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写真家ミック・ロックが生み出したロックのイメージ

ミック・ロックの半生を描いたドキュメンタリー映画『SHOT! The Psycho-Spiritual Manta of Rock』が公開になる。i-Dは、その伝説的写真家に、ボウイやイギー、そしてケンブリッジの学生時代について訊いた。

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This article was originally published by i-D UK.

70年代のロックをイメージしてみてほしい。頭に浮かぶのは、おそらくミック・ロックが作り上げたイメージだ。オックスフォード・タウン・ホールでデヴィッド・ボウイがミック・ロンソンのギターに歯を立てている写真----アルバム『Transformer』のカバーに見られるやつれたルー・リード----"美しいチークの象徴、パンク版マリリン・モンロー、そして70年代が生んだもっともカリスマ性のあるパフォーマー、デビー・ハリー"といったイメージは、すべてミック・ロックが生み出したものだ。ロンドン出身のミック・ロック。彼は、アイコニックなミュージシャンの魂と彼らが放つオーラを捉えようとした。そして当時まだ確立されていなかったロックンロール写真を、音楽と切っても切り離せない存在にまで押し上げたのだ。ドキュメンタリー映画『SHOT! The Psycho-Spiritual Mantra of Rock』の主人公である伝説の写真家ミック・ロックに、ボウイやイギー・ポップ、そしていかにしてロック界でもっともアイコニックな写真家になったかについて聞いた。ロック家に生まれついたのだから、これは運命だったのだろうか?

なぜそこまでミュージシャンに惹かれるのだと思いますか?

大学のころに学んだことが影響しているんじゃないかな。ケンブリッジ大学ではとにかく暇を持て余していた。文学部を専攻して、フランスの象徴主義作家やイギリスのロマン派詩人、アメリカのビート作家を学んでいたんだ。作品だけじゃなく、それを生んだ作家や詩人と彼らのライフスタイルに惹かれた。彼らはさまざまな刺激を生活に取り入れ、おそらく何日も食事を摂らず、寝もしないようなライフスタイルを実践した。僕が写真を始めたころに撮ったミュージシャンたちは、ポップスターだろうとロックンローラーだろうと、有名アーティストであろうと無名ミュージシャンであろうと、僕が惹かれるそういうイメージを体現していた。その視点から写真を撮ったことが良かったのかもしれないね。

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Debbie Harry

最初に撮ったのは誰でしたか?

ひとが注目してくれた最初の被写体はシド・バレットだったね。根っからのアーティストで、生涯最後の瞬間まで絵を描いていたひとだよ。彼は唯一無二の個性を持っていた。彼なしにはピンク・フロイドも存在しなかったはず。彼には特別な輝きがあった。

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David Bowie

あなたが70年代に撮った写真に、今でもひとびとが惹かれるのはなぜでしょうか?

70年代には、特別にひとを惹きつける何かがある。60年代がブームになったときもあったけど、もう終わったね。70年代のグラムロックやパンクを象徴する人物たち、そして彼らが音楽に広く残した影響に惹かれるんだと思う。とりわけデヴィッド・ボウイは、新しいことに挑戦し続けた。マーク・ボランも同様だね。そしてローリング・ストーンズ----ストーンズはいまでも基本的に昔と変わらない音楽をやり続けながら、55,000人の観客を魅了し続けている。ボウイに関してはジギー・スターダスト期のヴィジュアルが、多くの意味でボウイのイメージとして定着しているけど、音楽的にはレゲエ以外のすべてを取り入れた。彼は非凡な存在だったよ。

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David Bowie, Mick Ronson

ボウイやシドのほかにも多くのアーティストを写真に収めてきていますが、彼らをミューズと位置付けていますか?

そう言われてみればそうだね。よく、「どんな写真家に影響を受けましたか?」と訊かれるんだけど、「影響を受けた」とまで言える写真家が思い浮かばないんだ。僕は写真家になりたかったわけではなかったから。だから、そうだね、彼らは僕にとってのミューズだったと思う。頭の中がサイケデリックだったからということもあるのかもしれないけど、当時の僕は彼らを人間ではない生き物のように見ていたところがあった。シドやボウイ、ルー・リード、フレディ・マーキュリーといった人物たちは、まさにミューズと呼ぶにふさわしい存在だった。ミューズ、もしくはキメラと呼ぶべき存在感だね。

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Lou Reed

キャリアにおいて運が占める割合はどの程度だと思いますか?

僕が撮影で初めて参加したボウイのコンサートの客は400人だった。ルー・リードの『Transformer』は、発売当初ほとんど売れなかった。出会ったばかりのイギー・ポップはどのレコード会社からも契約のオファーがなかった。クイーンでさえ、僕が初めて会ったときはヒット曲もなかった。だから、僕にとっては運がほとんどだと言える。もうひとつ言えることは、当時の僕がただ無我夢中でやるべきことをやっていたということ。よく、「あなたが写真に収めていたアーティストたちがどんな存在へと成長していくか、あなたには感じることができたのでしょうか?」なんて訊かれるけど、そんなわけがない! 本人たちですら、自分たちがあそこまでビッグになるなんて想像もしなかったはずだよ。ボウイは想定していたかもしれない----ボウイにはそういうところがあったように思う

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Kate Moss

「70年代を撮った男」と称されることについてどう感じていますか?

昔はイヤだったね。80年代に入ったらカメラをやめてしまったみたいだろう? でも、誰でも何かしらのイメージで知られるようになるわけで、ボウイですらティン・マシーンとして活動していた時期はトレント・レズナーとのツアーで二番手として出ていたからね。人気という意味ではボウイにも陰りが見られた時期があったんだよ。2000年のグラストンベリーに出る前、ボウイと話したことがあった。その頃、ボウイは批評家たちから「昔の曲をやらない」として「大衆から求められているものを理解していない」と叩かれていた。だから彼はグラストンベリーで古い曲をやった。帰って来た彼は、「昔の曲をやったら、途端にまた、みんなが僕を愛してやまない」と言っていた。ボウイのような天才でさえも、過去のイメージと格闘しなければならないときがあったんだ。一度成功したら、その後のキャリアでも過去の成功とうまく付き合っていかなきゃならない。世界が僕をクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジやカレンO、スヌープ・ドッグの写真家として考えるときが来るかといえば、おそらくそんなことは起きない。ずっと、70年代を撮った男として考えられるのは避けられないんだよ。

Read: Meet the man who's been photographing David Bowie for 40 years.

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David Bowie, Iggy Pop, Lou Reed

SHOT! The Psycho-Spiritual Mantra of Rock is released on Friday (21 July).

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Credits
Text Matthew Whitehouse
Images all photo copyright Mick Rock 2017
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.