「エシカルファッション」「フェアトレード」って何?

 このところファッションシーンをにぎわす言葉に「エコファッション」や「エシカルファッション」がある。どちらも良識あるおしゃれだが、違いが分かりにくい。さらに似た用語に「ロハス」や「フェアトレード」などもある。消費者を戸惑わせがちなこれらの言葉を簡単に整理してみよう。


Vivienne Westwoodのエシカルバッグ


 「エコファッション」は地球環境に配慮した装いやアイテムという点で分かりやすい。環境への負荷が比較的軽いオーガニックコットンが象徴的な素材だ。レザーをなめすに当たって、植物性の薬剤を使うのもエコな取り組みだし、靴の外箱をなくして袋に入れて渡すのも、地球に優しい売り方と言える。

 レジ袋を使わず、エコバッグで買い物をするのは、もはや広く浸透したライフスタイルだ。たくさんのブランドからエコバッグがシンボリックなエコアイテムとして売り出され、一時は行列ができる騒ぎまで起きた。


 一方、「エシカルファッション」はエコよりも遅れて日本に持ち込まれ、まだエコほどメジャーにはなっていない。もっとも、2010年ごろからは新たなムーブメントとして注目度が上がり、浸透する兆しが見え始めている。stella_kids_s.jpg

 英語「エシカル(ethical)」は「道徳、倫理上の」という意味。その言葉の通り、良識にかなって生産、流通されているファッションを指す。バッグを買えば、アフリカの子供たちに給食を贈る資金になるという「FEED BAG」は分かりやすい例だろう。動物素材を使わないポリシーを貫く「Stella McCartney(ステラ マッカートニー)」も有名な例だ。

 エシカルなファッションアイテムは、商品を購入する消費者の側にも、ショッピングを通した良識の表現者という立場を与える。だから、消費に意義を求める人たちからは、望ましい消費スタイルと認められつつある。「いい事をした」という納得感まで一緒に得られる点で、消費者の満足度が高く、有力ブランドもその効果に着目し始めた。

 「道徳、倫理上の」という定義は広いので、エコもその対象に含まれると見ていい。ただ、一般的な「エシカルファッション」の定義は、環境だけにとどまらず、望ましい労働環境や貧困地域支援、産業振興なども視野に入る。広く社会規範に配慮した生産・流通を重んじる取り組みと言える。


vivienne_westwood_africa_bag_s.jpg 例えば、デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)氏はエシカルなプロジェクトに熱心なことで知られている。アフリカの社会的に取り残された女性たちのコミュニティーに、ファッションアイテム作りの仕事を提供する支援プロジェクトと連携してバッグを発売したのも、エシカルな取り組みの1つ。アフリカで極貧状況にある女性たちがハンドメイドで制作するこのバッグは彼女たちに仕事と収入をもたらした。

 オーガニック原料やリサイクル素材を使用してバッグを発売したこともある。天然ゴムを素材に選んだこのバッグでは、天然ゴムの売上を通して、南アメリカの先住民が安定した収入を得られるという形で、社会貢献の仕組みが取り入れられていた。

 しかし、こういった取り組みはいわゆるチャリティーとイコールではない。募金で集めた現金を提供するのではなく、仕事を通じて、自立を側面からサポートするアプローチと言える。売上の一部を有意義な寄付に回すという寄付金込みの商品もエシカルに当たると見えるが、最近はウエストウッド氏のように生産や流通のプロセスに支援対象を巻き込む形で、効果や意義をさらに高めるアプローチが広がりつつある。


 チャリティーは乳がん対策の啓発運動「ピンクリボン」キャンペーンや、エイズ研究への寄付、被災地域の支援など、様々な事例がある。ハイチ大地震の被災者を支援するチャリティーコレクションには、提案者のスーパーモデル、ナオミ・キャンベルをはじめ、人気モデルや有名デザイナーが参加した。lfh_waste_collection_s.jpg


 ロハス(LOHAS)は「Lifestyles Of Health And Sustainability」の略で、健康や環境問題に高い意識を持つ人たちのライフスタイルを指す。最後の「S」に当たる言葉「Sustainability(サスティナビリティー)」は「持続可能性」という意味。土に還る素材を優先的に使い、地球を痛めつけない生産を意識することによって、長く続けられる仕組みを目指す。例えば、スウェーデン発のH&Mはサスティナブルなファッションを積極的に勧めていて、昨年のランバンとのコラボで余った布を使用した「WASTE(ゴミ) Collection」もその姿勢を物語る。


「H&M」WASTE Collection


 「フェアトレード(Fair Trade)」はエシカルな貿易と言える。発展途上国の生産者が経済的に自立できるよう、貿易を通して支援する取り組みの事で、公正な価格での取引を目指す。要するに、誠実でまっとうな貿易の事だ。産地の人々や自然を食い物にするようなあくどい取引の反対と言える。フェアトレードの商品を購入することは、発展途上国で暮らす人たちの働く機会や、安定した収入につながるので、消費者の側はショッピングを通じて遠い国・地域に社会貢献できる満足感が得られる点で意義深い。


ピープル・ツリー×エマ・ワトソン

people_tree_emma_watson_s.jpg ファッション分野でのフェアトレードを成功させている「ピープル・ツリー」は、この分野の代表的な存在だ。社会起業家のサフィア・ミニーさんが日本で立ち上げ、世界に広めた。女優エマ・ワトソンもクリエイティブアドバイザーとして「ピープル・ツリー」の事業に協力している。


 エシカルファッションもフェアトレード商品もおしゃれに人格や見識をまとわせてくれる点で、見た目とは別次元の価値を持つ。エコよりもレンジが広く、伝統的製法や職人技の継承、各地域に根付いた服飾文化の再評価なども実現できるとあって、有力ブランド・企業も本腰を入れて取り組む気配が見えている。

 「自分さえきれいに見えれば、生産者や地球はどうなっても構わない」というひとりよがりな態度の対極にエシカルファッションやフェアトレード商品は位置する。企業のがむしゃらな利益追求にもブレーキを掛ける。同時に、誰かの役に立っているという自負やプライドをまとわせてくれる。善意を持っていても、寄付やボランティアには腰が引ける人でも、おしゃれショッピングという形であれば、気負わずに参加しやすい。眠れる社会貢献マインドを引き出してくれる意味でも、エシカルファッションやフェアトレード商品はさらに日本で定着していくと期待したい。


(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江