【コラム】売るだけじゃない、ファッションECがエンタメ化
2011年08月28日 21:00 JST「面白くなくちゃ、お買い物じゃない」とばかりに、ファッションEC(電子商取引)のエンターテインメント化が進んでいる。ゲーム的な演出や、動画投稿サイトとの連動、着せ替え仮想コーディネート、リアル雑誌出版など、仕掛けはあの手この手。おしゃれECは画面の制約を乗り越えて、ショッピングプレジャーも提供し始めた。

グーグル米国版のファッションサイト「Boutiques.com」は、ユーザーが自前のブティックをオープンできるサイトだ。自分で商品をセレクトした仮想ブティックを開ける。商品をセレクトするに当たっては、自分が好むデザインやスタイルを、示された2枚の写真のどちらかから選ぶだけ。その回答結果に沿って、プログラムが自動的にユーザー好みのブティックをプロデュースしてくれる。
このサイトにはあらかじめ大勢の有名人やデザイナー、ファッションブロガーたちのブティックが用意されている。参加者にはセレブリティーのニコール・リッチーや、女優のエマ・ロバーツ、クレア・デーンズも名を連ねている。あるブティックを選ぶと、似通ったテイストの別ブティックをレコメンドしてもらえるので、様々な個性はオーナーが営むショップを巡り歩くようなバーチャル体験が味わえる。
Boutiques.com:http://boutiques.com/

動画を使ったECは機能進化がめざましい。通信販売大手のニッセンは動画投稿サイト「YouTube」の拡張機能を活用した「nissen Official チャンネル」をオープンした。動画に登場するモデルが着ているコーディネート一式を、動画上のリンク表示から、まとめて購入できる機能を備えている。
ニッセンのイメージキャラクターで女優・モデルの香里奈さんやモデルが登場する動画の吹き出し部分をクリックすると、オンラインショップに直接アクセスし、商品を購入できる仕掛けだ。この拡張機能を採り入れたのは、国内ECサイトとしては初の試みだという。香里奈さんのテレビCM16本や、YouTube向けのオリジナル動画も公開されている上、新作アイテムのファッションショーも予定されている。
nissen Official チャンネル:http://www.youtube.com/user/nissenOfficial

ポイントは9月17日、自社の人気ブランドのECサイトを融合したポータルECサイト「collect point(コレクトポイント)」をスタートする。ECサイトとリアル店舗(実店舗)をつなぐ場所として、ウェブ連動型ショップ「collect point(コレクトポイント)原宿店」を同日、リニューアルオープンする。
サイトでは各ブランドの編集コンテンツや、ポイントの商品を着用した顧客のストリートスナップ、新着アイテム、ランキングなどを掲載。実店舗には11ブランドが集められているから、ブランドミックスのコーディネートも楽しめる。サイトと実店舗が連動するので、全国約760店舗のショップスタッフの着こなしを参考にしながら商品が選べるのも、新たなショッピング体験となりそうだ。

ユナイテッドアローズの通販サイト「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」上では、着せ替えが簡単な「UA Style Share(UA スタイルシェア)」が公開されている。好きなアイテムを取っ替え引っ替えしながら仮想試着が体験できる。画面上のアイテムをドラッグして、モデルに着せるだけで、着せ替え人形のようなコーデごっこを、本物のおしゃれアイテムで楽しめる。
UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE:http://store.united-arrows.co.jp/

東京・渋谷のファッションビル「SHIBUYA109」の通販サイト「SHIBUYA109 NET SHOP」はリニューアルして、109来店者の着こなしをチェックできる「109 SNAP SHOT」を追加した。おしゃれカリスマが多い109ショップスタッフのコーデ写真をチェックして、気に入った商品を、そのままオンライン注文できる仕組みも用意されている。
SHIBUYA109 NET SHOP:http://e-shop.shibuya109.jp/

カジュアルウエアブランド「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」は9月5日、水嶋ヒロさんが編集長を務めるライフスタイル誌「GLOBAL WORK」の第2号を刊行する。「GLOBAL WORK」は公式サイトと通販サイト、Facebookの編集部ページを連動させて、ライフスタイルや世界観を印象づけている。同誌は全国の「GLOBAL WORK」店舗でも販売されている。
Facebook「GLOBAL WORK」編集部ページ:http://www.facebook.com/globalworkmag

リアル雑誌との連動は有力ファッションサイトでも起きた。ランウェイショーの速報で知られる米国サイト「Style.com(スタイルドットコム)」は、10月31日に初の雑誌を創刊すると発表した。主要コレクションのリポートを掲載する予定で、ECサービスも計画されているという。
Style.com:http://www.style.com/magazine/
単にカタログを載せたようなファッションECサイトは、もはや飽きられ始めている。どこのブランド、ショップもECを手がけるようになってきただけに、これからはディスプレー上での盛り上げ方に芸が求められる。ソーシャルショッピングへの対応は不可欠だろうし、スマートフォンやiPad、タブレット端末での機能を生かした表現も期待される。
買う側が1人でディスプレーに向かうばかりではない。一部のショップでは、着せ替えサービスをタブレットで表示して、試着室を使わないでコーデを提案する接客も始まっているという。自慢のコーデを競う投稿コンテストも盛んだ。コーデでつながるSNSも定着しつつあり、顧客の囲い込みに効果を発揮している。今後はアプリと内蔵カメラを組み合わせてのコンシェルジュ的サービスも広がりそうで、「遊べるEC」は加速するばかりだ。
(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江)
