;

ファッションビジネス専門紙「繊研新聞」公式サイト

実店舗が今、やるべきこと Vol.3 「コミュニティーを作る」

5月下旬、アーバンリサーチが一部の店舗に「声掛け不要バッグ」を置いた。これを持った客は、スタッフに話しかけて欲しくないという意思表示ができる。販売を伸ばすために接客力を重視するセレクトショップが多いなか、異色の試みだ。竹村幸造社長は、背景をこう語る。

【関連記事】実店舗が今、やるべきこと② H&M社長に聞く

見るだけでもいい

「お客さんが求めていることを起点に考えてやったこと。何か買わないと出られそうにない雰囲気の店より、放っておいてくれる店の方が入りやすいでしょ。商品は見たいけど話しかけられたくはないお客さんもいる。そしたら、あの袋があることで店に行かない理由が一個消せるんじゃないかと」。

セレクトショップとして1号店を出したのが20年前。その後ライフスタイル型、SPA(製造小売業)型など様々な業態を開発し、現在までに270店を出した。カジュアル専門店に見切りを付け、セレクトショップに業態転換した当時と同じくらいに今、潮目が変わったと竹村社長は感じている。

同社は00年代初頭にネット販売もスタートした。前期(17年1月期)の売上高625億円に占めるEC比率は23%。今期もECはさらに伸びる見込みだ。「今までは店舗数を増やして売上高を伸ばしてきた。でもこれからはネットで買うのが普通という前提でリアルの在り方を考えないと生き残れない」

リアルでもネットでも、同じモノを同じ価格で売るなら、記憶に残る体験を何らかの形で提供できるブランドや小売りが選ばれると考えた。そこで増やそうとしているのがコミュニティーとして機能する店だ。「お茶でも飲むついでに服も見てもらって、その場で買わなくても、そこで過ごした時間がきっかけとなって、その後、ECで買ってもらえばいい」

20171113sen.jpg

もっと入りやすく

店に人を集めれば、ブランディングができる。声掛け不要バッグを自社の全レーベルが揃う「アーバンリサーチストア」に置いたのは、店が客にとって、もっと足を踏み入れやすい場所になっていけば、自社で売るモノの価値や意味を知ってもらう機会も増えるからだ。

今後は、商品力を上げつつ、吟味した立地のみにリアルの出店は絞る。例えば、商業施設なら駅周辺など景気変動の波が起きても常に人の往来がある場所にはまだチャンスがある。ネットに購買の主力が移っても、人が日常移動に使う場所に近い店ならクリック&コレクトのポイントとして残れる確率は高い。

地方都市でも地元の商店街と組み、観光で人を呼ぶ街を作り、そこに出店するアイデアも構想している。「今やっていることが正解か、答えはまだ分からない」。しかし、竹村社長は「いつの時代も変化に合わせてモデルチェンジできている企業だけが生き残っている」と話す。