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ファッションマガジン

ファッション写真のポージングに革命を

ファッション写真のポージングに革命をの画像

Photography Reto Schmid

Bojana Kozarevic

『Posturing: Photographing the Body in Fashion(ポーズをとる:ファッション写真の中の身体)』は、お決まりのポーズと性的な意味づけから解放され、ユーモアにあふれたファッション写真の展覧会だ。業界が打ち出すイメージのあり方を変えていく、新世代の写真家をフィーチャーしている。

『Posturing』は新星ショーナ・マーシャル(Shogna Marshall)とホリー・ヘイ(Holly Hay)が共同でキュレーションする新しい展示。ファッション・ヴィジュアルの従来的な解釈を打ち崩すべく、意表をつくやり方で人間の体を解放する新しい世代による作品を、脱構築的に見せている。

写真の中にある動きと新しく見いだされた体の自由を出発点とする『Posturing』は、ユーモアいっぱいで、かつ開かれたセクシャリティとあらわな官能性に満ちている。ファッション・ヴィジュアルの作り手たちの中でも、特にユニークな新しい声を賞賛する展示だ。

モデルのポーズによって、身につけたものを強く印象づけることも、誤解を生じさせることもあり得るし、服に視線を集中させることも、反らせることもある。体は私たちが思考や感情を伝え、自分らしさを構築するのに最も有効な道具の一つだ。けれど、長い間ファッション写真において、体は服にコンセプトを与えるだけの道具として使われてきた。この展示では、若い作り手たちが集結して、体そのものが意味を生み出すポテンシャルを明らかにする方法を追求している。彼女ら/彼らが構えるレンズの前のモデルの身体は、より人間らしく繊細で、時にシュールとも思える形で写真に収まっている。

タイロン・ルボン(Tyrone Lebon)やゾー・ガートナー(Zoe Ghertner)、ハンナ・ムーン(Hanna Moon)、ブリアナ・カポッツィ(Brianna Capozzi)、ジョイス・NG(Joyce NG)、レト・シュミット(Reto Schmidt)、シャーロット・ウェールズ(Charlotte Wales)らの作品が集められたこの展示には、ステレオタイプ化したファッションモデルのポーズ(体を斜めに傾けるのはどう?)に異議を唱える写真ばかりが並ぶ。ハンナ・ムーン(『i-D』のために撮影したハリ・ネフ〈Hari Nef〉の写真が展示されている)が、自分の写真がそうなったいきさつを教えてくれた。「自然なプロセスでした。撮影中に、もっと個性を引き出そうとしてみた結果というか。最近はあまりモデルに指示を出さないんです。代わりにモデルたちが自分らしくふるまい、表現できる環境や雰囲気を作ります」

ファッション写真を通して、モデルと衣装、写真家とモデル、写真とそれを観る者との間に、それぞれ親密なやり取りが生じる。『Posturing』では、実際のファッション撮影の過程を展示のレイアウトに反映させることで、この関係性をより際立たせている。マーシャルとヘイは、展示をプロセスごとに5つのセクションに分けた。キャスティング、スタイリング、ロケーション、小道具、アート・ディレクション。ヴィジュアル作りの核となる、複雑に絡み合うプロセスを示そうという試みである。「チーム・ワークがドリーム・ワークを生む」i-D創始者のテリー・ジョーンズもかつてそう言っていた。

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Photography Blommers and Schumm

----ファッション写真の中でのポージングに注目が集まるようになった時期というのが、特にあったのでしょうか。

ショーナ:ヴィヴィアン・サッセンやマーク・ボスウィックなどの写真家は、おもしろい身ぶりやポーズのアイディアを使います。こういった写真家たちがファッション関連の仕事で撮った作品を見ると、体がまとった服の見方を通して疑問が生じてくるんです。同時代のファッション写真では、肉体を性的なイメージでとらえることから遠ざかろうとする動きが起きつつあると3年くらい前に気づきました。何人かの写真家が、モデルの体をこれまでにないような形に置くことで、身につけた衣装のイメージを覆していました。

ホリー:それは芸術作品では歴史上ずっと続けられてきた試みです。けれどファッションの世界で、身体へのそのようなアプローチが美学として広まったのは、最近のことのように思います。こういう変化はいつも、先行するものへの反動として噴出してきます。このムーブメントについて言えば、性的な意味を付与された肉体や、かなり幻想的に作り込まれた背景などをしばらく目にし続けた結果、生じてきたものです。

