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「クラフトフェアまつもと」で触れた生活道具とつくり手の想い

「クラフトフェアまつもと」で触れた生活道具とつくり手の想いの画像

「ものづくり」や「クラフト」といった言葉が今ほど馴染みのなかった約30年前。

つくり手たちの発表や交流の場をつくろうと立ち上がった人々によって、「クラフトフェアまつもと」の歴史がはじまりました。

今では全国でも増えましたが、そんなものづくりイベントの先駆け的な場所に百景取材班で足を運んできましたよ!

当日の会場の様子から、立ち上げに関わった方の想い、松本のおすすめエリアまで、ぎゅっと情報を詰め込んでお送りします!

もくじ

日本中のつくり手とつかい手が出逢う、クラフトイベントの先駆け的存在

「世界はバラバラになりすぎた 生命はもっと単純なものだ」スローガンに込められた意志とは

イベント以外でも、すてきなものづくりの空間に出逢える松本の街

日本中のつくり手とつかい手が出逢う、クラフトイベントの先駆け的存在

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クラフトフェアまつもとは、毎年5月の最後の土日に、長野県松本市の「あがたの森公園」で開催されるものづくりの販売イベントです。

約280のつくり手と、約5万人もの来場者が集まるこのイベントは、2017年で33回目を迎えました。

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会場となるあがたの森公園は、松本の市街から徒歩圏内に位置する公園です。

この公園は、1920(大正9)年に建築された旧制松本高等学校の跡地。校舎も当時の風格ある佇まいのまま保存されています。

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一部は図書館や公民館として現在も活用されており、クラフトフェア当日も一般開放していました。

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取材班は、日曜日に東京から日帰りで参加。
7時ごろに出発し、お昼前には松本に到着しました。

松本市内に入ると、道路脇に駐車場案内の看板がちらほら目に入ります。

ここで一つ注意点です!

クラフトフェアまつもとでは専用駐車場が用意されていないので、事前に公式HPで駐車場案内をチェックしておくとスムーズです。

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会場入口で配られていたMAP

無料駐車場もありますが、そこから会場までは徒歩だと少し距離があります...。
私たちはなるべく公園近くの有料駐車場に駐車。もちろん場所によって料金設定が異なります。

イベント2日目の午前中だったせいか、駐車場に空きがなくて困ることはありませんでした。現場のスタッフさんによると、やはり初日のほうが混み合うそうです。

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会場には、木工や陶芸、ガラス、革などのさまざまなつくり手さんのテントがジャンル問わずに立ち並びます。

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クラフトフェアまつもと会場のあがたの森公園は緑がとっても豊かな場所。
当日は陽射しが強かったにも関わらず、木漏れ日の下で快適に過ごすことができました。

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あれこれほしいアイテムに目星をつけたところで、腹ごしらえも叶います♪
会場には3か所のごはんエリアがありました。

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ものづくりが好きな人々の間では、もはや定番のイベントになっているクラフトフェアまつもと。

多くの人々が集まっているのに、会場にはゴミひとつ落ちておらず、とても平和な雰囲気です。こんなイベントをずっと民間主体で運営しているというから驚きです。

33年の時を経てここまで歩んできた経緯について、開催第一回目からクラフトフェアまつもとに携わる伊藤博敏さんに伺いました。

「世界はバラバラになりすぎた 生命はもっと単純なものだ」スローガンに込められた意志とは

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F85A7299-42-1-1.jpgイベントのはじまりは、立ち上げメンバーのひとりが、木工の技術を学びにウィンザーチェアの本場であるイギリスに渡ったことでした。そこで、現地の工房が参加していたクラフトフェアに感銘を受け、松本でも同じことが出来ないかと考えたんです。同じ時期に、松本で木工作家として独立したもう一人の仲間がアメリカでクラフトフェスティバルを知り、2人が共感して動き始めたのがきっかけです。立ち上げメンバーの中には松本民芸家具*で技術を学び、独立した木工作家が数人いたので、必然的にクラフトフェアの出展作品は木工のクラフトが多かったですね。

※松本民芸家具...松本市にある木工家具の老舗。イギリスの技術を引き継いだウィンザーチェアが代表作。

pc-footer-logo-1.png欧米では、「クラフト」と銘打った催しが当時から根付いていたんですか?

