ」と話す本人の言葉はいたって冷静だが、何か決意のような熱いものを感じさせた。アイデアを形にするパートナーは、腕時計ブランド「ブリラミコ」創業者の山口友敬。枠から逸脱した現代の傾奇者(かぶきもの)とも言えるこの2人が、ゼロから生み出していくという「フォリエッジ(FORIEDGE)」に注目した。

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■再会、そして始動

ー 山田さんと山口さんは以前から知り合いだったそうですね。「フォリエッジ」を始めたきっかけは?

山口友敬(以下、山口):共通の友人のパーティーで偶然、昨年末に再会したんです。そこでお互いに「こんなことをやりたい」と話したのがきっかけですね。僕はその頃からガラスを使って何か作りたいと思っていたんですが、具体的ではなかったんですよ。そんな時期に孝之さんと会って。

山田孝之(以下、山田):僕も僕で別のプロジェクトを考えていたんです。宝石を使う仕事をしている知人がいて、カットした後の石が残って困ってると聞いて、それを再利用できる方法を探したり。面白いものを作りたかったんですが、紆余曲折あり実現に至らずだったんですよね。

山口:孝之さんの一言一言がすごく筋が通っていて、感覚派であると同時にロジカル。この人すごいな、経営者的な視点も持っている人なんだなと感じて、2人で一緒にやってみることになりました。

ーお互いのもの作りのアイデアが重なったんですね。

山口:最初はガラスに石をはめることができるかとか、色々と考えました。でも2人とも経験がなかったので、きっと時間がかかる。なので先に面白いものを作ろうと考えて、江戸ガラスがフォリエッジの第一弾になったんです。

■違和感のあるものは愛おしい

「フォリエッジ」の江戸ガラス


ー 第一弾の江戸ガラスは、歪んだデザインがとてもユニークです。

山口:この形を作る技法は決して新しいものではないんですよ。江戸ガラスの職人技術なんですが、外国から輸入された安価なガラスが多く出回っている今、正直これを日用品として作っても簡単には売れないですよね。すると技術が廃れていって、作れる職人さんも少なくなってきている。なら、あえてフォリエッジがこの技法を使ったら面白いんじゃないかと。ターゲット層はずばり富裕層で、価値をわかって頂ける人に手に取って頂きたいので。

ー 2人の仕事の分担は?

山口:企画から2人で進めていて、工場との話し合いや実務的な部分においては僕が全面的に動いています。僕はどちらかというと女房役みたいな感じで(笑)。

山田:僕はもう、とにかく突拍子もないアイデアを口にしてしまうから(笑)。「こういうことができたら面白いと思う」と持ちかけると、それを山口さんが具体的な形にしてくれるんですよ。

ー 職人との新しいもの作りはいかがでしたか?

山田:山口さんはとにかくスピードが速くて、工場に関しても自分で調べて突撃したんですよね。

山口:でも決してスムーズではなかった。新規でいきなり「こういう物が作りたいんです」と伝えても、すんなりとは受け入れてもらえないので。でも、何回か工場に通って仲良くなっていくうちに「技術のある職人を抱えているけど、同じものを作り続けていて勿体無い」といった話が少しずつ出てきて。「だったらぜひ作りましょう」と。「職人が作るプロなら、こっちは売るプロになりますから」とお話しさせていただきました。

山田:残していきたいという気持ちがお互いにあって、商品化につながったんだと思います。

ー ブランドテーマの「違和感」とは?

山田:違和感のあるものって、愛おしいというか可愛いですよね。僕ポンコツが好きなんですよ。例えば絵も文字も、右手できれいに描くよりも、左手で下手くそに描いた方が好きだったり。画家だとダリが好きなんです。グラスをパッと見たときにダリを想起させたのも、良いなと思った点ですね。あと、一つずつ職人さんの手によって作られているので、全く同じものがないのも魅力だと思います。

ー 今後はどんな「違和感」を作っていくのでしょうか。

山口:違和感の要素は、その都度変わっていくと思います。お互いのひらめきですね。

山田:例えば、本来の使用用途とは別の使い方を提案できるものとか。このグラスも、飲み物を注ぐためだけではなく、飾っても、小さいエビを飼うのもいいと思います(笑)。

■俳優業にも通じる感覚

ー なぜプロジェクトの遂行にクラウドファンディングの「Makuake」を利用したのでしょうか。

山田:趣味の範囲なら、自分でただ作ったり誰かに見せたりするだけで良いかもしれないですが、クラウドファンディングを使うことで「こんなに変わったものを作った」「どれくらいの人が面白いと思ってくれるのか、欲しいと思ってくれるのか」というのを肌で感じることができます。ただ自分用に作るのではなくて、多くの人と共有することができる。この感覚は「こんな映画を作ってみたらどれくらいの人が楽しいと思って見てくれるんだろう」と考える俳優業にも通じる部分があると思います。

山口:フォリエッジは「枠にとらわれない」ということもテーマです。今の若い子たちが、クラウドファンディングというプラットフォームを使えば枠にとらわれず、やりたいことに挑戦できる。フォリエッジが取り組むことで「こういうものがあるんだ」「クラウドファンディングを使ってものが作れて、世界にリリースできるんだ」ということが少しでも広がれば。

ー 新作発表のペースの見通しは?

山口:事業計画では年に2〜3回ほど。内容によって適していれば、またクラウドファンディングも利用していこうと考えています。

■ダリの絵のような店ができたら

山田孝之 フォリエッジ 代表取締役兼CCO


ー 山田さんは9月、大手IT企業のトランスコスモスと共同設立した新会社「ミーアンドスターズ(me&stars)」の取締役にも就任しましたが、俳優業以外に力を入れていくのでしょうか。

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山田:特に強化しているつもりはなくて、両方ともご縁があってお話をいただいた形ですね。ミーアンドスターズに関しても事業について説明を聞いて「もっとこうしてみたら面白いんじゃないですか?」と話をしていたら、じゃあ一緒にやりましょう、となったんです。いずれにしても、一から全て自分で動きつつ俳優業と両立するのは難しいことなので、取り組む相手がいることで実現していますね。最近よく「俳優業はどうしていくのか?」と聞かれるんですが、そっちの仕事はしっかり来年も決まってるので、とりあえずは大丈夫そうです(笑)。

ー 「ミーアンドスターズ」では、著名人を起用した動画ECプラットフォームを展開するとのことですが、フォリエッジとミーアンドスターズで今後取り組むこともありますか?

山田:具体的に進めていることはありません。ただ、フォリエッジでまずはECサイトを開設したいと考えていて、そういった時に大手のトランスコスモスから何かしらのアドバイスをいただくことは、いい形になるかもしれないですね。

ー ECサイトだけではなく、実店舗の出店も視野に入れていますか?

山口:もちろん。ECサイトも結局、在庫を置く場所や人員が必要になってくるので、それなら店舗を兼ねた方がいいという考えです。目標として来年にはオープンしたいですね。ただ、まだこれからの事業なので、目標に達するか結果次第ですが。

山田:ダリの絵みたいなお店ができたら面白いですね。ぐにゃぐにゃに歪んでいて、そこにいるだけで酔ってしまうような(笑)。やりたいことがたくさんあるので、まずはしっかり売って、ブランドとして確立させないと。長く展開することを視野に入れると2人だけでは続けられないので、この会社も大きくしていきたいですね。

■フォリエッジ:詳細ページ

(聞き手:谷 桃子)