----それは最近のフェミニズムを巡る議論と関係があるのでしょうか。

ホリー:写真家によっては、その影響もきっとあるでしょう。とはいえ、これらの写真はとてもポジティブで、時にかなり笑えるものでもあると思っています。この展示が、今現在のファッション写真のすばらしさを伝えるものと考えたいのです。写真家たちは個性的なモデルたちを、イメージを作る上での対等な協力者と見なしています。

ショーナ:それがこれらの写真の中心的なテーマというわけではありませんが、ホリーが言ったように、写真家たちはコラボレーターである被写体と一緒に作品を作り上げます。展示の中の〈キャスティング〉のセクションは、このことに関連しています。参加した写真家は17名ですが、うち8人が女性です。半分にも満たないとはえ、過去にはかなり男性支配的な傾向があった業界としては、一つの変化といえると思います。

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Photography Brianna Capozzi

----よいファッション写真とは、どんなものでしょうか。

ホリー:映っている服について、新しく、より面白い角度から考えさせてくれる写真。

ショーナ:私がこの展示で扱ったような写真がとても好きなのは、そこに物語を感じさせるからです。どの写真からもたくさんのストーリーが引き出せるし、身につけている服が、登場する人物像の構築に大きく影響するような見せ方がされています。ファッションから広がる物語の可能性にワクワクします。

----キャスティング、スタイリング、ロケーション、小道具、アート・ディレクション、それぞれの重要さはどんな部分にあるのでしょうか。

ホリー:どのプロセスが抜けても、他の部分は成り立ちません。この企画のために話をしたどの写真家も、ファッション・ヴィジュアルを作る上で一番の喜びは共同作業だと言っていました。

ショーナ:展示する写真をグループ分けする指針となるようなテーマの設定について、かなり話し合いを重ねました。ポーズというのが全体を貫くテーマですが、作品ができるまでの過程を示せるようなレイヤーをどうしても重ねたかったのです。それぞれのセクションの中は、さらに進行リストに挙げられた各部門に枝分かれしています。これらの写真では常にどこかに不具合があることに注目してもらいたいと思いました。衣装の着方が正しくなかったり、服が全く身につけられていなかったり。異なるたくさんの要素の調和によって、最終的なイメージが作り上げられます。どの部分の主張が強すぎても成り立ちません。

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Photography Lena C Emery

----現代のファッション写真に見られる典型的なポーズとは、どんなものでしょうか? 将来的には、モデルによるポージングは新しい領域に入っていくと思いますか?

ショーナ:展示された写真を見ていてとても興味深いのは、従来的な意味でのファッションモデルではない女性が数多く被写体になっていることです。マートン・パーラキ(Marton Perlaki)が撮る母親や友人。『1 Granary』誌に掲載されたジョイス・NG撮影の写真で、スカートの中にもぐり込むふたりの子ども。チャーリー・エングマンの作品に写っているのはヨガ教師でミュージシャン、ときにモデルでもあるシビル・バック(Sibyl Buck)です。レイアウトのセクションでコラージュされたタイロン・ルボンの写真の被写体はジェス・メイブリー(Jess Maybury)。モデルという存在の将来や、ポーズというものが今後どんな進化を遂げていくのかはわかりません。けれど確かなのは、今回展示した一群の作品では従来多かった「洋服かけ」的なモデルの使い方には誰も興味がないということ。それより、モデルのキャラクターを見せることを好んでいます。インタビューして話を聞いてみると、モデルと仕事をするときにはこれまで覚えたポーズのことはすべて忘れてほしい、と伝えるという写真家も多くいました。

----展示する写真家を選んだ決め手はなんでしたか?

ホリー:写真の中で身体をどう扱うかは、その場限りのことではありません。自分の作品で身体へのアプローチに熱心に取り組み、確固とした考えのある写真家たちを紹介したいと考えました。

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Photography Marton Perlaki

----ファッションについての展示をすることは、なぜ重要なのでしょうか。

ホリー:プリントされ、額に入ったファッション写真を実際に見ることで、観客はその中にある物語を考える時間を持ちます。それが重要なのです。雑誌のページ上にあるファッション・ストーリーの場合、説明や文脈がなければさっとめくられてしまうかもしれません。その作品が作られるために費やされた様々な要素は、気づかれないままに。私たちは、ファッション写真をすみずみまで味わえるような機会をたくさんの人に提供したいと思っています。

ショーナ:個人的には、ファッションについての展示をするなかで、作品になるまでのプロセスを見せることにとても興味を持っています。

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Photography Pascal Gambarte