新顔「アメカジ」系、相次いで日本デビュー
2012年01月29日 22:10 JSTアメリカンカジュアルの有力ブランドが相次いで日本に上陸する。日本未出店のアメカジ系では最後の大物といわれてきた「American Eagle Outfitters(アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ)」が4月、日本デビューを果たす。「GAP(ギャップ)」グループの低価格ブランド「OLD NAVY(オールド・ネイビー)」も日本進出が決まっていて、お手頃プライスの新顔アメカジが人気を集めそうだ。先行ブランドもラインを広げたり、大型店を構えたりと、取り組みを強化していて、アメカジが再び盛り上がる気配を見せている。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)

東京・原宿の一等地に、アメカジの大型ブランド「American Eagle Outfitters」の日本第1号店が、4月18日にオープンする。新商業施設「東急プラザ 表参道原宿」に入る。アメカジのメガブランド「GAP」が構えていていた旗艦店の跡地に、日本初上陸のアメカジが出現するという、象徴的なオープンとなる。原宿開店の翌4月19日には、東京臨海副都心の複合施設「ダイバーシティ東京(DiverCity Tokyo)」にオープンし、東池袋への出店も決まっている。日本にはウィメンズラインの「Aerie(エアリー)」も投入する。
「American Eagle Outfitters」は北米で1000店舗以上を展開する、米国カジュアルウエア市場で第3位のブランド。ビジネス規模では「GAP」「Abercrombie&Fitch(アバクロンビー&フィッチ)」に次ぎ、日本へは上位2ブランドに遅れて、満を持しての登場となる。ヴィンテージ加工を施した、古着風のテイストにファンが多い。ヴィンテージ調の風合いは「Abercrombie&Fitch」も持ち味としているが、「American Eagle Outfitters」のほうが価格がぐっとこなれている。普段使いしやすい点で今の消費者の気分になじむ。
「GAP」傘下の低価格ブランド「OLD NAVY」は2012年末にも日本に進出する計画だ。「OLD NAVY」が北米以外へ出店するのは、日本が初めてとなる。「OLD NAVY」の価格は米国では「GAP」の半額程度の品が多い。商品の企画から生産、販売まで一貫して手掛ける製造小売業(SPA)の草分けとされる「GAP」は、原宿の神宮前交差点にあった旗艦店を駅前に移転し、2011年3月には銀座に日本最大のショップ「Gapフラッグシップ銀座」をオープン。1995年に日本第1号店を開いた銀座に再び旗艦店を構え、さらなるブランド浸透を目指す構えだ。
「東急プラザ 表参道原宿」の中には、プレッピーテイストを得意とする「TOMMY HILFIGER(トミー ヒルフィガー)」の世界最大級となるフラッグシップストアも入る。グローバル旗艦店はこれがアジア初。トミー ヒルフィガー ジャパンは2011年秋から、これまでよりも一周り小さい日本サイズを導入。日本でのファン層拡大に本腰を入れ始めた。
老舗ブランドが相次いで新ラインを投入する動きも続く。従来の「アメリカントラッド」と「アメカジ」という線引きを無意味にするかのような、キャンパススタイルやストリート感覚を取り込んだ新テイストが相次いで打ち出されている。アメカジテイストをベースにした、「Ralph Lauren(ラルフ ローレン)」の20代男女向け新レーベル「DENIM & SUPPLY Ralph Lauren(デニム & サプライ ラルフ ローレン)」は2011年11月、渋谷に店舗を出した。プレッピースタイルを提案する「RUGBY(ラグビー)」は原宿の日本第1号店がオープンから1年を迎え、名古屋市に2012年2月14日、2号店がオープンする予定だ。「McGREGOR(マックレガー)」から生まれた「Rags McGREGOR(ラグス マックレガー)」は2011年9月、原宿に初のオンリーショップをオープンした。
有力なアメカジ系ブランドはデザインや店舗展開の面で発信力を強めている。例えば、ファッション業界人の間で、ストア構成を考える上で必見とされるブランドがニューヨーク発の「J.CREW(ジェイクルー)」。ミシェル・オバマ米大統領夫人の愛用ブランドとしても知られる。マンハッタンのダウンタウンにあるメンズオンリーのストア「The Liquor Store(ザ・リカーストア)」「The Men's Shop(ザ・メンズ・ショップ)」は、独自の世界観をみなぎらせたインテリアや陳列スタイルで話題を呼んでいる。日本には店舗がない状態がしばらく続いているが、2011年から日本向けのEコマースサービスが始まり、日本再上陸への期待も高まってきた。
アメカジ感を持つデザイナーズブランドへの関心も高まってきた。NYコレクションに参加している「BAND OF OUTSIDERS(バンド オブ アウトサイダーズ)」はサザビーリーグとの間で日本国内での総代理店契約を結んだ。「BAND OF OUTSIDERS」はポロシャツライン「THIS IS NOT A POLO SHIRT.」を持つことからも分かるように、トラッドとカジュアルの境界線をまたぐような独自スタイルを提案し続けている。同じくNYコレクション参加ブランドで、くつろいだ空気を持つ「rag & bone(ラグ & ボーン)」は2010年、日本第1号店をオープンし、ファンの裾野を広げている。

「GAP」系で高価格ブランドと位置付けられる「BANANA REPUBLIC(バナナ・リパブリック)」は2005年、日本に進出した。同様に、アメカジではラグジュアリーなイメージをまとわせている「Abercrombie & Fitch」は2009年、日本第1号店を構え、リッチムードのアメカジがもてはやされた。マスクと体型重視で選ばれたストア・モデルが迎える接客や、フレグランスの香りにショップ全体を包む演出は、「カジュアル」というイメージを遠ざけようとしたと見える。両ブランドとも日本初の店舗を銀座に開いた点は象徴的と言える。
しかし、2008年のリーマン・ショック以降、消費者の価格意識は強まり、アメカジにも値ごろ感がこれまで以上に求められる状況になっている。「American Eagle Outfitters」と「OLD NAVY」の日本進出はその意味でふさわしいタイミングと言えるだろう。米国ではショッピングモールに数多く出店している「EXPRESS(エクスプレス)」「Wet Seal(ウェットシール)」「Charlotte Russe(シャーロット・ルッセ)」なども日本未上陸のブランドであり、低価格に強みを持つことから、「American Eagle Outfitters」や「OLD NAVY」の日本での出足次第では、日本進出の可能性がありそうだ。
日本に正規のリアル店舗が存在しないアメカジ系ブランドはまだ多い。例えば、「アバクロンビー&フィッチ」系の「Hollister Co.(ホリスター)」や、西海岸発のユースブランド「Aeropostale(エアロポステール)」がそうだ。「UrbanOutfitters(アーバンアウトフィッターズ)」と、そのお姉さん系の「Anthropologie(アンソロポロジー)」、妹分の「Free People(フリーピープル)」の3ブランドも本格的な日本進出が待たれる。米国の有力カジュアルブランドにとって、久々の大型ブランド上陸となる「American Eagle Outfitters」と「OLD NAVY」の日本デビューは、日本がファッション市場として引き続き、魅力的であるのかどうかを知る試金石となるだろう。
(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