F85A7299-42-1-1.jpgそうですね。今は日本各地でもそういう動きがありますが、イギリスで行われているクラフトフェアの中には、自治体が地域の工房をいくつか選定し、各地でクラフトフェアが日本よりも早くから開催されていました。会場で職人がものづくりを実演して、半年間分くらいの仕事を受注する仕組みができているんです。

pc-footer-logo-1.png今でこそ日本各地でクラフトフェアが開催されていますが、この松本のクラフトフェアが草分け的な存在だと聞きました。何事も最初にやるのは大変ですよね。

F85A7299-42-1-1.jpg松本のつくり手仲間で集まって、会費として500円ずつ出しあったりしながら、まずは海外のクラフトフェアを見てきたメンバーが「クラフトフェアとはこういうものだったんですよ」と伝える報告会からはじまりました。そこから話し合いを重ね、署名運動をしたりしながら、この場所(あがたの森公園)を使わせてもらえることになったんです。

pc-footer-logo-1.pngつくり手のみなさんで本当にゼロから作り上げていったんですね。立ち上げに携わった方々の熱量を感じます。

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普段は石材店を営む伊藤さん。自遊石というギャラリーを併設し、石のアート制作もしています

F85A7299-42-1-1.jpg最初の参加者は、僕も含めて45組です。しがらみも無い代わりにつながりもないので、自分たちでどう進めるかを試行錯誤する日々でした。最初は自分たちの生活を成り立たせるためにはじめたクラフトフェアだったけど、初期の参加メンバーが県外から移住して来た人たちだったので、自然と外に情報が広がりました。すると、日本各地のつくり手が「自分も出たい!」という風に集まってくるようになったんです。

pc-footer-logo-1.pngそうして現在のような一大イベントへと成長していったんですね。

F85A7299-42-1-1.jpgみんな自分の作品発表と、つくり手同士や消費者との交流ができる場を求めていたんですよね。もともと、松本は柳宗悦による民芸の考え方が根付いている土地です。でも、個人作家の発表の場はありませんでした。今はクラフトギャラリーが各地にあるのは当たり前だけど、33年前はデパートの工芸サロンに人間国宝の作品があるくらいだった。松本市内にあった民芸店も、お土産屋さんのような感じでした。その結果、クラフトフェアへの出店希望者は年々増えて、今は毎年1,200組くらいの応募があります。

※柳宗悦...1889(明治22)年−1961(昭和36)年を生きた思想家。無名の職人たちが作る民衆の日常品を賞賛し、民藝運動(民芸運動)を指揮した。

pc-footer-logo-1.pngすごい規模ですね。出展者の選定基準はありますか?

F85A7299-42-1-1.jpg基準は、みなさんが日常的にものを選ぶときとそう変わりません。ものに対していろんな要素を体感する中で、「今の世の中にあると気持ちいいな」って感覚があるじゃないですか。言ってしまえば、クラフトフェアでも同じなんです。応募者の学歴や受賞歴はあまり関係なくて、応募用紙に貼られた1枚の写真なり、作品紹介のファイルなりを見て、この場所に並べたいものなのかを選考基準としています。

pc-footer-logo-1.png具体的に、出展者を選考するのはどのようなメンバーなのですか?

F85A7299-42-1-1.jpg選び手は、運営に携わる人々だけでなく、外部の方にも加わってもらっています。クラフトフェアまつもとのことを熟知しているギャラリーの方、バイヤーの方、地元の商店の人などに数年単位で入れ替わりながら選考を手伝ってもらい、ニュートラルに判断しています。それから、時代の半歩先をいっているな、と感じる作家さんを一部選出することも大事にしています。

pc-footer-logo-1.png今年で33回目ですが、イベントの雰囲気は年々変化を感じますか?

F85A7299-42-1-1.jpg相乗効果で出展者と参加者の質の向上ができていると思います。出展の応募者数が増えると、その分倍率が高くなるので、選ばれるつくり手のレベルは必然的に上がる。それによってバイヤーやギャラリーの人が毎年当たり前のようにここ松本まで足を運んでくれるようになりました。そうすると、今度は若手の作家が「あそこに行けばデビューの場になるんだ」といって集まってくれるんです。作りたいものを自由に発表するつくり手と、そのなかから自分の好みに合うものを選ぶつかい手が対等な関係になっています。

pc-footer-logo-1.png都心部で行われる大きな展示会や見本市とは違った空気が流れているのが、クラフトフェアまつもとの魅力ですね。

F85A7299-42-1-1.jpgもともとクラフトフェアの立ち上げに関わったメンバーは、「技術の継承」だけのものづくりに疑問を抱いていました。それだけじゃなくて「生んでいく作業」をしたかった。つまり、職人ではなくクリエイターでありたかったんです。このイベントが「民芸」ではなく「クラフト」を謳っているのには、そういう経緯があります。だから、毎回出展者の3割くらいは初参加の人なんです。イベント自体は歴史があるけど、新陳代謝はいい方なんじゃないかな。みんな自由に作りたいものをつくって、「3日前に始めたやつも、10年やってるやつもおんなじステージに立って戦おうよ」というのが合言葉です。

pc-footer-logo-1.png出展者の3割が変わるなら毎年来ても違う楽しみ方ができますね。お話を聞いていくうちに、ホームページのトップにある「世界はバラバラになりすぎた 生命はもっと単純なものだ」というスローガンの意味が分かってきたような気がします。

