服が持つストーリーの"ひとかけら"を届けるWebマガジン

ギャルとはなんだったのか?ぇりもっこりに見るギャルの本懐

HITOMI ITO  Photography: by Yuki Inui

ガングロギャルに会うよ!」

取材前。嬉しさのあまり会う人会う人に言っていたら、みなまず、驚きとともにこう返してきた。

「まだいるの?!」

1990年代後半から爆発的に"増殖"した「ガングロギャル」は、2000年代半ばには雲散霧消した。

くだんのガングロとは、ぇりもっこりちゃん(24)。「たぶん、ウチが最後のギャル」と話すのも嘘ではないだろう。

zganguro-erimokkori-20170515_003.jpgぇりもっこり
1993年2月4日生まれ。栃木県栃木市都賀町の出身。中学1年でギャルに目覚めて以来、ガングロギャルを貫く。ギャルサーユニット・BLACK DIAMONDリーダー。渋谷「ガングロカフェ」の店長。映画・CM・テレビ・雑誌など、メディア出演多数。

「(ギャルを)やりたいからやる」と言い切り、10年以上ガングロを貫くぇりもっこりちゃんは、ガングロとして以上に、ギャルの魂を受け継いだ最後のギャルかもしれない。

ギャルの魂とは? ぇりもっこりちゃんがいまも愛し、住み続ける地元・栃木県栃木市都賀町を訪ね、そのルーツを探った。

1990年代半ば、ファッションビル・渋谷109の店員のスタイルが脚光を浴び、ミニスカート、厚底ブーツ、ロングの茶髪(もしくは金髪)に、黒めの肌という「ギャル」スタイルが一気に広まった。

ガングロ」とは、強調を意味する「ガン」に、「黒い」が合わさった言葉だったように記憶している。

「黒ければ黒いほどかわいい」と、日焼けサロン(以下、日サロ)でガンガン焼き、それに合わせてメイクもヘアもどんどん"強め"に進化したのが「ガングロ」だ(「ヤマンバギャル」はさらにその進化系)。

ganguro-erimokkori-20170515_004.jpg

ぇりもっこりちゃんがイベントで1日限定でヤマンバに。髪の毛は1日掛けて着けたファイバー。「生活できないですよ!」(提供:ぇりもっこり)

当時も世間の多くは、「なんだあれは」「あんなことして大丈夫か?」という目で、ガングロたちを眺めていたが、彼女たちはそんな視線を物ともせず、独自の道を邁進する、まさに"強め"な女の子たちだった。

しかし2000年代も半ばになり、時代が清楚の方向へ舵を切ると、"強め"だった彼女たちもギャルを卒業。黒から白へ。"強め"よりウケの良い"甘め"へ。「ギャル」の定義もどんどん変わり、いまに至る。

この時代だからこそギャルをやる」と、言い切るぇりもっこりちゃん。中学校に入って以来のガングロ歴は、10年を数えた。

ganguro-erimokkori-20170419_002.jpg

ギャルについて雑誌もなくなり、ほとんど情報源がないいま。服やメイクは、昔の画像を検索したりして研究しているという。「理想のギャルはもっと黒いし、強め。満足することない!」。

中学に入って、2つ上の先輩にガングロがいて、「かわいい! 私がなりたいのはコレだ!」って。めっちゃ衝撃でしたね。

小さい頃はどちらかと言えば、自己主張をしない子どもだったという。親が買ってきた服に、親に結わってもらった髪。やりたいことも特になく、むしろ友だちに言いたいことも言えないほうだったと振り返る。

ganguro-erimokkori-20170515_005.jpg

幼い頃のぇりもっこりちゃん。(提供:ぇりもっこり)

中学に上がったのは、そろそろガングロブームも末期という頃ではあった。しかし革命的な出会いを経て、ぇりもっこりちゃんはまず、電車で小山市にある日サロに通い始めた。

肌黒くないと、そもそもギャルじゃないなって。髪の毛染めても、爪やっても、肌白いと、パギャル(※中途半端なギャル、の意)だしって。

ときには自転車で2時間くらいかけて通ったことも。

服は先輩や友だちにいらない服をもらったりしていましたね。そこで節約して、10分でも多く焼きたいって。

両親が当初、猛反対したのは想像に難くないだろう。人通りがある時間は家の近くを出歩くことは禁止され、服を捨てられたりはしょっちゅうだった。

ganguro-erimokkori-20170419_001.jpg

母親は比較的早々に受け入れてくれたという。この日も着替えの際、髪の毛を結んでくれたのは母親。父親はいまだに難色を示している。撮影は彼女の地元で行った。歩いていると、道路の向こうから、人があからさまな奇異の目を投げかけてくる。「あんなのはまだ良いほうですよ。ひどいときは、目の前までずかずか来て、顔を覗き込んできますから。無言で」。

