夢のお菓子屋「パティスリー・デ・レーヴ」パリから京都へ

Pâtisserie des rêves 京都店の空間イメージ

 お菓子の家が本当にあったらいいと、誰もが一度は、夢見たことだろう。それは、幼い子供だけの気持ちではなく、大人になっても、変わらないかもしれない。事実、そうした夢をずっと追い続ける人物がいる。9月初旬、京都に日本第一号店を出店した Pâtisserie des rêves(パティスリー・デ・レーヴ)のパティシエシェフPhilippe Conticini(フィリップ・コンティチニ)は、「 楽しい夢は、一人で見るよりみんなで分かち合うほうがより豊かになる」と思っている。だから、独り占めせずに、様々なスウィーツの快楽をおすそわけしてくれる。毎日、厨房ではスフレのように、彼が抱く夢が膨らみ、一つ一つ丁寧に味覚に加工されていく。(取材・文 浦田薫)

 パリを拠点にするケーキ屋 Pâtisserie des rêvesは、 現在、市内に2店舗(6区と16区)を展開し、16区のお店には喫茶店も併設される。数年前のオープン当時には、購入時にクリームをシュー皮に注入してくれる、かりかり感とふんわり感がドッキングした、シュークリームが、絶大な人気を呼んだ。フランスのメディアでは "世界でも有数のシュークリーム好きな日本人たちによるお墨付き"とも評された。おそらく、旅や食の誌面にも数多く取り上げられ、フランス在住の日本人に限らず、情報をかぎつけたファンを、瞬く間に魅了したのだろう。これは、日本人が美味しいものに公正な評価ができるという意味としてもとらえられる。もちろん、シュークリームだけが目玉ではない。フランス特有のパリ-ブレスト、クイアマンなど地域に根付いた、フランス伝統菓子にも一目が置かれている。伝統を再現するのではなく、現代人の味覚にあわせた"さじ加減"をきちんと汲み取り、イノベーションをもたらしている。

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Biscuit à la cuillère:すだちか抹茶のビスケットの間に、ベリーの味覚を効かせたバニラのフォンダン(京都店限定)


 店舗内は、商品を購入する前に、時間をかけて迷いながら買い物をしたい人や、ウィンドーショッピングだけも楽しめるようなショーケースである。天井から滑車式に吊るされた、ガラス製のクロッシュ(鐘楼)のフタが、一点ずつサンプル商品を覆い、一粒の宝石のようにライトアップする。什器は、鉄と木を扱い、清潔さ、見やすさ、温もりを忘れない。 シュークリームの形をした、 ブランドロゴも、一度見たら忘れない。パッケージングについては、京都店特性も考慮されるかもしれないので、日本在住の読者の方々、要チェックしていただきたい。

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Meringue neige :底部にプラリネを敷いた上に、黒胡麻クリームをのせ、トップをメレンゲに仕上げている(京都店限定)


 さらに、店の経営方針だが、代表者のThierry Teyssierは、旅をビジネスにしたMaison des rêves(メゾン・デ ・レヴ)も並行に展開する。高級宿の経営、またパリ市内には世界の厳選された美しいオブジェを販売するショップも経営する。味覚も世界遺産に登録されるフランスである。総合的な文化への理解とは切り離せない。
 だから、日本の一号店オープンに京都を選んだのも、フランス人が好む日本への美意識からであろう。古い町家を改装した空間に、フランス人と京都人が合作した味覚がが誕生する。「 我々の商品をそのまま輸出するのでは、面白くない。シェフの才能を発揮させるにも、フランスの伝統商品を京都の素材とマッチさせて、文化をさらに広げたい」と意欲的な姿勢は変わらない。粋でシックなマリアージュ(結婚)になることだろう。

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Langues de chat:直訳すると"猫の舌"ビスケット。ホワイトかミルクチョコレートを薄い抹茶味のビスケットがサンドする(京都店限定)

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Cake au thé matcha:新鮮なキイチゴと砂糖漬けにしたキイチゴを、しっとりとした質感に仕上げたケーキ(京都店限定)


写真にはないが、kyoto-Brest(キョート-ブレスト)は、アーモンドクリームと小豆とマンゴーをシュー生地にはさみ、リング状にしたケーキ。そもそも、自転車のタイヤの形からインスピレーションを得たというParis-Brest(パリ-ブレスト)は、ドーナツ状のシュー生地がアーモンドクリームをはさむ伝統菓子である。


さらに、今秋には大阪のデパート内にもコーナーショップがオープンする予定だ。「 関東人に嫉妬される恐れがあるのでは?」の質問に、含み笑いの「 少々お待ちください」という返答をいただいた。きっと、計画は進行中であるのだろう。

パリ店では、9月の京都店オープンに伴い、イベント"Un Automne à Paris"(パリの秋)を開催中である。「 パリの方にも期間限定で京都店に商品も味わっていただきたい」という経営者の配慮である。そして、将来的には、Maison des rêvesが日本を巡る"美味しい"旅も企画する。


味覚は、文化を超えて新たなレシピをどんどんと更新している。ティエリーとフィリップが展開する、味覚の旅へ道草を食いたくなってしまう。


■Pâtisserie des rêves 京都店
 京都市東山区高台寺北門前通下河原東入ル鷲尾町518

http://www.maisondesreves.com
http://www.lapatisseriedesreves.com

(取材・文 浦田薫)



浦田 薫 - パリ在住ジャーナリスト -
kaoru_urata_m.jpg建築とデザインに情熱を抱き、好奇心の旺盛さに寄り道が多い筆者は、多国籍文化の中で生活する、東京生まれのパリ育ち。デザインコンサルタント、企画プロデュース、翻訳・通訳も並行にしながら、異なる文化や言語の渦中で観察を続ける日々を過ごす。本サイトでは、環境に応じて人間が役割を与えて誕生する、空間、もの、出来事について読者と意見を交換していきたいと思う。