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【インタビュー】エアフォース1の虜 リカルド・ティッシが語る色褪せることない「NIKE愛」

リカルド・ティッシ Photo by: NIKE

 12年にわたりクリエーティブディレクターとして在籍した「ジバンシィ(GIVENCHY)」を今年の2月に去ったリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)。9月某日、その姿はロサンゼルスのNIKE エアフォース1新作発表会場にあった。退任後、動向に注目が集まる中、ナイキとNBAとのコラボレーションコレクション「NIKELAB x RT ヴィクトリアス・ミノタウロス」を発表。パーテーションでメディアからも姿が見えない厳戒態勢の中、リカルド・ティッシがインタビューに応じてくれた。

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ーナイキとのコラボレーションは何年目になりますか?

 遡ると

7年前に手掛けたエアフォース1がナイキとの初めての仕事。それからオリンピック関連のウエアやダンク、エアマックスなど継続的にコラボレーションを行なってきた。中でも今回は自分も好きなNBAとの協業コレクションなので、僕にとってもNBAとパートナーシップを結んだナイキにとっても大事なコレクションで、携われて光栄に思っている。

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ーそもそもどのような経緯でナイキとの協業がスタートしたのでしょう?

 小さい頃からナイキの大ファンだったんだ。今でこそスポーツとファッションの関係は強まりつつあるけど、7年前はクチュールのデザイナーでスポーツウエアに取り組んでいるデザイナーは少なかった。ナイキはその分野の可能性に早くから目をつけていたスポーツブランドで、クチュールというラグジュアリーさと、若い世代の感覚も持ち合わせた僕の二面性のスタイルを評価してくれて。ずっとナイキのファンで、シューズやアパレルも愛用してたから即仕事を受けることにした。ナイキとの仕事は自分のキャリアの中でもとても重要なプロジェクトで、回を重ねるごとにその絆も強くなっていると感じるよ。

ークチュールデザイナーとして長年活躍されてきましたが、スポーツとクチュール、デザインのプロセスで異なることは?もしくは共通点はありますか。

 そこまで違いはないように感じる。デザイナーの仕事として、身につけるものをクリエーションするという点において同じことだからね。ただ、ナイキは、僕にとって新たな「学びの場」だった。長くビッグメゾンのディレクターをしているとリーダーという立場上、「指示する」ことや「教える」ことが主な仕事になってくるからね。

 でも結局のところ、スポーツもクチュールもアプローチは似ていると思う。テクノロジーとクチュールは相反するもののようで実は近しいものがあるんじゃないかな。クチュールはとても細かいところまで手を施し、正確でなくてはいけない。それはテクノロジーも同じ。違いとしてはそれが手作業で小さいマーケットに向けて作られているか、それとも機械である程度のロットを生産して大きいグループに向けて作られているか、というターゲットの違いなだけな気がするよ。



ー今回のコレクションで気に入っているところは?

 バスケットボールをインスピレーションにしていて素材にメッシュを使ったり、ロゴはナイキのスウッシュと僕のトレードマークの星をNBAのロゴに見立てたりしている。小さい頃からナイキのスウェットやシャツ、ニットなどを着ていて、オックスフォードシャツなどはずっとあって欲しかったアイテムだから、完成したものはとても気に入っているよ。これまでナイキがやってこなかったようなウエアを作れたことはとても嬉しいし、誇りに思う。シャツは今から羽織って街に出かけたいくらい着るのが待ち遠しいよ。解禁がまだだから秘密にしておかないといけないんだけどね(笑)。

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ーナイキはどういう存在ですか?

 ナイキは僕にとって「アメリカン・ドリーム」そのもの。イタリアの田舎のごく普通の家庭で育った僕にとって、90年代のナイキはある意味「言語」だった。ナイキを着ることで自分の好きな音楽やカルチャーと繋がれる。服であり自分がどういう人間なのかを伝えるツールのようなものだったんだ。イタリア人の僕にとってナイキは海を越えた遠いアメリカへの憧れであり、象徴だった。ナイキは一番最初で一番身近なデザインでありスタイル、そしてファッションだったから、ナイキとの仕事はまさに夢が叶った瞬間だったわけさ。7年経った今でもその感情が薄れることはないよ。

ー

ナイキのシューズで一番のお気に入りはどのモデルですか?



 エアフォース1には目がないね(笑)。20年履き続けているよ。ナイキからエアフォース1を作ってくれと言われるたびに心が躍る。エアマックスとか色々なモデルも履くけど、やっぱりエアフォース1に戻ってくるね。僕にとってエアフォース1は特別な一足なんだよ。
NIKERT1-20170929_000.jpgークチュールの世界から一歩離れて、改めてファッションについて思うことはありますか?



 今クチュールの世界からステップアウトしているのは、長く同じポジションにいすぎたから。自分の時間が取れなくなってしまったことに気づいて、もっと愛する人たちとの時間を大事にしようと思ったんだ。もちろん今後クチュールの世界には戻るつもりでいるよ。今ファッションの世界は少し停滞している気がする。なので、少し距離を置くことによって客観的にファッションで今何が起きているかを見極めたいと思った。今はサバティカルの期間だけど、こうやってナイキとのコラボレーションのような自分の好きなことはやっている。僕は未来を見据えている人やブランドと仕事がしたいんだ。今のファッションはあくまで一般的に言うと、未だ過去に囚われているように見える。前に進むことが必要だね。でも僕は自分で戻るタイミングを選べる立場にあるので、とてもラッキーだと思うよ。

ー最後に日本について。ジバンシィでも日本に着想したコレクションを発表していましたね。

 日本のことは大好きだよ。文化や教養、歴史などあらゆる点で常にインスピレーションを与えてくれる国。ものづくりの全てにおいて細部にまでにこだわる姿勢も尊敬する。もちろん食べ物も好きだよ。寿司や刺身とか典型的な日本食のほかに、すき焼きとか家庭的な食べ物が好き。日本に初めて行ったのは19歳の時。初めての外国が日本だったから思い入れがあるし、とても身近に感じている。また近く行きたいと思っているよ。

(聞き手:今井 祐衣)