それでも変わらず仲良くしてくれている友人たちの存在が、彼女を支え、強くしたのかもしれない。

だいたいみんなヤンキーっぽい格好してたんですけど、それはかわいいとは思えなくて。みんなビッグスクーター乗ったり、祭りのときはサラシ巻いたりしてるのに、ウチだけギャルで、謎な感じ(笑)。友だちは、ウチだけ違ってもみんな変わらず接してくれてました。いまでも仲良いです。

厳しい世間の目という逆風だけでない。ガングロをやるのは、そもそもかなりのコストがかかる。

聞けば、10cmはあろうデコレーションのネイルは1回25,000円。通常より強いブリーチ剤を使って仕上げるヘアは1回、30,000〜40,000円。日サロは最低でも1回20,000円かかるが、定期的に焼かないと黒さを維持できない。そのほか、カラコン、化粧品、服で20,000〜30,000円と、月にかかる基本の維持コストも"パない"(※ハンパじゃない、の意)。

しかも、どれも丸一日費やして仕上げる。

ふつうの人は、ヘア行っても長くてせいぜい3〜4時間だと思うんですけど、ガングロの場合、朝10時に行って、終わるのが夜の8時、9時。ネイルはネイルで1日かかります。ふつうの人が「美容デー!」って、エステ、ヘアサロン、ネイルに1日で行ったりしてますけど、絶対ムリ! もちろん、その日は仕事入れられません。

ganguro-erimokkori-20170515_006.jpg

メンテナンスにそれだけの時間もかけながら、遊ぶ暇はあるのだろうか?
「ウチ、時間を有効活用したい人なんで、なんだかんだ遊んでます。例えば、築地で撮影があったときは、30分休憩の合間にお寿司買ってきて、休憩中食べてました。多摩で撮影やったときも、サンリオピューロランドで2時間空きのときに、グッズ買ってきて撮影に戻ったり。その帰りは、読売ランドで遊んでから、渋谷行って仕事しましたし。せっかく行くんで、時間あればなにかしますね」。

ただでさえ大変なガングロギャル。それが時代の流れから、やってくれる人や場所、使えるモノがどんどん減っていっており、ますますギャルをやるのが難しい時代になっている。

この10年で、ぇりもっこりちゃんが通っていた日サロも値上げ。使っていたコンタクトや黒肌に映える化粧品も、どんどん廃盤になっていっているという。ギャル服ブランドも次々となくなり、いまは自分でリメイクしたりして、工夫しているという。

時代がどんどん変わっていくから、めっちゃ生きにくいです。(ギャルが流行った)あの当時やるほうが、周りにもそういう人多いし、服とかもあって生きやすいと思うんですけど、当時だとやっぱりそれが「ふつう」になるじゃないですか。いまギャルやってる子は、個性とか、人と同じことやるのが嫌で、「あえて」ギャルやってる人が多いんで。逆に当時だったら、清楚とかやってたいな。

ganguro-erimokkori-20170515_007.jpg

いまも、栃木から渋谷まで片道2時間近くかけて通いながら仕事を続けるぇりもっこりちゃん。渋谷との往復は大荷物。写真で肩にかけているバッグは5kgはある。それを2つ担ぐのがデフォルトだそう。

逆風の中でも自分を貫き、ギャルサー(※ギャルサークル、の略)ユニット・BLACK DIAMONDのリーダーとして、ツイッターやメディアでギャルを発信する姿に、ファンからの「憧れています!」「ぇりもっこりちゃんみたいになりたい!」という声は後を絶たない。

しかし......

