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小島ファッションマーケティング代表

ファーストリテイリングの「年収テーブル」から見るファッション業界の格差

ファーストリテイリングが「ユニクロ」に対する'ブラック批判'をかわすためかグループの「年収テーブル」を公開して話題になったのは二年前の今頃だったと記憶しているが、横田増生さんの「ユニクロ潜入一年」に15年度の改訂版が載せられていたのを見て改めて驚愕した。最低年収の320万円から最高年収の3億9000万円まで122倍に'貧富差'が拡大していたからだ。

私の知る限り最初に公開された13年度の「年収テーブル」では最低ランクの316.8万円から最高ランクの3億2000万円まで'貧富差'は101倍だったが、二年間に最低ランクは3万2748円(1.0%)しか伸びなかったのに最高ランクは70,000,000円(21.9%)も伸びたため122倍に開いてしまった。これには時給1000円前後で駆使される非正規労働者は含まれていないから、「ユニクロ帝国」の貧富格差は実質200倍近いと見て良いだろう。

ファーストリテイリングが「年収テーブル」を公開したのは『頑張れば報われる』と謳いたかったと推察されるが、『全力で頑張らないと底辺から這い上がれない』とも受け取れる。どこの会社も大差ないのだろうが、そこには個人の才覚や努力のみならず、配属された職場や上司の巡り合わせ、組織内の権力闘争なども絡んで運不運も左右するから、ほとんど人生ゲームの世界になってしまう。そんな'階級闘争'の日々を強いられれば身体や精神を病む者も出て来るだろうし、'ワーク&ライフバランス'の労働観に合わないと見切りを付ける者も少なくないと思われる。

優れた人材をグローバルに集めるべく幹部層には高額な報酬を提示する一方で現場を支える底辺のワーカー層は出来るだけ低報酬に抑えるという米国型(欧米型ではない)の「年収テーブル」は国の際を超えて貧富差を拡大する弊害が指摘される。その典型的な事例が13~14年の米アップル社による欧州ラグジュアリービジネスからの幹部引き抜きだった。

アップル社はサンローランCEOポール・ドヌーブ氏、バーバリーグループCEOアンジェラ・アーレンツ氏、サンローラン・ヨーロッパCEOカトリーヌ・モニエール氏と次々と経営幹部を引き抜き、欧州ラグジュアリービジネスは防衛上、最高幹部の報酬を引き上げざるを得なくなった。当時、米欧エグゼクティブの報酬水準には株式支給を含めてほぼ三倍の差があったと言われるが、一連の移籍劇を経て急速に引き上げられ、現場労働者との格差も相応に開いて米国型の貧富差をもたらした。

ファーストリテイリング社の「年収テーブル」も国内やアジアの業界に影響を及ぼし、幹部人材の報酬水準を引き上げて現場との貧富差を拡大するという'弊害'を招いているかも知れない。報酬格差をひけらかして労働者の競争を煽るという人参型マネジメントを否定する訳ではないが、社会にせよ企業にせよ過度な貧富差はガバナンスを乱して治安の悪化を招く。人参型マネジメントで労働者の競争を煽るより'販物一体'の非効率な店舗運営を解消して収益体質と労働環境を飛躍的に改善する方が急がれるのではないか。

国内ファーストリテイリンググループの最新年収テーブル(同社HPより)

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小島健輔