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ヘアスタイリストのシャニ・クロウが語るブラックカルチャーとシスターフッド

ヘアスタイリストのシャニ・クロウが語るブラックカルチャーとシスターフッドの画像

アーティストのシャニ・クロウは、黒人の美しさをシンボリズムとして髪に編み込み、ブラックカルチャーとシスターフッドを讃えている。

This article was originally published by i-D US for Hair Week, an exploration of how our hairstyles start conversations about identity, culture and the times we live in.

ソランジュ・ノウルズが、テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』で2016年にデビュー・パフォーマンスを披露した際、ステージは文字どおり、輝いた。天使の輪のように編まれたソランジュの黒髪には、数百ものスワロフスキークリスタルがちりばめられていたのだ。

このアイコニックな髪型を手がけたヘアスタイリストの名は、シャニ・クロウ(Shani Crow)。ソランジュは、クロウが黒人女性のブレードを使って作り出したさまざまな髪型をまとめた写真集『Fingerwave Saint』を見て、そのうちのひとつを自らの頭に再現してほしいと頼んだ。「天使の輪の部分を作るのに10時間、そこへクリスタルを埋め込んでいくのに40時間かかりました」と、シャニは説明する。現在、シャニは個人的な知り合いの黒人女性のみを客として、ヘアスタイリストの仕事を受けている。「ソランジュがわたしの作品をまとって「Crane」を歌う姿を見るのは、不思議な体験でした」

シャニとソランジュのコラボレーションは、起こるべくして起こったといえるだろう。どちらも、黒人女性の文化的特徴を用いて黒人女性の美しさを最大限に表現するアーティストであり、また独自のアフロ・フューチャリズムを作品に織り込むアーティストでもあるからだ。シャニの写真とソランジュの音楽は、黒人女性に共通する美しさを強調することで、今日支配的な美的言説を超越する。シャニは写真作品に黒髪のブレードを用いて、自身の地元であるシカゴのサウスサイド地区に根付くライフスタイル、ポップカルチャー、そして伝統的なアフリカン・ブレードのスタイルを讃えた。現在、ニューヨーク州ブルックリンの美術館MoCADAでの個展「BRAIDS」でも展示されている作品「The Breath We All Share」などは、黒人女性に懐かしささえ感じさせる力を持っている。そこにはかつて家で、またはヘアサロンで髪を編んでもらうことを伝統としてきた黒人女性たちの古き良き時代を感じられる。

「黒人女性をより深く理解する機会があって初めて、パラダイムシフトが生まれうるのです」と、シャニは個展の挨拶に書いている。「二重のマイノリティと見られているグループが、そこでは自然と強みを持つことになるでしょう。黒人女性が世代を超えてもっている記憶をモチーフに、わたしは黒人女性が持つ特権の一例を表現しているのです」

黒髪のブレードやインスピレーション源、そしていかに顧客を喜ばせようと情熱を燃やしているかについて、クロウに聞いた。

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Shakere

, Shani Crowe

ヘアスタイリストになったきっかけは?
小さい頃からやっていて、11歳のときにはもう仕事を受けていました。自分の髪は昔から自分でスタイリングしていたのですが、それを見た人たちがブレードやウィーヴ、プレスをやってくれと依頼をくれたんです。

ブレードの編み方は誰から教わったのですか?
初めて挑戦したのは7歳のとき。それまでは叔母と従姉妹がやってもらっていたんですが、ふたりのことを「わたしを奇麗にしてくれるひと」として尊敬し、信頼していました。わたしにとってブレードを編むのは通過儀礼のようなものでした。親戚のかっこいい女性たちは皆、ブレードを編めていましたから。髪を触らせてもらうとき、わたしはその人にわたしを信頼してもらいたいと強く思いました。黒人女性にとって、髪を触らせるほどに信頼してもらうのは光栄なことだからです。大きな髪型をした人形で練習したのを覚えています。ハロウィンで使うウィッグを分解して、髪のトラックを人形のヘアに糊付けし、ブレードを編んだりしました。自分の髪をブレードにしてもらったときの感覚と見た目をよく記憶していたからできたというのも事実でしょうが、やはり試行錯誤、情熱、そして衝動によってすべてを学んだと思います。

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Above All

, Shani Crowe

黒髪ブレードをアートにまで高めようと思ったきっかけは?
わたしはもともとアーティストなのです。絵も描くし、コラージュもするし、実験的な映像も作ります。でも、ブレードがわたしの表現のひとつになるなんて考えていませんでした。学術的にもアート性の面においても、多くのひとはブレードをアートとして考えていないからです。そういった風潮もあって、わたし自身もブレードにそれほどの誇りを持っていませんでした。ブレードを編むというのは、趣味でやるものという感覚が強かったですね。そんなときに、お客様を得て、彼女たちの頭に自分が作り出したデザインを編み上げていくことの喜びを思い出したんです。また、2001年頃に「色を入れたクレージーなブレードを作り上げて、それを写真に収めたい」と考えていたことを思い出したんです。2001年にはテクノロジーもまだ発展しきっておらず、撮影をできたとしても、用いるカメラは1メガピクセルほどのものだったにちがいありません。そこへ助成金を得たことで、そのアイデアを思い出し、プロジェクトとして実現させることに決めました。それが今回、MoCADAで開催している写真展「BRAIDS」になったものです。

