放送局プロデューサー

ベテラン新人の挑戦「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記④~」

コレクションウィーク2日目と3日目に、キャリアを積んだベテランデザイナーの新ブランドが初めてのショーを行った。

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3月15日にショーを行った「セイジイノウエ(SeijiI INOUE)」。1995年からヒロココシノデザインオフィスに8年務めた後、ユニフォームや企業ブランドなどのデザインを手掛けていた井上セイジ(50)が、「人に言われたものではなく、自分のオリジナルのものを作りたい」と立ち上げたブランドだ。
今回のコレクションでは、表と裏、自然と人工、ハイテクとローテクなどの相反するものを、旅から得たインスピレーションのフィルターを通して再構築した。

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ショーでは、アジアや中南米など、これまで井上が旅をしてきた様々な国々のモチーフが見られた。コレクションを作り上げるにあたって、ヒロココシノで世界中の素材に触れた経験が役立ったという。中でも、インドの手織り生地カディで作られたジャケットやコートが印象的だった。

SEIJI INOUE 2016−17年秋冬コレクション

1999年からメンズブランド「ノーアイディー(NO ID)」のデザイナーとして活動してきたユウジスゲノ(菅野裕二)(47)が、去年立ち上げたブランド「ヴェンヌ(BENNU)」。3月16日に行われたファーストショーで、菅野は、「これまでの自分の「軸」となっているものを表現した」という。発表したのは、大人の男女に向けた、「懐かしく新しい服」「特に艶っぽい服」だ。

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これまで様々なミュージシャンの衣装も手掛けてきた菅野。ショーではLUNA SEAなどに所属するSUGIZOの生バイオリンの演奏も花を添えた。

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ショー後の囲み取材で、菅野が興味深いことを語った。「長年、企業デザイナーとして働いている間に、服が単なる「モノ」に見えるようになってきた。もう一度、「ファッション」として表現したいと思って新しいブランドを作った。」

BENNU 2016-17年秋冬コレクション


これまで働いてきた会社を離れ、新たなブランドを立ち上げた井上と菅野に共通するのは、「売れるものだけでなく、自分の作りたいものを作りたい。」ということだ。長年企業デザイナーとして働いてきた二人が、同じことを目指すのは興味深い。だからこそ、今後のコレクションでは、これまでの経験の蓄積だけではなく、更なる冒険を見てみたい。

昨今、他の業界でも、ベテラン人材の起業が一つの可能性として語られている。ファッションの世界では、若い新人デザイナーが注目を集めることが多いが、ベテランが作り出す「新たな世界」にも可能性を感じたい。

取材日記の2回目で、「隣接分野からの越境」を取り上げたが、例えば、ファッション界で長年活動してきたベテランの経験と、隣接分野や異業種のノウハウが結びつくことでも、更に豊かな世界が生まれるかもしれない。

【放送局プロデューサー小川徹の東コレ取材日記】
ファッション×テクノロジーのうねりが始まった「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記①~」
お隣さんからの越境は何を生むのか?「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記②~」
ネオ・オートクチュールの時代がやってくる!?「ファッション進化の芽を探せ!~東コレ取材日記③~」


小川徹