小島ファッションマーケティング代表

アパレルチェーンに広がる閉店、撤退の波

ギャップジャパンは渋谷・公園通りの「ギャップ」渋谷店を5月7日をもって閉店する。上陸翌年の96年11月から旗艦店的役割を果たしてきた主力店の閉店は業界のみならず一般消費者にもショックだったのではないか。「オールドネイビー」全53店の撤退が業界に衝撃を与え、販売不振が続く「ギャップ」にも閉店が広がるのではと危惧されていた矢先だけに関係者の動揺は否めない。

そもそも「オールドネイビー」が12年の上陸からわずか4年で撤退に追い込まれたのには、95年に上陸して多店化していた「ギャップ」の価格政策が大きく災いしたという見方がある。

「ギャップ」は米国の二倍近い価格政策を採り、煩雑かつ大幅な値引き訴求で消化を図って来たため、消費者も『ちょっと待てば安くなる』『正価で買うのは馬鹿らしい』という購買感覚が身に付いていた。そんな反省からか「オールドネイビー」は米国価格からの積み上げを最小限に抑えたが、消費者は「ギャップ」と同じような値引き訴求を期待してしまい、販売効率が低位に留まったこともあって利幅の薄い「オールドネイビー」は採算の目処が立たなくなり、撤退に追い込まれてしまった。先輩が付けた購買慣習が後輩を圧し潰してしまった訳で、「ギャップ」の価格政策が悔やまれる。

アパレルチェーンの販売不振は世界的なもので、過剰供給と同質化がもたらす値崩れが価格不信を拡げていたところに、ECの急拡大が引導を渡して雪崩的な閉店ラッシュが始まった。ECの急拡大は消費の移動のみならず、売れ足の速いECへの優先配分で不振店にますます売れ筋が回らなくなって閉店を加速してしまう。アパレル市場総体が低迷しているのに闇雲にECを拡大すれば下位店舗の閉店ラッシュを招くのは必定だ。我が国でもそれを裏付ける兆候が急激に広がっており、米国並みの閉店ラッシュが迫っている。

ギャップジャパンは17年1月期末までに「オールドネイビー」の53店を含む75店を撤退して280億円の減収を見込んでいたが、今期に入っても閉店が続くようだと歯止めが見えなくなる。本日現在で「ギャップ」161店、「バナナリパブリック」49店が存在するが、このうち何店が閉店する事になるのだろうか。
外資チェーンの閉店や撤退はギャップ社に留まらない。アパレルはローカルなものであって世界中で普遍的に売れるブランドなど存在しない。アウェイなマーケットでは運営コストもロスも肥大するから本国より採算は厳しく、販売効率が低位に留まれば閉店や撤退が取沙汰される事になる。日本国内店舗の採算もともかく本国の経営状態や方針転換で突然の撤退も有り得るから、商業施設デベならずとも固唾をのんで見守る情況だ。

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