【インタビュー】PR01.代表 松井智則が語る「今、東コレを変えるべき」

 今週から、東京でファッションウィークが開催される。2013-14年秋冬シーズンの開催は、3月17日から23日の間に展示会からランウェイショーまで様々なブランドが半年間のクリエーションを披露する。かつて東京は五大コレクションとしてニューヨーク・ロンドン・ミラノ・パリに並んで注目を集めたが、近年はシンガポールなどの新興市場が台頭し「ジャパンバッシング」ならぬ「ジャパンパッシング」が起き始めている。「内向き」と言われる日本のファッション業界の現状について、数多くのブランドPRやファッションイベントをオーガナイズするPR01.代表の松井智則氏に聞いた。

コレクションウィークの意味

ー東京にコレクションウィークは必要か

 PR01.のようなブランドをPRする仕事もそうだが、市場が活性化されないと商売は成り立たない。しかし、日本では歴史が浅いためファッションのインフラが整っておらず、ほぼすべてを自分でやらなければならないという現実がある。経験が少ないブランド側はどうやってビジネスをしたらいいか途方にくれることが多く、ブランドをサポートする我々側がそういう場を用意しなくてはいけない。「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO」や合同展とショーがリンクした「roomsLINK」などは、少なくても"発表する場をブランド側がゼロから作らなくていい"という部分においては意義があると思う。


ーデザイナーやクリエーションの質は変わっているか

 クリエーションは上がっていると思うし、製品のクオリティも高い。でも、なかには「~ぽい」というデザインも見受けられる。生きる理由と同じくらいの魂を込めたコレクションをどう見せるか。それを人に見てもらう理由を、もっと真剣に突き詰めて欲しいとも思っている。


ー近年はショーに参加する敷居が下がった印象を受けるが、ブランドのショーに対する考え方の違いは

 変わったと思う。ショーで発表したいという気持ちは昔も今も一緒だと思うが、昔は展示会をやって卸しをして貯金をして、コネでバイヤーを呼んで、自社のプレス担当やアタッシェ・ドゥ・プレスにPRしてもらって1つのショーが出来上がるイメージだった。今は、ブランド立ち上げて展示会をしないでショーを行うところもある。


ー下積みのようなものがなくなったのか

 一概には言えないが、そう感じる時もある。ビジネスというよりも、デザイナーがやりたいからショーをやるという「表現としてのショー」が多いのでは。ただ、バイヤーが積極的にショーを見に来ていない現実は、デザイナーも後から色々と思うことがあるんじゃないのかな。


ー有料でショーをやるところも出てきていたが

 それについては良くも悪くもブランドのスタンス次第でいいと思う。ショーをやるのに場所代やモデル代などコストがかかる基準があるけど、段々とブランド側の予算が下がっていると聞く。自分たちの実力も分かった上で、 入場料をとるのならいいのではないか。ただ、ショーに来てもらうお客さんにもデザイナー自身もそれ相応のものを払わないとショーの意味がないということを理解して、伝えていく必要はあると思う。


ー若手デザイナーやブランドに対して必要なことは

 まずは見る側が若手に興味を持つことだと思う。僕はデビューコレクションと聞いただけで「どんなものを見せてくれるんだろう?」とドキドキしていたが、今は無名のブランドに興味を示さない人が多いのが残念。その点ではメディアにも責任があって、ちゃんと見て評価することもサポートのひとつ。金額面の支援だけじゃなくて、手の差し伸べ方が大事だと思う。


ーコレクションウィークを東京で開催することへの考えは

 パリコレだからといってパリのブランドだけではないし、ニューヨークもそう。だけど今の東京のファッションは、ほぼ東京のブランドだけだ。アジアに領域を広げて、各国のデザイナーが自主的に参加してもらえるような仕組みを作りたい。数年前から「東京コレクションウィークを作ろう」ということを目標に活動している。


ーアジアよりもパリを目指すデザイナーが多いが

 日本はショップの数が一番多く、実際に一番売れる国だと思う。そういう意味でも東京で発表することに価値はある。地理的に日本は遠い国かもしれないが、「東京」というブランディングはあるはず。渋谷区のように、109から百貨店、小売店まであらゆる要素が凝縮されている街は世界にない。パリのモードの歴史とは違って、ストリートから文化が生まれてきたという背景も唯一だと思う。

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「つまらない」という意見について


ー「東京コレクションはつまらない」と言われていることをどう思う

 今のファッションウィークについて「つまらない、見るブランドがない」という意見があることは理解している。それがお客さんだったらしょうがないとは思うが、業界の人間なら少し残念だ。つまらないものを変えていかなければならない我々が、傍観者として居続ければ何も変わらないし衰退して行くのは当然。市場に出回っていてムーブメントになりそうなものやその人達が「面白い」と思うブランドを引っ張ってくるとか、なんらかのアクションを自分たちでしなければずっと「つまらないまま」だと思う。


ー業界の中でも発信者であるメディアにも責任があるというが

 新聞やマガジン、ウェブなど様々なメディアの方と関わっているが、聞かれることは「今回は何ブランド出るんですか?」「どこでやる?」ということだけだったりする。それで「つまらない」と言われては困ってしまう。それと東コレは「ブランドが微妙だ」と言われる事があるが、「じゃあ、どこが微妙か教えて下さい。一緒になんとかしましょう」と誘うとみんな「うーん」という感じ。もっと深く関わって欲しい。メディアもそろそろ自己変革する時期ではないかなと感じる。


