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ファッションECの実店舗展開が加速中? 移動試着店舗「True&co.」に注目

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O2O(Online to Offline)の試みとして、このところファッションECが積極的に実店舗を構えるようになってきました。国内外の取り組みを概観しながら、ECとユーザとの間に"居場所"を模索する実店舗のあり方について考えてみます。

1. ECサイトが実店舗を展開する動きがトレンドに

20170126di2.jpgAmazonが実店舗を出店 - Amazon Books

ECサイトが実店舗を展開する動きがここ数年、目立ってきています。その象徴的な出来事が、米Amazon.comによる書店経営への参入でした。2015年に本社のあるシアトルに実店舗「Amazon Books(アマゾン・ブックス)」を構えたのを皮切りに、サン・ディエゴ、ポートランドに立て続けにオープンさせ、さらに今後1年のあいだに、アメリカ全土に二桁のポップアップストア設置を計画中です。

国内でもこうした流れは顕著で、ファションECだけに限っても、例えばレディース、メンズ・キッズ向けファストファッションを提供する「shoplist.com(ショップリスト)」が2014年の8月から2016年10月27日まで表参道に期間限定ショップを展開しました。

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こちらはDHOLICのリアルショップ(新宿ルミネ) - DHOLIC
若い世代を中心に人気を集める韓国系ファッションECサイト「DHOLIC(ディーホリック)」も、2015年9月4日にルミネエスト新宿に実店舗をオープンしたのを機に東京を中心に複数の店舗を展開しています。このほか、「tocco closet(トッコ・クローゼット)」や「coca(コカ)」なども同様に都心の駅ビルのテナントを中心に出店を進めています。

これらの特徴は、どれもいわゆる「完全な」実店舗であること。都心の一等地に高額なテナント料金を支払い、インテリアや什器まで揃え、マンパワーも在庫も完備しています。ライバルとなるのは大手アパレルメーカーで、店舗の運営には相応のコストが必要になります。

2.「True&co.」の移動試着店舗が面白い理由

こうしたECサイトを実店舗化するトレンドの中でひときわ異彩を放って見えるのが、主に女性向けのアンダーウエアを取り扱う米「True&co.(トゥルー・アンド・コー)」の試みです。いわゆる実店舗とは一線を画したビジネスを展開しています。ボディへのフィット感がより重要視されるアンダーウエアは、購入する前に試着したいと考える女性がほとんど。そうした女性たちのために導入されたのが、アメリカ全土を旅する「Try-On Truck(試着トラック)」(2016年)です。

ガラスと木材、鉄によってつくられた7メートル強のこのいわゆる"ノマドな"小売形態は、およそ1年をかけて国内を周遊する予定。空調の効いた4つの試着室とシートを備え、創設者の「お家に帰ってきたような暖かい環境作りがしたい」という意思を反映した極めて快適なものとなっています。

・開放感ある試着トラック内の光景

True&Co.さん(@trueandco)が投稿した写真 -

他にも各地で「Try-On Tent(試着テント)」を期間限定で展開中です。

・テント式の試着スペース

・くつろいだ雰囲気で試着できます

True&Co.さん(@trueandco)が投稿した写真 -

「Try-On Truck」にしろ「Try-On Tent」にしろ、決定的に重要なのは、ニューヨークの路面やデパートなどにテナントとして店舗を構えるのに比べて、運営コストをはるかに削減できるということ。"ノマドな"形態の惹きの強さもさることながら、洒落た設えや居心地が良いインテリアによって、低コストな実店舗を実現させているというわけです。

3. 国内でも浸透しつつあるショールームとしての実店舗

国内でも、こうした低コストないわばショールーム的な実店舗展開をしているメーカーは少なくありません。例えば、ワイシャツをはじめネクタイなど小物の販売を自社ECサイトで手がけている「柳田織物」は、2014年に六本木にショールームを開設。興味深いのは、路面店ではなく築古ビル物件の8階にある事務所の一角を利用しているという点です。設備も必要最低限で、ストックされている商品もほんの一部。事前予約をして希望の商品を取り寄せておくというスタイルです。

20170126di4.jpgショールーム - ozie blog

ショールーム(ショールームビュー)の設置にあたっては、売り上げ予算は設けられず、新たな人員も採用されていません。また商品販売のための積極的な接客がほとんど行われていないにもかかわらず、来店したユーザの7割以上が商品を購入。ショールームのオープン以来、年間売上を130%前後も上昇させています。しかも一度試着すればおよそのサイズ感が分かるため、その後はECを経由して実に3割以上のリピート率を維持しているとのこと。つまりオフラインのショールームがオンラインの玄関口として機能しているということになります。

ときに、2013年にファッションコーディネートアプリ「WEAR」がリリースされた際、ファッション業界からの大きな反発があったことを覚えている方も多いと思います。バーコードスキャン機能によって実店舗で商品情報を読み取り、後でZOZOTOWNで購入するといういわゆる「ショールーミング」が問題となり、館内での写真撮影を禁止とする商業施設さえあらわれました。

「True&co.」や「柳田織物」には、ECと実店舗の間に、一方に利益があればもう一方に損失が生じるという、そうした「ねじれ」構造がありません。O2O戦略のあり方として、ユーザに寄り添ったショッピング体験を提供できているという意味で、現時点で一つの模範となる形を示していると言えるでしょう。今後はECとユーザとの間にあるべき、実店舗のさらに「親密な」姿が登場することに期待したいところです。

True&co.

https://trueandco.com/

ozie

http://www.ozie.co.jp/

Cover photo by - True&co. Official web

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。