そう言ってくれた子に、「後悔するから、やりたいときにやりたいことやったほうが良いよ」って言うと、「親/学校が......」「田舎だから周りからどう思われるか分かんないです......」って言われるのがあまりにも多い。でも、そう考えてるんじゃこの子はギャルになれないな。心からギャルじゃないな、って思っちゃいますね。

ganguro-erimokkoriaa-20170515_001.jpg

バッグの中で最も重かったのは化粧ポーチ(右)。自宅の部屋は頑なに「汚いんで! "汚部屋"なんで!」と、見せてもらえなかったが、ポーチの中は意外に(?!)整理整頓されている。

やりたいからやる」 それがギャルの本懐だ。

しかし自分の意志を貫くより、いまはファッションも、周りの目を最優先に考える時代かもしれない。

ほんと男ウケ多いですね。以前、(BLACK DIAMONDの)妹グループの子といっしょにテレビの仕事したとき、「どういうギャルになりたいですか?」って質問に、「私は黒く焼いても、男ウケが良い、男の人がかわいいと思う黒さにしかしたくない。小麦くらいがいいです」って言ってて。男ウケとか言ってる時点で、考え方がギャルじゃない。黒ければ黒いほどかわいいし、男ウケより、自分がやりたいからやってるっていうのが大事なんで。だから、「なんか違うな」って。

ganguro-erimokkori-20170515_008.jpg

周りの目に配慮することは、決して否定すべきことではないし、むしろ必要な場面だってある。「好かれたい」という欲求も、決して悪いものではない。しかし「もしそれが、自分らしさの足かせになっていたとしたら......?」と、思わされてしまう。「ファッションこそ、自己表現のためのツールじゃないのか......?」

自分らしさを貫きすぎても、弊害はもちろんある。

まず第一に、男性との出会いに恵まれない! と、ぇりもっこりちゃん。

「いいな」と思った人とか、気になってる人とか、だいたいギャルが嫌い。「ふつうになったら」「もっと薄くなったら付き合えるけど、その状態で歩くのはしんどい」って、ほぼ100%言われます。でも、「見かけでそう言うくらいなら、もういいや」って思うけど、「やっぱりギャルだめだな」「みんな清楚好きかよ」って、思う気持ちも正直あります。

ganguro-erimokkori-20170515_009.jpg

年齢を重ねるにつれ、葛藤もある。グループでも3人だけだった黒い"強め"仲間の一人が、今年早々結婚を機にギャルを卒業。地元に帰ってしまったのも、大きなダメージのようだ。

その子が故郷に帰る前には、3人で泣きながら断髪式をしたという。残る"強め"ギャルはぇりもっこりちゃんとあと1人。この状況に、寂しさがある。

ギャルをいつ辞めるかはけっこう、ハタチ越してから考えてますね。今年25(歳)になるんで、結婚とかいろいろ考えると......。
でも、謎な責任感じゃないですけど、一応肩書的にもリーダーなんで、ウチが辞めたらそんな派手な子いないのに、グループを引っ張っていける子いるのかな、とか。もっとでかいグループにしてから辞めないとかな、とか考えちゃって。

ganguro-erimokkoriaa-20170515_002.jpg

BLACK DIAMONDでもここまで"強い"ギャルはこの3人だけだったという。(提供:ぇりもっこり)

ギャルを続けて、ぇりもっこりちゃんが目指すものはなんだろうか?

ギャルを増やしたいな、とは思います。また流行ればいいなっていうより、「やりたいのにやらない」っていう人があまりに多いし。それに単純に、ジャンルでギャルがいちばんかわいいと思うし、ギャルが好きなんで、それをいっしょに発信してくれたりとか、かわいいと思って理解してくれて、やってくれる人が増えたらいいな、とは思いますね。

ganguro-erimokkori-20170515_010.jpg

その延長で、「どんなおばあちゃんになっていたい?」と、尋ねたのは愚問だったな、と後から思う。

ぇりもっこりちゃんが、「考えたことない! ぜんぜん分かんないや......」と、答えるのは当然だろう(「ゲートボールしてたい」と、なんとか答えてくれたが)。

だって、ギャルは、いましかない「いま」を全力で生きているのだから。

ぇりもっこり / BLACK DIAMOND
【ぇりもっこりtwitter】https://twitter.com/mokorieri
【BLACK DIAMOND twitter】https://twitter.com/bdiajp

ぇりもっこりちゃんに会うなら「ガングロカフェ」へ!
えりもっこりちゃんが店長を務める「ガングロカフェ」。「BLACK DIAMOND」のメンバーであるガングロギャルにも会える!ガングロメイクも体験可能。ガングロメイクで一緒にギャルとプリクラ撮影できるメニューも。
【Website】http://ganguro.jugemcart.com/