アウトドアファッション第2幕、デイリーに浸透

2012年02月12日 21:40 JST

 登山やキャンプ用という位置付けだった「アウトドア」ファッションが、頼もしいデイリーウエアへとイメージを様変わりさせつつある。日本発の「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」や米国発の「Columbia(コロンビア)」などが新ショップを相次いでオープン。街の風景になじむラインも厚みを増してきた。武骨なヘビーデューティー感の強かったアウトドアファッションだが、普段使いしやすい穏やかテイストのブランドや、タフで心強いが、デザイン性が高くてコーディネートにも苦労しないアイテムも現れ、従来のアウトドア以外のシーンでも身にまといやすくなっている。(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江

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 2010年にアウトドア系ファッションを街中で楽しむ女性が増え、「山ガール」 と呼ばれた。その後もアウトドアルックはファンを広げ、デイリーウエアとの融合が進んだ。東日本大震災の後は不測の事態に備えたいという不安心理も働いて、リュックサックやトレッキングシューズなども売れ行きが伸びている。自転車やトレイルランなどのスポーツが愛好者を増やし続けていることも、アウトドアファッションに関心が集まる背景になっているようだ。


 ただ、野外の匂いをそのまま身にまとっていたかつてのアウトドアファッションに対して、最近の傾向はもっと角が取れてきている。今はもっと違和感を薄くして、自然とストリートになじむような着こなしが支持され始めている。ブランドやデザイナーの側からも、ゴツゴツしたアウトドア臭さを抜いて、最初からタウンユースを前提にしたようなデザインが提案され、ファンの裾野がさらに広がる気配を見せ始めた。


 東京発のメンズファッションでは、デイリーウエアや街着との境界線を軽やかに踏み越えるようなクリエーションが打ち出されている。「服を着るフィールドは全てアウトドア」というコンセプトを持つメンズブランド「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」は2月、第2号店を「伊勢丹新宿店」メンズ館内に開いた。旗艦店は2011年、東京・代官山から表参道に移した。ニューヨークでも2011年から展示会を始め、グローバル市場にも名乗りを上げた。アウトドアルックの「本場」とも呼べる米国で認められた始めた独自のスタイルは、「アウトドア」を山岳やキャンプ場に限定しない、懐の深い発想のたまものだろう。

 デザイン・実用性・技術の3要素を融合する「White Mountaineering」に加えて、さらに日常に溶け込ませたベーシックライン「Wardrobe(ワードローブ)」を展開。相澤陽介デザイナーによるウィメンズブランド「porlar. White Mountaineering(ポーラー ホワイトマウンテニアリング)」は、2012年春夏シーズンから「poral.(ポーラル)」にブランド名を変更。評価の高まりを受けて、海外での取り扱い先も一段と広がりを見せているようだ。


 老舗の本格的アウトドア系ブランドからも新テイストの提案が相次ぐ。「Columbia(コロンビア)」は3月、東京・原宿に「コロンビアスポーツウェア原宿店」をオープンする。日本で企画した「ジャパンオリジナル」を前面に押し出した、国内初の直営店となる。デイリー使いもしやすいアイテムをそろえ、アウトドア好き以外のファン層も広がりそうだ。「Columbia」はサンダル「CHASKI」で「ヱヴァンゲリヲン」とのコラボレーションも果たしている。


 一足早く原宿デビューを飾ったのは、2011年に明治通り沿いにオープンした「THE NORTH FACE 3(ザ・ノース・フェイス マーチ)」。アウトドアブランドの「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」が開いた、国内初の女性向けショップだ。同じ原宿には「街中でもアウトドアスタイルを楽しむユーザー」に向けて提案するショップ「THE NORTH FACE STANDARD(ザ・ノース・フェイス スタンダード)」もある。ファッションやカルチャーの発信地として知られる原宿に、アウトドアの有名ブランドが相次いで出店する動きはアウトドアとファッションのクロスオーバーが進む流れを物語る。



L.L.Bean Signature

 「L.L.Bean」は2011年、新ブランド「L.L.Bean Signature(エル・エル・ビーン シグネチャー)」を日本に本格投入した。アウトドアの質感とアメリカンクラシックのムードを溶け合わせたテイストが新しい。クリエイティブディレクターを務めるのは、「Polo Ralph Lauren(ポロ・ラルフローレン)」や「Abacrombie&Fitch(アバクロンビー&フィッチ)」でキャリアを積んだデザイナーのAlex Carleton(アレックス・カールトン)氏。アメリカンテイストのトラッドやカジュアルを、「L.L.Bean」に落とし込む上でこの上ないキャスティングと映る。



折り畳めるシューズ RADLER TRAIL CAMPER

 いざという事態や、シーン別の履き分けを考えて、持ち運べる靴を買い求める人が増えた。コンパクトに折り畳めるシューズ「RADLER TRAIL CAMPER(ラドラー トレイル キャンパー)」をヒットさせたのは、米国のアウトドアブランド「Timberland(ティンバーランド)」。二つに折って、両サイドのファスパーを閉めるだけで、全長が15cm程度に小さくできる。ライム、オレンジ、パープルなどの鮮やかなビタミンカラーがそろっていて、街履きにも向く。


 黒や茶色のイメージが濃かったアウトドアシューズの印象を変えた「MERRELL(メレル)」は圧倒的なカラーラインアップで足元の景色を変えた。1981年に米国でスタートした、まだ比較的若いブランドだが、鮮やかな色使いは、ファッション意識の高い女性にも受けた。


 新ブランドの上陸も続く。スウェーデンに本社を置くアウトドアブランド「HAGLOFS(ホグロフス)」は3月から日本で本格的な事業を始める。アシックスが2010年に買収し、2011年に販売子会社を設立した。ゴールドウインはニュージーランドのアウトドアブランド「icebreaker(アイスブレーカー)」の国内独占販売契約を結んだ。ニュージーランド産のメリノウールを使ったアウトドアウエアには定評がある。


 アウトドア特有の頼もしさや安心感も、新たなファンを引き寄せている理由のひとつ。とりわけ、大震災以降はハイヒールの売れ行きがダウンする一方で、フラットシューズが店頭から姿を消すような現象も起きている。服や靴に、身を守る「道具」としての機能面を強く期待する気持ちが表に出てきた。

 デザイン性の高いアウトドアアイテムはシーンを選ばないので、ユーティリティー(使い勝手)やコストパフォーマンスの面でも優れている。部屋着とワンマイルウェアの兼用も問題なくこなせる。気温や雨への抵抗力も普通の服に勝る。購入時に「この服(靴)を本当に使うのか、買う意味はあるか」と、今まで以上に必然性を意識するようなった昨今、シーンフリーのアウトドアアイテムは納得度が高い点でも、今後ますます市場を広げていくことだろう。


(文:ファッションジャーナリスト 宮田理江

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