F85A7299-42-1-1.jpgつくり手たちは自分たちの基本的な考え方を、その頃自分たちが目指す空気感に合った言葉で共有し、意識をひとつにしてきたんです。このスローガンが言いたいのは、「ものづくりの中には定義がたくさんできてしまったけど、本来は難しいことじゃないんだよ」ということです。

pc-footer-logo-1.pngつくり手もつかい手も、もっと自由に構えればいいってことですよね。

F85A7299-42-1-1.jpg自分の感性で部屋のカーテンを選ぶように、暮らしの中のいろんなものをここで選んでみたらいいんじゃないかな。「クラフト」は衣食住すべてに関わるものですから。家だって、服だって食べ物だって、人間の手で作られたものですよね?

pc-footer-logo-1.png「クラフト」という言葉にも深いこだわりがあるんですね。

F85A7299-42-1-1.jpg例えば「工芸」という言葉も、明治になってから出来たもの。まだ百数十年しか経っていません。そこからさらに民芸や伝統工芸などそれぞれが概念化されていきました。暮らしの数だけ物があるのと同じで、考え方が分類されていくのは必然なのかもしれません。でも、僕らのDNAの中にはまだ江戸時代のカテゴライズされない自由なものづくりの考え方がある。「そういうのを出してもいいんじゃない?」というのがこのクラフトフェアのメッセージなんです。

pc-footer-logo-1.pngだから、「生命はもっと単純なものだ」かぁ...。そんなクラフトフェアまつもとの立ち上げの想いを知ると、よりリラックスした気持ちで楽しめそうです。ありがとうございました!

イベント以外でも、すてきなものづくりの空間に出逢える松本の街

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あがたの森公園からも徒歩圏の松本城

「シンプルに楽しんでほしい」という想いの背景に隠された深い意味に考えさせられたあとは、せっかくなので松本の街を散策してきました。

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おすすめスポットは、六九通り。

あがたの森公園から少し歩いた場所にあり、「工芸の五月」*の開催期間に合わせ、毎年3日間だけ各地のギャラリーがやってきます。

※工芸の五月...クラフトフェアまつもとから派生し、2007年からはじまったイベント。毎年5月を「工芸月間」とし、松本を中心に美術館・博物館・クラフトフェアなど70の会場で工芸の企画展が開かれる。

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飴屋さんの建物を活用した「10cm」

ここは、木工デザイナーの三木龍二さんが開いたショップの「10cm」。
三木さんは、クラフトフェアまつもとの初期からのメンバーであり、六九クラフトストリートの展示を企画した重要人物でもあります。

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最近松本にオープンしたミナ ペルホネンのショップ

こちらは、可愛らしい模様のテキスタイルにファンの多いミナ ペルホネンのショップ。東京・神奈川・京都・金沢に加え、ここ松本が選ばれました。

六九通りの別の店舗では、2017年の六九クラフトストリートのテーマであった「洗練と素朴」に合わせた展示も行われていましたよ。

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ミナ ペルホネンの展示会場

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植木屋さんやカフェも充実。ついつい目にとまります

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クラフトに対する意志を持つ人々や、民芸の考えを大事にする人々。

長野松本は、ものづくりをひとつのキーワードとして、各地からやってくる移住者を受け入れてきた自由な風土の歴史を感じさせてくれます。

だからこそ、クラフトフェアまつもとだけではなく、街全体にトラディショナルでありながら、現代のセンスを感じるショップが多く見られるのでは?

日本アルプスの山々に見守られた爽やかな空気の中、自由なものづくりを感じにみなさんも松本を訪れてみてはいかがでしょうか。

作者情報
shiori_avatar_1437215302-100x100.jpg山越 栞
フリーランスライター・編集者
「日本のかっこいいところを見つけて、もっと多くの人に伝えたい」そんな想いで執筆・編集などに携わる。10代から始めた茶道は現在も勉強中。