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エレベーターが自撮りにうってつけの場所だと思う理由

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エレベーターがセルフィーにうってつけのスポットだと最初に気づいたのはi-Dだってあなたは知ってた?

Georgie Wright

Instagramがあなたの生活の大きな一部になっているなら、エレベーターこそがセルフィーにうってつけの場所だと知ってほしい。キム・カーダシアンもそれを知っている。Helmut Langの広告キャンペーンで話題となった"インスタセレブ"のYoshi(@____226____)も、それを熟知している。しかし、実のところ、世界で誰よりも先にそのことに気づいていたのがi-Dなのだ。1999年、i-Dはエレベーターをテーマとした「エレベーター号」を刊行した。タイトルが示すとおり、エレベーターのなかにいるひとたちを捉えた写真が満載の号となった。i-Dは、エレベーターセルフィー界のレオナルド・ダ・ヴィンチなのだ。

エレベーター"セルフィー"と言うのは語弊があるかもしれない。「エレベーター号」の写真のほとんどは、被写体本人ではなく写真家が撮ったものだからだ。しかし、ひとつの雑誌がすべてエレベーターのなかで撮られた写真で埋まることは、前代未聞のことだった! パリス・ヒルトンがたったひとりでJuicy Couture人気を押し上げた功績を讃えられるなら、i-Dのこの功績も讃えられてしかるべきではないだろうか?

【仮説1:床から天井までの大きな鏡で全身を見ることができる】

「なぜエレベーターセルフィーはよく写るのか?」を考えたときに、まず話を聞いてみたいと私が思ったのがi-Dのシニア・ファッション・エディターであるジュリア・サー=ジャモアだった。オフィスのエレベーターで撮るセルフィーの達人、ジュリア。彼女のInstagramには(i-D編集部は一階にあるにもかかわらず)、エレベーターのなかで鏡に向かって、さまざまな装いのジュリアが並んでいる。彼女はなぜ、寝室やトイレではなくエレベーターを選ぶのだろうか? 「鏡ね。全身を写すのに最適だから!」という答えが返ってきた。完璧な髪型からペディキュアまですべてを一枚の写真に収めたければ、エレベーターこそ最高のスポットなのだ。エレベーターには100%鏡が付いているのだから。

【仮説2:独りきりを実現できる】

フォロワーに、今あなたがパリにいることをアピールするには、エッフェル塔の展望台で写真を撮るのがもっとも効果的だろう。だけれど、そこに辿り着くには、汗ばんだ観光客たち(あなたもそのひとりであるわけだけど)とすし詰め状態になってエレベーターに乗らなければならない。

上品なホテルにでも泊まっていれば、エレベーターであなたの部屋のある3階まで上がるあいだに、ひとりの時間が得られるだろう。それがセルフィーを撮る絶好のタイミングだ。誰かに怪訝な目でみられたり、笑われる心配もなく、写真を89枚ほど撮ることができる。会社にいるときであれば、階下に届いた荷物や郵便を取りに行く体でカートなどを同乗させているとなお良し。途中の階で誰かが乗ってこようとしても、"物理的に同乗が難しい"ということにできるからだ。これで、思う存分エレベーターセルフィーを楽しむことができる。

【仮説3:「ワイヤーが切れてエレベーターが落ちる可能性」を考えないようにするため】

まだ小さかった頃、わたしは誰かからこんな忠告を受けた。「乗っているエレベーターのワイヤーが切れ急降下したら、それが地面に触れる直前にジャンプしろ。そうすれば、落下の衝撃を少し和らげることができる」。人生観を変えてしまうほどの、強烈にしてリアルなイメージだったが、今はそれがバカげたことだと分かる。なぜなら、1)ガラス製エレベーターに乗っているのでもないかぎり、エレベーターがいつ落ちるのかをどうやって知れるだろう。さらに、2)落下している最中に誰がそんな理性的思考を保てるというのか? そして、3)物理学者ではないからよくわからないけど、自分の乗ったエレベーターが148階から落下したら人間の重さがある生き物はどっちにしたって死ぬんでしょ?

多感な時期にそんな忠告を聞いてしまったわたしは、それからというものエレベーターに乗るたびに、豆粒ほどのサイズしかないこの脳みそでオリンピック選手並みのジャンプをする心の準備をするようになった。そんな不安からわたしを救ってくれたのが......携帯のカメラだった。これまでに、おそらく2913回ほど若さにきらめく自分を写真という永遠のうちに収め続けることで「迫り来る死」という不安から目を背けられるようになった。

カイリー・ジェンナーとケンダル・ジェンナー姉妹がSnapchatで繰り広げた「エレベーターの恐怖体験」シリーズを見てほしい。ニューヨークでエレベーターのなかに閉じ込められたふたりは、その恐怖をSnapchatで発信し続けた----長い時間、よほどの恐怖を感じたのだろう。カイリーはスマホを取り出して極上のセルフィーを撮り始めた。その心理は......この記事をここまで読んでいればわかるだろう。

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【仮説4:工業的なシックの追求】

蛍光灯の光、むき出しの無骨な鉄鋼、ミニマムなデザイン----エレベーターという空間は、デムナ・ヴァザリアのディレクションのもと生まれ変わったBALENCIAGAの旗艦店を彷彿とさせるものがあるでしょう? 彼は、今や大人気のメゾンの旗艦店をシルバーを基調としたミニマルな空間に生まれ変わらせた。未来的な宇宙船とインダストリアルなロボット開発研究室、そしてエレベーターを足して3で割ったような空間。ヴァザリアは、もちろんVetementsのデザイナーだ。気まぐれであの空間を作ったわけではない。

しかし、なぜ彼はあのようなストアデザインにしたのだろう?本人にその真意を確認することはできなかった。実際のところ、接触も試みていない。接触を図ったところで、現在のファッション界でもっとも人気があり多忙を極めているであろう彼が、わたしの「なぜショップを巨大エレベーターのようにデザインしたのか」などという質問に答えてくれるわけがないからだ。巨大エレベーターのような空間はなにしろモダンで、クールで、洋服が際立つから----理由は、おそらくそんなところだろう。

わたしたちの多くにとって、BALENCIAGA旗艦店のドアマットに触れるなど恐れ多いこと。しかし、それこそが実際のエレベーターの素晴らしいところだ。現実のエレベーターはひとを選ばない。

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