【連載:パリを選んだ日本人クリエーターたち vol.1】ファッションコーディネーター大塚博美

 ファッションや食など、世界のトレンドの発信地になっているパリ。多種多様な人種が集まるこの街で、さまざまなジャンルで日本人が活躍している。そんな彼らにスポットを当て、インタビューする連載「パリを選んだ日本人クリエイターたち」。まず初回は、パリ在住歴約30年、コーディネーターとして活躍し続ける大塚博美さんをクローズアップ。海外進出する日本人デザイナーやクリエーターを支え続け、パリの母と呼ばれる彼女に聞く、自身のキャリアやパリの魅力、ファッションの現状について。


Profile
大塚博美 Hiromi Otuska
パリ在住のフリーランスファッションコーディネーター。在仏歴は29年。日本ブランドのパリでのファションショー、エキシビションをはじめ、海外に進出するクリエイターのサポートを行う。現地でのコーディネートはもちろん、キャスティング、コンサルティング、さらに、パリや日本をはじめとする世界各地への撮影コーディネートまでを一人でこなす。海外進出する日本人クリエイターにとって心強い存在。

ーパリにはいつごろ来られたのですか?

 確か1988年頃でしょうか。もうすぐ30年です。

ーパリに住むようになったきっかけは?

 初めてパリに来たとき、モンマルトルの丘の上でパリの景色を見ていたら「あ、私いつかパリに住むかもしれないな」って直感で思いました。元々、熊本で4坪ほどの小さなセレクトショップをやっていたんです。その頃、馬場さん(大塚さんのご主人、スタイリストの馬場圭介さん)はロンドンに住んでいて、彼が現地で買い付けたヴィンテージとか、流行りのクラブっぽい服とかを扱っている趣味全開の店でした。その後、福岡の「ビームス(BEAMS)」も有するセレクトショップがパリでバイヤーを探してるという話があったので「私、行きます!」って立候補。言葉も話せないままでしたが、なんとかなるかな、と思って渡仏しました。

ー言葉も話せなかったのでは大変だったのではないですか?

 パリに来て、学校も通いましたが、すぐに辞めてしまいました。その代わり、カフェのテラスが私の学校みたいなものでしたね。友達ができて、そこで言葉も自然に覚えたので、半年ほどで一応生活には困らない程度に話せるようになりました。最初に住んでいたのがモンマルトルのあたりだったんですが、友人に言わせると、当時の私はモンマルトルなまりだったそうです(笑)。

ー最初はバイヤーとしてパリに住み始めたのですね。コーディネーターの仕事はいつ頃から?

 91年頃でしょうか。スタイリストのソニア・パークさんが撮影でパリに来る際に、アイロンがけをするアシスタントを探していたんです。「アイロンがけくらいだったら私にもできるよ!」と撮影に同行したんですが、結果的に、ロケ場所を探したり、コーディネート的なこともやって、ソニアさんから「コーディネーターになりなよ!」と言われたのが最初のきっかけです。それから口コミでだんだん仕事が増えていきました。

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コーディネーターを始めた、1991年ごろの大塚さん。

ー仕事をする上で心がけていることは有りますか?

 実はずっとフリーでやってきているので、上司や先輩がいたことがないんです。だから、基本的には自由に自己流でやってきました。でも、コーディネーターになってから一度だけ「タレントさんへの気配りが足りない」と注意されたことがありました。とても楽しかったのでお友達のように感じてしまっていたんですね。それは仕事を続ける上で、ずっと心に留めている言葉ですね。とはいえ、一緒に仕事をした人たちが「大変だったけど楽しかった」と言ってくれるのがうれしいので、仕事といえども楽しくやることを心がけています。パリは苦手と言っていた人が「博美さんのおかげでパリが好きになった」と言ってくれるのが一番うれしいですね。

ー現在のお仕事について聞かせてください。

 日本のブランドのパリでのファッションショーや展示会のコーディネートやアテンド、ブランドでいうと「アンダーカバー(UNDER COVER)」、「カラー(kolor)」、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」、「クリスチャンダダ(CHRISTIAN DADA)」などです。それから、ファッションブランドのキャンペーン撮影のコーディネートもしています。最近は、フランス人が日本にとても興味を持っていて、日本を好きな人が多いので、逆にフランスのブランドや雑誌を日本でアテンドする機会も多くなってきました。先日の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のクルーズショーの告知ムービーにも携わりました。最近では、パリに来る日本人の方をコーディネートするだけではなく、日本とフランス、双方からの橋渡し役になっている感じですね。拠点も今はパリのほうが多いんですが、今後は半々くらいになるかもしれません。それから、最近はまたバイイングのコンサルティングもやっていて、フランス、モロッコ、イタリアにも買い付けに行きました。ウィンドウショッピングも含めて買い物好きなので、バイイングも楽しいですね。

paridekatsuyaku0822-720170606001.jpgUNDER COVER 2016-17AW Collectionより

paridekatsuyaku0822-520170601001.jpgkolor 2017-18 AW Collectionより

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