ーなぜメディアは積極的に参加しないと思うか

 よく言われるのは「出ているブランドがわからない」。興味を引かれるブランドがメディア側からしてみたら少ないのが理由だと思う。 そう言う意味では、賛否両論あるがリトゥン(writtenafterwards)は幸せだと思う。良くも悪くも見に来てもらえて、ああだこうだ言われますしね(笑)。ただ、まだ小さいが他にも伸びそうなブランドは多いので、表面上は興味を引かれなくても実際のショーを何度か見てからジャッジして欲しい。


ーブロガーについては

 「ファッションが好きだ」という熱量を感じる。楽しんでいるし、先入観もないので新しい息を業界に吹き込んでいると思う。今までの媒体はどこがスポンサーでどこが株主かっていうのが良くも悪くもはっきりしていたが、ブロガーやネットメディアは資本関係や収益構造がまだ発展途上だから好きなことが書けて自由度が高いと思う。 個人のメディアでもあるが、コレクションに参加しているプレイヤーとしての側面もあるので期待している。


ーメディアにも見習って欲しい?

 ブランドが自然発生して勝手に育って勝手に東コレ出て売れていくなんてことは無いんだから、もう少し「育てよう」っていう気概は欲しいかな。JFWが立ち上がってから何年も「東コレはダメ、ブランドがダメ」とずっと言いつづけているメディアもあるから大変だと思うけど(笑)。


今行動を起こさないといけない

ー「今行動を起こさないといけない」と語っているが、それはなぜ

 震災の後はビジネス的に特に小さいアトリエは危ないと言われていた。しかし、気が付いたらファッション業界は普通に戻っていたというか"普通に戻っているような気"になっている。危機感の無さを感じている。日本内の問題以外にも周辺の新興国が政府や大きいクライアントから予算をもらって大々的にやっている。それが成功しつつあって、世界でブランドを引きつけるような仕組みを今から作らないと手遅れになると思う。


ーなにか施策などは行っているか

 発表する場である「roomsLINK」もそうだが、東コレの服が買える場所がもっと増えなければいけないと思った。そのために店舗の集客を増やすようなもっとお客さんにダイレクトに伝わる、街と連携した「渋谷フェス」を始めた。発表の場を提供している側としては、盛り上げる責任があると思う。盛り上げるというのは、色々な人が参加してブランドのショーだけで終わるという乾燥した状況を打破すること。


ー「roomsLINK」や「渋フェス」は「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京(以下、MBFWT)」の関連イベントだが、その棲み分けは

 全てを別にしているわけじゃなくて、競い合う相手がいなければ伸びないという考え。「roomsLINK」と「渋フェス」については、関連イベントとしてコレクションウィーク中にやるのは共通している。ブランドによって公式スケジュールかオフ(非公式)スケジュールかどうかという問題は、外の人にとっては関係がない。まずは、ウィーク中にやることに意味があると思っている。


ー先シーズンは「MBFWT」と「渋フェス」の共通する大トリとして「リトゥンアフターワーズ」のショーが評価を受けた

 リトゥンは東コレの象徴的なブランドと言える。リトゥンがすごいと思うのは、常に魂を削っている姿勢だ。ブランドなのに服を売っていないということに疑問を持つ人も多いが、彼らはファッションを売っている。実際に、前回のショーはブランドにとって様々なきっかけになっていると思う。そういうブランドを、国内外からもっと引き上げていきたい。

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ー松井さんが描く理想は

 ブランド、メディア、バイヤー、PR、そして一般も、みんなが楽しいものにしたい。ブランドが発表する場があって、人が集まって、バイヤーが買って、その楽しさがメディアを通して民間に伝わって、そして物が売れるというシンプルな循環。ファションに関わっている人だけじゃなく消費者も含めて一緒にコレクションウィークを作って、その奥にちゃんとビジネスがあるという形が理想だ。そのために、ファッションの「ムード」を一人一人がそれぞれの立場で作っていくことが大事だと思う。

 国がファッションやアニメを押していこうとしているが、パリのモードの歴史みたいにそれが100年以上続いて国を上げたビジネスにしてきたわけではない。クリエイティブな産業が、最後の砦のようになっているのではないか。ここ数年で国を引っ張るビジネスにしていこうとしているのだから、今やらないとヤバいんじゃないだろうか。今まで通り、のほほんとしてはいられない。


ー若手にとって夢や目標があるか

 今のムードは不安の方が大きいだろう。服飾学校や大学との取り組みも進めているが、モチベーションの高い学生が将来を目指す先としてファッションが上がってこないことが気になる。今いる我々が夢を与えないといけないと実感している。もちろん食べていけるというビジネス部分も含めて。より身近にファッションを感じてファッションに対して情熱を持ってもらいたい。


ー「渋フェス」もそのため?

 「東京コレクションウィークを作ろう」というときに、現状の内輪だけでファッションが盛り上がるのは疑問を感じる。「渋フェス」は、もっとより身近にファッションを楽しんで欲しいという気持ちで作った。宮下公園を会場にしたり渋谷区にも協力してもらっていて、とても感謝している。


ー松井さんの目標は

 ひとつの目標としては渋谷駅前のスクランブル交差点でショーがやりたい。実際は国や警察などあらゆる規制を突破するという超難関があるが。世界的にも有名な交差点を封鎖してショーをやるというのがどれだけ難易度高いことかもわかってるけど、全力で挑戦するつもり。


ー期待しています

 決してひとりで出来ることではないので、もしどこかに現状を変えようと思っている人がいたら宮下公園に集合!と言いたいくらい(笑)。どんどん立ち上がって、ファッション業界全体で「ムード」を作っていけたらいいと思う。