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ファッション書籍もファスト化の流れ?

 最近、女性向けのお洒落指南本が数多く出ています。その大半がスタイリストの私物やスタイリングをさらっと紹介してポエムを添える、まるで読モ本みたいなクオリティ。

 手軽でかわいいと言えば聞こえはいいですが、本棚に残らないであろう本ばかり量産され、ファッション書籍までファストファッションのようになってしまったのではないかと感じています。ムックも似たようなスナップ本が次から次へと発売され力作が減った印象です。

■女性向けお洒落指南本は読モ本化

 私は週に一度は大手書店のファッションコーナーに行き新刊をチェックしています。 時間がないときはタイトルと表紙で判断しレジに向かうのですが、 久しぶりにジャケ買いで失敗したのがこの『kawaii図鑑』です。

 kawaii図鑑という硬派なタイトル。装苑やハイファッション系の雑誌を思わせる表紙。帰宅し本を開くと、『かわいいの帝国』のような評論系の本ではなく、 人気スタイリスト相澤樹さんのファンブックという趣の本でした。 スタイリング、オススメアイテム、リメイク術、行きつけのお店、 これまでの作品が一冊にまとめられています。

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写真+ポエムという構成

 感想としては、まず私は著者のファンというわけではない、kawaiiという感覚もよくわからない、 さらにこの本のターゲットである女性ですらない、そんな私ですので、 この本に面白さを見出すことはできず、読モ本みたいだなというのが率直なところです (女性が読めば感想も違ってくると思います)。構成も写真+ポエムなので 10分もかからず読み終えました。まさしくファストです。


 読モ本は写真がメイン。私物、コーディネート、行きつけのショップを さらっと紹介し短いテキスト(ポエム)を添える、ブログ本のような構成が大半を占めます。 ファンブックみたいなものなのでそれはかまいません。 ブログ形式の方が親近感わくでしょうし、彼女たちのライフスタイルを 覗いてみたいというのもわかります。

 しかしスタイリストにそれを求めている女性はそんなに多いのでしょうか? それがお洒落の参考になるのでしょうか?私は男なのでこの感覚はよくわからないのですが、 この手のお洒落指南本&スタイリスト本がとにかく最近目につくのですね。

 思い返してみると、このスタイリスト本ブームの第一波は2007年の 『ソニアのショッピングマニュアル(新装版)』からでした。 そこからテキストメインのファッション書籍が写真メインにシフト。 それでもまだ『ソニアのショッピングマニュアル』はテキストにも力が入っており、 読めば男性の私でもそのアイテムが欲しくなるほど引き込まれました。「ソニアのショッピングマニュアルシリーズは」男性の読者も多かったように 記憶しております。

 第二波は2009年の亀恭子さんと風間ゆみえさんの本のヒット。 ここから流れが変わってきたように思います。お洒落のテクニックではなく スタイリストのパーソナリティーの方をフィーチャーした本が増え、 大草直子さんもテキスト主体のお洒落指南から写真メインのお洒落指南になり、 読モ本のようなお手軽な本ばかり出てくるようになりました。

 どれもティムガン著『誰でも美しくなれる10の法則 全米No.1ファッションアドバイザーが教える』と比べると、 お洒落のハウツー本という点では内容も本そのものも薄いと言わざるをえず、 同じスタイリストの本だとは思えません。どちらかといえば今のスタイリスト本は読モ本に近く(自己啓発的なポエム)、 ファッション書籍のラノベ化が始まっているのか?と思ったくらいです (読みやすくなったのは良いことなのかもしれませんが・・・)。

 お洒落の参考にするなら、体系的に記されている本が良いと思うのですが、 それは私が理屈っぽい男性だからそう思うだけでしょうか?

■男性向けお洒落指南本はNAVERまとめ化

 さすがに理屈っぽい男性向けの本はまだテキスト主体が多いのですが、 こちらも徐々にファスト化しているように感じています。

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 これが故・落合氏のような従来のお洒落指南本なら、テーラーにクラシックなバランスを聞いたり、 そのスタイルを生み出した映画や政治家を根拠にセンチ単位でお洒落の指南をしています。 もちろんそれらにまつわる薀蓄もうんざりするほど出てきます。 ブランメルが~、スティーブ・マックイーンが~、チャールズ皇太子が~等々、 こうした原点となったスタイルをどれだけ深く知っているのかがメンズでは重要だからです。 だからこそ故・落合氏の『男の服装術』は未だに男性のスーツ読本の決定版なのです (内容が古いにも関わらずこれに比類する本が出てきていない)。

 最近の男性のお洒落指南本はこの薀蓄がごっそり抜けた本が目立ちます。 トレンドや要点のみで構成されたNAVERまとめのような味気のない本です。 よく言えば、手に取りやすいお手軽な本で時間も食わないとも言えますが・・・。

■面白いスタイリスト本も中にはある

 もちろん、上記のような本ばかりではなく、今年発売された中だと 『祐真朋樹の密かな愉しみ』は読み応えがありました。 分厚さからして他のスタイリスト本とは一線を画しており495ページというボリューム。 写真もおまけ程度でテキストがメインです。

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写真はipod shuffleくらいの大きさ

 こちらはお洒落指南ではなく自叙伝という内容で、幼少期の思い出話、 上京して間もない頃のエピソード、仕事の話、影響を受けたデザイナーや ブランドとの出会いまで祐真さんの服道楽ぶりがたっぷりと語られます。

 佑真さんのファッションのイメージ通り、ディオールオム(エディ・スリマン)、 トムブラウン、ドルチェ&ガッバーナの話が多く出てきますが、 アメカジ考、モード考、定番(一生モノ)考などもエッセイの中に挟まれており、 これはお洒落の参考になるなと読んでいて思いました。

 例えば、男性のワードローブの定番であるOXBDシャツについて。

僕は、昼間、デイライトで着るオックスフォードボタンダウンをこよなく 愛する男であるが、それも20代までか、もしくは60台以上の男限定だと思っている。 その間の中途半端な世代が着ると、なんだか未練がましく青春を追いかけているような、 ある種爽やかさの押し売りのような、そんな感じがしてしまうのだ。 なので、"ボタンダウン"というかたちだけを残して、 アイビーではないファブリックを選び、ダブルカフスで仕上げた。

OXBDシャツはノータイでもノージャケットでも決まる男のワードローブの基本。クールビズでも使えるので一枚は持っておくのが正解です。というようなお洒落指南よりも、佑真さんのBDシャツに関する見解の方が よほど参考になると思いませんか?これに共感できるかどうかは置いておき、 一般人とは違うスタイリストならではの微妙な感覚や視点が言語化されている、 これが読み手としては面白いのです。こういう見方もあるのかと気付けますので。

 当たり障りのない要点だけのファッション指南はどれも似たり寄ったり。 そういうのはファッション誌の着こなし特集でやれば良いのではないでしょうか。 そんな本ばかり量産しても仕方がないと思うのです(すでに飽和状態)。 せっかくの単著なのですから、主観を熱く語ったお洒落本をもっと読みたいなと思うのです。 スタイリストの皆様、そんな感じの本をよろしくお願いします。

dale