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「買う時代から買わない時代へ」軍地彩弓が語るファッション業界の大変革

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IFIビジネス・スクールは、グローバルな視点で、ファッション・ビジネス界で活躍するプロフェッショナルを育てる日本唯一のファッション業界に特化したスクール。同校では、ファッション業界を目指す人や業界で働く人々に向け、様々な講座や研修をおこなっています。

10月7日、ファッション・クリエイティブ・ディレクターの軍地彩弓さんを講師に迎え、「ファッションマーケティング研究会」が開催されました。軍地さんは、「NumeroTOKYO」のエディトリアルディレクターを務めるほか、自身の会社「gumi-gumi」を主宰するファッション・クリエイティブ・ディレクター。雑誌の他、コンサルタント業務、イベント制作、カタログ、写真集制作等を手がけ、今年の1月〜6月には経済産業省のアパレルサプライチェーン委員にも参加されました。

ファッション業界を取り巻く環境、新しい流れ、警告、可能性について軍地さんはどのように見ているのでしょう。講義内容を一部レポートします。

2016年、ファッション業界を取り巻く大変革とは?

軍地さんはファッション業界を取り巻く大変革は、消費、流通、メディア、IT、4つの革命があったと語ります。さらに、変化を表すキーワードを挙げて以下のように解説してくださいました。

買う時代から買わない時代へ。"シェア"と"定額制"がトレンド。

「雑誌の表紙で、"買わないという選択肢"というキーワードが使われたのには驚きました。これまで雑誌は"買う"ことを売る媒体だったのに、その雑誌が"買わないことがトレンド"と宣言したのです。消費者の意識は、人口の減少はもちろんですが震災以降に大きく変化しました。そういった背景があり、ものを沢山持つことの意味や、高いものを買うことが美徳とされなくなってきました。百貨店も厳しい状況が続き、閉店が相次いでいます。その一方で、ECの売り上げは伸びています。

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買わないブームのキーワードとして、"シェア"や"定額制"が挙げられます。ものを買わないでシェアする『airbnb』や『TimesCar』、『UberEats』などのシェア・エコノミーがトレンドですし、『Netflix』や『Sportfy』、『Kindle』など定額制でもの所有しない時代に入っていると思います。これはファッションでいうと『メチャカリ』や『エアークローゼット』。ストライプインターナショナルが運営する『メチャカリ』は、自社ブランドの商品をレンタルするサービスということで様々な意見が飛び交いましたが、結果として、レンタルを始めたことで元々の顧客じゃない層のユーザー獲得に繋がっています。

こういう新しいサービスがどんどん出てきたときに、既存のサービスが侵されてしまうんじゃないかと言われることがあります。でも、決してこれまでのサービスを侵すものではないんです。昔、"Video killed the radio star"という曲がありましたけど、結局のところ消費者はラジオも聴いていますよね。これと同じように、両方あっても殺しあわない多様性を消費者は持っていると思います」。

ファッション業界の流通革命。オムニチャンネル、越境EC、個人から工場へ

「これまでのアパレルでは、メーカーの都合で売りたいものをユーザーに見せるような流れでしたが、今はメーカーの都合ではなく、ユーザーの都合で動く時代です。IoTのおかげで、個人が欲しいものをダイレクトに工場にオーダーできるシステムも始まりました。例えば『ファクトリエ』のサービスは、リアル店舗で実際に試着して、自分のサイズで好きな素材や色を工場に発注できる。『シタテル』のように1枚からでも個人発注できる。大量生産の商品ではなく、個人がものづくりに共感して、自分だけのモノを手に入れられるようになりました。また、地方に行くと工場や産地が存続の危機になっていますが、こうしたシステムは地方の活性化にも繋がっているんですよね。

そして、インバウンドの低下によって越境ECの取り組みは急務です。レートの変動と、関税が上がったことを理由に、日本観光はショッピング目的だけではなくなりました。観光客はUSJや直島などの体験型に集中しています。そこで必要なのが越境ECですが、日本のECサイトの多くがまだ日本でしか対応しかできないシステムです。また、日本で立ち上げた越境ECで売り上げを獲得していくためには、独自のサイトでやるだけではなく、中国の『T MOLL』や『Net-a-porter』など海外のECに入っていったり、国際的シェアを持ったモールの傘下に入ることが必要になってくると思います」。

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雑誌より、テレビより、スマホ特化のメディアの時代へ

「メディアは"個人力"の時代です。SNSは、文字(Twitter)から画像(Instagram)、そして動画(Snapchat)の流れで、インフルエンサーの活用が重要視されています。先日のミラノコレクション中に起こったブロガー対エディターの構図も非常にユニークでした。今までのファッション業界は、エディターが影響力が強いものでしたが、今は実際ブロガーの方がネット上では立場が上になっています。マスメディアが権力を持っていたのは、情報が隔離されていた中で発信していたからで、今はブロガーがタイムリーに情報を発信できるようになった。雑誌でできること、デジタルができることはそれぞれ別のベクトルであると思います。そのデジタルの強みが上手くビジネスに活かされているのが『See Now,Buy Now』の動きです。

『Fashion Tech』も一つのキーワードですが、ファッション業界の人はまだITに対して近視眼的な目を持っていると思います。いろいろな事例が増えていますが、なかなか繋がっていかない現状です。アマゾン ファッション・ウィークが開催されますが、これからアマゾンのプラットフォームを生かした海外発信のチャンスがあると思います。今の時代、スタートアップをするには"資金"、"ものをつくる人"、"テクノロジー"、この3つがないと厳しいと言われています。AR活用なども今後事例が増えて行くと思いますが、ファッションはやはり誰かと共感するメディアですから、パーソナルなARメディアをどう活用するかがポイントになるでしょう」。

会場にはファッション業界で働く生産者やバイヤーなど、多くの受講生が駆けつけていました。講義の終わりには現場で起きている問題について軍地さんの見解を聞く質疑応答が行われ、会場は熱気に包まれました。大きな変革期を迎えているファッション業界ですが、これまでのルールにとらわれない、柔軟な対応も必要だということがよくわかる講義でした。

今回お伺いしたところ
IFI ビジネス・スクール https://www.ifi.or.jp/school/
ファッション・ビジネス界で活躍するプロフェッショナルを育てるファッション業界に特化したビジネススクール。ファッション業界を目指す人や業界で働く人々に向け、様々な講座や研修を行う。