【コラム】ファッションに新風を吹き込むデュオデザイナーたち
2012年01月15日 22:30 JSTデュオ(2人組)デザイナーの台頭がめざましい。男女、異国籍、同窓生など、それぞれの間柄は様々だが、いずれも互いの感性をぶつけ合って、ブランドのクリエーションを深めている点は共通している。異なる視点からデザインの可能性を探るまなざしは、励ましや衝突の末に生まれた作品に、人間的な深みや新味をもたらしているようだ。

気鋭の8ブランドが参加したファッションイベント「VERSUS TOKYO(ヴァーサス トーキョー)」で、半分近い3ブランドを占めたのが、2人のデザイナーを擁するデュオブランドだった。木村多津也氏と吉田早苗氏の「DISCOVERED(ディスカバード)」、大道みゆき氏と喜多あゆみ氏の「plumpynuts(プランピーナッツ) 」、横山大介氏と荒木克記氏の「SASQUATCHfabrix.(サスクワァッチファブリックス)」の3ブランドだ。

東京コレクションに参加しているメンズブランド「DISCOVERED」は、[Opposition mix up]のコンセプトを掲げ、相反するテイストを融合させる、男女コンビが生み出すジャンルレスのデザインが持ち味。その独創性を評価した、「VERSUS TOKYO」のプロデューサー、吉井雄一氏が抜擢を決めた。ウィメンズブランド「plumpynuts」の2人は元「foundation addict(ファンデーション アディクト)」のデザイナーコンビだけに、抜群の息の合い具合。「SASQUATCHfabrix.」を手がける2人は同じ長岡造形大学で建築とテキスタイルという別々の分野を学んだ。共通のアーティスト名「Wonder Worker Guerrilla Band」としてアートワーク制作も手掛けている。

性別や生い立ちの異なるデュオならではの視野の広さ、経験値の高さなどを評価する動きが広がっている。「KENZO(ケンゾー)」のクリエイティブディレクターに迎えられたHumberto Leon(ウンベルト・リオン)氏とCarol Lim(キャロル・リム)氏の2人はセレクトショップ「OPENING CEREMONY(オープニング セレモニー)」を創設した男女ペア。ショップを通してリアルトレンドを深く知る2人の感覚はVLMH傘下のグローバルブランドに新たな息吹をもたらしつつある。

センスや生い立ち、資質などが異なれば、自ずから作品に別の方向性が加わる。「MIKIOSAKABE(ミキオサカベ)」はベルギーの名門ファッション校「アントワープ王立芸術アカデミー」を首席で卒業した坂部三樹郎氏が、台湾出身のSHUEH JEN-FANG(シュエ ジェンファン)氏と共同で立ち上げたブランド。日本人とアジア人のペアという例には、NYを拠点とする「united bamboo(ユナイテッドバンブー)」もある。日本出身の青木美穂氏と、ベトナム出身のThuy Pham(テュイ・ファム)氏のデュオが手掛ける穏やかな作風は幅広い支持を受けている。

身近な家族でパートナーシップを組むケースも珍しくない。NYコレクションで最も芸術的な作風とされ、「CHANEL(シャネル)」のカール・ラガーフェルド氏の後継者候補にすら名前の挙がる2人が手掛けるブランドが「Rodarte(ロダルテ)」。デザイナーのKate & Laura Mulleavy(ケイト&ローラ・ミュラヴィー)の両氏は実の姉妹だ。兄弟デュオの成功例には「DSQUARED2(ディースクエアード)」が挙げられる。

日本の気鋭ブランドにもデュオデザイナーが目立つ。「matohu(まとふ)」は堀畑裕之氏と関口真希子氏の男女デュオが性別の常識にとらわれないクリエーションを生み出してきた。「THEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)」は武内昭氏と中西妙佳氏の両デザイナーが展開している。「mintdesigns(ミントデザインズ)」の勝井北斗氏と八木奈央氏は世界有数の名門ファッションスクール「セントラル・セント・マーチンズ」の同窓生だった。

日本で旗艦店を開いた「rag & bone(ラグ & ボーン)」や、リッチ層の支持が厚い「Proenza Schouler(プロエンザスクーラー)」などのデュオブランドも安定したクリエーションを続けている。支え合い、刺激し合えるパートナーシップの強みは、20年を超えるキャリアの「Dolce&Gabbana(ドルチェ& ガッバーナ)」や、「VIKTOR&ROLF(ヴィクターアンドロルフ)」「ELEY KISHIMOTO(イーリー キシモト)」などが証明している。

日本ファッション界屈指の目利きである吉井氏は、「VERSUS TOKYO」に招いたメンズブランド「PHENOMENON(フェノメノン) 」のデザイナー、TAKESHI OSUMI(オオスミタケシ)氏と組んで、新メンズブランド「MR.GENTLEMAN(ミスター・ジェントルマン)」を立ち上げた。圧倒的なクリエーションで「信者」を増やし続けるクリエイターと、コンセプトショップ「THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリー・フィックス)」が新たなファッションの聖地となりつつある吉井氏のパートナーシップは新スタイルのデュオとなりそうだ。
宿命的に孤独なデザイナーという仕事に、創造の苦しみを分かち合うパートナーが存在することは、独善的ではない親しみやすさ、着想の奥行き、テイストの広がりなどの面でプラスに働くことがあり得る。安易に妥協するのではなく、異なる視点を重ね合って生み出す、デュオゆえの創造プロセスが、ワードローブに迎えやすいアイテムの誕生に一役買っているのだとしたら、それは歓迎すべきことのように思える。
(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
ファッション・デザイナーの創作スケッチブック (P‐Vine BOOKs)
カール・ラガーフェルドからティム・ハミルトンまで、世界を代表する50ブランドのデザイナーたちによる創作プロセスを公開