黒人女性はブレードをセルフケア、ビューティ、そしてコミュニティ意識の表現として用いていますよね?
ブレードは純粋な愛の表現です。叔母と従姉妹は、わたしをどこへ出しても恥ずかしくないよう身なりを整えてくれたのです。わたしはその精神を、他人の髪を編むときも、アート作品でも大切にしています。わたしは、子どもの頃から知っている友人や家族のヘアスタイリングをやっているわけですが、彼女たちに最高の気分と容姿を提供してあげたい--それが喜びです。ブレードは、わたしの人生においてもカルチャーにおいても、世代を超えて受け継がれてきたものです。

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Dorcas

, Shani Crowe

あなたのブレードは精巧で複雑ですが、どのようにデザインするのでしょうか?
まずはじっくりと髪で何ができるか考えます。宙に指を走らせて、そこに髪があるかのようになぞりながら、何がやりたいかを考えるときもあります。スケッチはせず、わたしの内から生まれてくるコンセプトを感じるんです。「Above All」では、2人の女性の髪でひとつのハートを描こうと思いました。写真に写っているふたりは、実の姉妹なんですよ。

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Cerebral

, Shani Crowe

「Above All」のような作品は、黒髪を通して、美やシスターフッド(女性の結束)をこれまでにない視点から表現していますね。
そう。「Above All」は愛とシスターフッドについての作品です。コンセプトこそ「姉妹間の愛」ですが、ここでの「姉妹」は必ずしも血のつながりを指しているわけではありません。黒人文化、特にわたしが育ったシカゴに根付く黒人中心のコミュニティでは、「わたしはコミュニティの一員」という村意識のようなものがあり、女性が姉妹のように結束するものとして知られています。それに着想を得てヘアスタイルや写真作品を作りました。あらゆる意味で、そうした家族のような関係というものは難しいものです。姉妹というのは喧嘩もしますから。でもそれは、そこに愛があるからこそなんですよね。

作品ではいつもシンボルを織り込むのでしょうか?
シンボリズムは意図的に織り込んでいます。あからさまにシンボリックな作品もあれば、そうでない作品もありますが、どのヘアスタイルにも黒人女性特有の美しさに関して個人的に感じるノスタルジアを織り込んでいます。黒人のスタイルが再び脚光を浴びるようになる以前は、黒人文化に属していない人が、黒人が自然に美しさを打ち出しているのを「これみよがし」なものとして考えるふしがありました。派手なものから装飾をほどこしたもの、そしてシンプルを極めたものまで、黒人は独特の表現をします。ブラックカルチャーと黒人の美を打ち出すうえで髪は中心的役割を担う要素ですから、わたしは髪を触らせてもらうとき、そのひとの最終的な判断に命を預けているような気分になります。その過程にはとても緊張感がある。どんなヘアスタイルにしようが、結局はその人が気に入らなければ意味がないわけですから。

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Fingerwave Saint

, Shani Crowe

ソランジュは『Fingerwave Saint』に着想を得たそうですが、あのヘアスタイルはあなたにとってどんな意味を持っていますか?
世間がブレードに対して持つイメージから、わたしはブレードを高貴な芸術などとは考えていませんでした。だからこそ、わたしは『Fingerwave Saint』でブレードを最高レベルの表現で描きたかったのです。ひとを神聖な存在として表現したかった。モデルの髪をウェーブ状(フィンガーウェーブ)に撫で付けたのは、子どもの頃に美容師のひとたちがジェルでそれを作り上げるのを見て「なんて美しいんだろう」と思った記憶があったから。フィンガーウェーブは黒人文化から一歩外へ出れば"ゲットー"のイメージが定着していたけれど、あの髪型を作り上げ、さらにそれが崩れないようにするには、膨大な時間が費やされている--その事実が知られていなかったんです。

黒人のブレードをアートとして打ち出すことで、どのような主張を試みているのでしょうか?
黒人女性が一般社会の美の基準に惑わされず、自分たちをありのままに愛せるようになること--それがわたしの目標です。あるがままの姿が美しいんだと、知ってもらいたいんです。わたしたちが生きる文化には、わたしたちが見過ごしてしまっているものも多い。それは「これは美しくない」と教え込まれてきたからで、ひとびとが尊重できなくなっている。いま黒人は髪をつかって大胆で奇抜なことをするようになっています。だからわたしは未来に希望を持っています。わたしはただ、黒人の皆にあるがままの姿を誇りに生きてもらいたいんです。

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Suntrust

, Shani Crowe

Credits

Text Antwaun Sargent
Photography Shani Crowe
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.