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東コレ卒業後の12年間、それからのTOGAとデザイナー古田泰子

 10月、東京でファションウィークが開幕する。国内のファッション関係者が意識する重要なイベントだが、今回は例年になく注目を集めている。東京を卒業した人気ブランド達が凱旋ショーを行うからだ。その一つに「トーガ(TOGA)」がある。東京、パリ、そして現在の拠点ロンドンと3箇所のファッションウィークを経験し設立20周年を迎えてなお、国内外で熱い視線を浴び続ける人気ブランドだ。SNSの普及でブランドがショーを行うことに議論が起こる今、「ある意味とても健全でシンプル」と語るデザイナー古田泰子。東コレ卒業者が、12年を経て得たものは?

なぜ再び東京で?ファッションショーの意味

−東京でのショーは12年ぶり。なぜ開催を?

 ブランドの20周年を記念して、現在進行形の"トーガの姿"を見せたいと思っていました。初期からブランドを支えてくれている方々への感謝と、まだTOGAを知らない方々にも知ってもらえる機会にできればと思っています。私が学生だった頃は、パリの後に東京でショーを開催するブランドがあってどうしても見たくて潜り込んだり(笑)。その分、当時の記憶は今でも鮮明に残っていて。ただ、実際にやってみると同じシーズンのショーを2回実施するのは思っていた以上に大変。今の目標は無事東京でのショーを終えて、平穏な21周年を迎えるということです(笑)。

−AT TOKYO枠での参加ですが、今回は同世代ブランドの参加が多いですね。

 そうですね。当初は、他の参加ブランドについて全く知らされていなかったですが、蓋を開けてみると錚々たるメンバーで。皆さんスタートしたのも時期が近かったですし、海外での発表も続けている。海外で活躍しているブランドが東京へ回帰するという大きなタイミングとなる今回、私たちもAT TOKYOのもと、共にショーを開催できることをとても嬉しく思っています。

−20年前を振り返って変わったこと、変わらないこと。

 立ち上げ当初は服を作る情熱だけで動いていましたから、自分でパターン引いてサンプルを縫ってという感じで、自分ができるものをできる範囲で作っていました。一番最初のコレクションなんて夏に夏の服を作ってましたから、それこそ「see now buy now(=見てすぐ買える)」施策のようなものでしたね。今は一連のファッションシステムの流れを把握して物作りができているので、そこはこの20年で一番大きく変わった点です(笑)。変わらないのは何を提案したくて自分たちは何を作るのかという考え方のプロセスでしょうか。発表する場所がどこであろうと、クリエーションに対する情熱は20年経っても変わっていないと思います。

−ブランド名「トーガ」はどういった意図からつけられたんでしょうか。

 まず最初にブランド名を自分の名前にはしたくなかったんです。当時はブランドを友人2名で始めたこともありましたし、自分たちの枠を超えて育って欲しいという思いがありました。意味は大事ですがどこの言語でもよくて、ただ初めて聞くような音なのに耳馴染みのよい名前。そして短くて略されないものがいいと思ったんです。

−海外でも覚えてもらいやすい名前ですよね。

 そうですね。発表拠点をロンドンに置いていることもあってか、この間他のデザイナーに「ロンドンのブランドだと思ってた」と言われました。日本だけではなくてロンドンにもPRオフィスを設けていますが、日本ブランドということを強みにPRするのではなく、クロスボーダーでトーガの世界を伝えることに注力しているのも大きいかもしれません。

−東京での発表をやめて次の拠点はパリでした。

 学生時代にパリに留学していたのでそこで発表することに憧れがありました。それこそ東京での発表とは全く違っていて、当時は著名デザイナーでも会場からブーイングが起こったり、気に入らないと途中で退席するジャーナリストもいたり。時代性はあると思いますが、私にとってそれがファッションショーという評価される現場で、その頃から「ここで発表するってどういうことなんだろう」と思っていました。

−現在の発表拠点ロンドンに移したのはなぜ?

 これ以上の広がりを期待できないシーズンが何度か続いていて、思い切って何か違和感を感じているショーを休止してみようと展示会に切り替えたんです。精神的にも時間的にも余裕ができた時、あるバイヤーさんから「TOGAの靴をヨーロッパで作ったら?」と言われて紹介されたのがシックス(SIX)でした。今思うと、ショーをやらなかったから聞き入れることができたお話だったかもしれません。今では嬉しいことに、靴を入り口にしてトーガを知ってくださる方も多い状況です。

−ロンドンではショーを再開しましたね。

 最初は知名度がないのでゆっくりとコレクションを見てもらうためにプレゼンテーションから始めました。もちろん良い点はありますが、ショーよりも時間が長いことで私をはじめスタッフやモデルのモチベーションを維持するのは難しく、そもそも忙しいファッションウィーク中に気に入ったモデルを確保するのも大変な作業で、この手法を続けるのは難しいと感じていました。ランウェイショーは長くても10分程度ですから、そこに全ての力を注ぐというのが合理的なんじゃないかと、数シーズン後にショーに切り替えました。

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