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体は蒸発し、脳はガラス化?西暦79年のヴェスヴィオ火山大噴火の新事実

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体は蒸発し、脳はガラス化?西暦79年のヴェスヴィオ火山大噴火の新事実

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VICE Japan

西暦79年、イタリア・カンパニア州のヴェスヴィオ火山の大噴火は、ポンペイやヘルクラネウムなど、付近の古代都市の住民に壊滅的な被害を与え、歴史上最も恐ろしい惨劇のひとつとして語り継がれてきた。

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この度、科学者はこの噴火にまつわる恐ろしい新事実を発見した。最新の研究によれば、ヴェスヴィオ火山はいつか再び破滅的な噴火を起こす可能性があり、今もこの強力な火山の避難対象地域に暮らす数百万人に影響を及ぼしかねないという。

この研究から、最初にヘルクラネウムの町を襲った555°Cを超える高温ガスが数え切れないほどの犠牲者を蒸発させた後、その一帯が火山灰の分厚い層に覆われたことを示す、新たな証拠が発見された。火砕物密度流(pyroclastic density current: PDC)として知られるこの高温ガスの発生は、熱の衝撃でガラス質になった脳の一部など、背筋も凍るようなヘルクラネウムの出土品の解明に役立つかもしれない。

ローマ・トレ大学の地質学者アレッサンドラ・ペンサ(Alessandra Pensa)率いる研究者チームは、ヘルクラネウム遺跡の堆積物中の木炭を調査することで、災害の新たなタイムラインを復元した。4月に学術誌『Scientific Reports』に掲載された論文によれば、この結果から、史上初めて「人びとを死亡させ、インフラに被害を与えた最初の火山灰雲による非常に高温の衝撃」の直接的な評価が可能になったという。 

「西暦79年の噴火は、世界で最も研究が進んでいる噴火のひとつであるにもかかわらず、正確なタイミングや、ポンペイとヘルクラネウムの犠牲者の死因はいまだに議論の的になっており、火山学的、考古学的、法人類学的な示唆に富んでいる」とペンサと彼女のチームは論文で述べる。

「木炭は超高温に達した複数の瞬間を記録することが可能な唯一の手がかりであり、そこから西暦79年の噴火による実際の熱の影響が初めて明らかになった」とチームは述べる。「古代と近年の火山噴火で発生した希釈された火砕物密度流がもたらした致命的な被害は、このような危険がヴェスヴィオ火山をはじめ世界中で詳しく検討するに値することを示している。特に、分離した高温の火山灰雲の出現に伴う危険は過小評価されているが、火山灰雲は短命ではあるものの、建物に甚大な熱ダメージを与え、人びとを死に追いやる可能性がある」

ポンペイは町全体と住民が火山灰に覆われたことで、2000年近く不気味なほど良好な保存状態が保たれたという点で、噴火の被害を受けたなかで最も有名な遺跡だ。しかし、付近の海辺の町ヘルクラネウムを調査している研究者たちは、噴火の影響によってガラス化したと思われる人間の脳の一部など、数々の奇妙な遺物を発見してきた。これらの手がかりは、ヘルクラネウムの住民がポンペイ以上に悲惨な運命に苦しんだであろうことを示唆している。

「頭蓋骨の破裂や炭化、脳の蒸発、亀裂が入り炭化した骨、亀裂が入った歯、四肢の収縮、血液中のヘムタンパク質の熱劣化など、犠牲者が受けた熱によるダメージは、かつて推計された約500℃よりも高い、超高温の熱が発生していたことを示唆している」とペンサとチームは説明する。

「多くの遺体が〈ボクサーの姿勢〉として知られる典型的な姿勢で発見されたポンペイとは異なり、ヘルクラネウムでこのような姿勢の遺体が発見されなかった事実は、軟組織が急速に蒸発したことを証明している。ボクサーの姿勢は、高熱によって引き起こされる筋肉の脱水と収縮に起因する」とチームは続ける。「しかし、これまでにヘルクラネウムの初期の出来事(火砕流)でそれほどの高温が直接計測されたことは一度もなかった」

堆積物中の木炭を分析することで、チームはヘルクラネウムを襲った希釈された火砕物密度流の温度の計測に成功した。噴火直後の火山ガスの温度は最低でも550°Cで、その後地表と入り組んだ建物、そして共同体を呑み込んだ火山灰雲よりも100℃以上高い。この結果は、ガラス化した脳を含め、ヘルクラネウムでの恐ろしい発見を解明する手がかりとなった。

「地表に薄い火山灰の層だけを残し、その後それよりも低音だが分厚い火砕流堆積物をもたらした、550°Cを超える初期の希釈された火砕物密度流によって、近年コレギウム・アウグスタの犠牲者の頭蓋骨から発見された、ガラス化した脳の形成と保存状態について理解することが可能になった」

「高温環境での新鮮な脳組織のガラス化は、2つの条件が満たされた場合のみ可能になる。それは (1) 組織が完全に蒸発しないように、熱の持続時間が短い場合。そして (2)ガラス化は急速な冷却を要するため、希釈された火砕物密度流が消えた後、遺体が高温の堆積物に完全に埋もれない場合だ」とチームは述べる。「その結果、(最初の火砕物密度流が)一時的なもので、非常に高温で、希釈されていたこと、さらに次(の火砕物密度流)が徐々に侵入し町全体を覆う前に、遺体の一部が空気に晒されたまま、急速に冷却するための十分なインターバルが確保されたということがわかった」

ヴェスヴィオ火山付近で暮らしていた古代ローマの人びとを灰に変えた高温のガスは想像するだに恐ろしいが、研究者チームは同時に、現代における火砕物密度流の危険の〈過小評価〉にも警鐘を鳴らす。

今回の研究は、1902年にマルティニークのサンピエール島を襲い、数万人の犠牲者を出した火砕サージなど、近年の噴火でも同様に極めて甚大な被害が観測されたことを指摘している。チームは今回2000年前の木炭から発見された証拠を踏まえ、ナポリなどの大都市を含むヴェスヴィオ火山を取り巻くコミュニティは火砕物密度流の被害の再来に備えるべきかもしれない、と不吉な口調で警告する。

「本研究の結果はヴェスヴィオ火山をはじめ、世界中の火山のリスクを軽減する、先例のないヒントを提示している」とペンサとチームは述べる。「未来の噴火に備えて70万人の避難が計画されているヴェスヴィオ火山の危険区域は、地質記録から算出した(火砕流の)侵入の可能性に基づいて設定された。これが達成するべき目標であることは確かだが、不安定な火山活動が噴火前に十分な避難の猶予を与えてくれるかは不明だ」

「これらの前提を踏まえ、危険区域内の建物は、噴火前に全員を避難させる必要性のいかんにかかわらず、全員避難が時間内に達成されなかった場合に備え、人びとを火山灰雲の熱から守ることができるように強化するべきだ」とチームは結論づける。「そうすれば事前に避難できなかった人びとが生き延びて救助を待つか、次(の火砕流)が町に押し寄せる前に避難できるかもしれない」

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