クリエイターのための共有空間 - 渋谷にひろがるシェアオフィスとは

2012年07月21日 12:00 JST

  2012年4月、地下4階から地上34階建ての渋谷駅直結の複合施設「渋谷ヒカリエ」が開業した。大規模施設が建築されるのと合わせて渋谷ではシェアオフィスと呼ばれる小規模ビジネスを対象とした施設が相次いでオープンしている。ここではかつて「ビットバレー」と呼ばれたインターネット黎明期の熱気を感じさせてくれる人気のシェアオフィスを紹介する。

Creative Lounge MOV 画像: Fashionsnap.com
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 1990年代後半から2000年代にかけて、渋谷は現ライブドアやGMOインターネット、サイバーエージェントなどのネットベンチャーの起業が相次ぎ、日本版「シリコンバレー」として「ビットバレー(Bit Valley)」(渋い:Bitter、谷:Valley)と呼ばれていた。PCで革命を起こそうとする当時の若手起業家の自由闊達な雰囲気と熱意は、現在の渋谷カルチャーにも色濃く足跡を残している。そんな余韻が残る中、近年ではインターネットを駆使したいわゆるノマドと呼ばれる起業家やフリーランスが渋谷に多く出現。電波とPCさえあればどこでも仕事ができるため、働く「場」も形式に捕われない様々な形に進化し机だけを貸すシェアオフィスが相次いでオープンした。

 「シェアオフィス」が多く集まる渋谷の街は、4月に地下4階から地上34階建ての渋谷駅直結の複合施設「渋谷ヒカリエ」が開業し、新ランドマークの誕生により賑わいをみせているホットなスポット。会議室や打ち合わせスペースなどを共有しながら独立した仕事をするスタイル「Coworking(コワーキング)」を取り入れた「シェアオフィス」が、渋谷を中心に増加している。「Coworking」とはもともとは海外で発祥した言葉で、特定の企業や組織に属さないフリーランスのクリエイターや起業家が増加したことを受け、2000年代に入ってから日本でも浸透し始めた。「Coworking」を取り入れた「シェアオフィス」の特徴は、フリーアドレス方式でワークスペースをシェアすることができるということ。また、入居者同士でコミュニケーションを図りながらその空間で起こる体験をシェアすることで新たなビジネスチャンスを生み出すなど、各施設ごとに独特の共有空間を創り上げ、新たなワークスタイルを創出している。






■THE TERMINAL

 2011年8月、渋谷区神宮前3丁目に出店した「THE TERMINAL(ターミナル)」は、コンサルティングファームTHINK GREEN PRODUCE(シンクグリーンプロデュース)がプロデュースするクリエイティブスペース。インターネットやドリンクの他、書籍やアートを自由に楽しむことができ、スタイリッシュなインターネットカフェとしてのみならず、ノマドワーカーと呼ばれる都会の遊牧民やクリエイターにとって最適な機能が充実している。本棚や音楽、インテリアに囲まれてパソコンや読書をすることができ、新たなワークスペースの在り方としてオープン当時、大きな話題となった。現在の会員数は約7,000人で、「時間単位で利用が可能なため、"ちょっと使い"のクリエイターを中心に利用者を増やしている」(広報担当者)という。「THE TERMINAL」では、諸条件により実現しなかったプランやボツアイデアを語り合う来場者とのコミュニケーションイベント「SUKIYAKI」を毎月第4水曜日に開催中。第9回目を迎える次回7月25日は、バーグハンバーグバーグ代表取締役で「あたまゆるゆるインターネット-オモコロ」の初代編集長シモダテツヤと、WEBデザイナーの中原寛法が未公開アイデアを披露する予定だ。

 住所:渋谷区神宮前3-22-12 3階
 形式:全席フリーアドレス、ミーティングルーム
 設備:無線・有線LAN、全席コンセント完備、Mac6台、コピー機など
 規模:約130m²
 運営:THINK GREEN PRODUCE
 URL:http://theterminal.jp/






■THE SCAPE(R)

 同じくTHINK GREEN PRODUCEが手がける新スポットとして2012年3月、緑豊かで静かな環境の渋谷区東に出店したのは、シェアタイプのSOHOスペース「THE SCAPE(R)(ザ スケープ アール)」。駅からは歩くとやや遠いため、自転車で通う人向けに自転車を置くスペースが広めに設けられている。「THE SCAPE(R)」は2005年に隈研吾がサービスアパートメントとして設計した「THE SCAPE」をリノベーションした施設で、成瀬・猪熊建築設計事務所が空間と家具、ランドスケーププロダクツがソファ、インテリアショップ「CIBONE(シボネ)」が各フロアの椅子のデザインを担当するなど、多くのデザイナーやクリエイターが立ち上げに協力。5フロア構成の館内では、自分だけの特定席を備えた「マイデスク」や特定の席を持たない「フリーアドレス」、現在は満席だという小規模の企業が入居できる「マイルーム」など、様々なニーズやスタイルに合わせた4つのプランを用意しており、それぞれのスタイルに合わせて働き方を選ぶことが出来るようだ。

 住所:渋谷区東4-4-6
 形式:SOHO、パーソナルデスク、フリーデスクなど
 設備:パブリックラウンジ、ミーティングルーム、コンシェルジュサービスなど
 規模:約1,000㎡・地上5階建て
 運営:THINK GREEN PRODUCE
 URL:http://www.thescape-r.jp/


ロゴデザインは東京・千駄ヶ谷のペーパーショップ「PAPIER LABO.(パピエラボ)」の江藤公昭が担当


受付では、ホテルライクなコンシェルジュサービスを実施


各所に設置された机に描かれたユニークなイラストはイラストレーターのNoritakeによるもの






■THE SHARE

 渋谷区神宮前3丁目の明治通り沿いに位置する「THE SHARE」は、印刷工場をリノベーション(再生)した「TABLOID(タブロイド)」やシェア型賃貸住宅「SHAREPLACE」の企画・運営などを手がけてきたリビタがプロデュース。築48年の企業独身寮を丸ごとリノベーションして、ショップ・オフィス・アパートメントの機能を一つに集約した新たな複合施設として2012年1月にグランドオープン。「働く」「暮らす」「遊ぶ」「集う」という様々なコンテンツやモノ・コトをシェアし、新しくてソーシャルなワークスタイルやライフスタイルを提案している。ウッドデッキが設けられた1階には、カフェ・ダイニングや物販、セレクトショップなどが出店し、2階にはスモールオフィスやパーソナルデスクをはじめ、追加の座席を募集中のフリーアドレスデスクが並ぶシェアオフィス、3階〜5階はシェア型住宅を設置。6階には入居者が共用で利用出来るスペース、そして屋上には熊谷隆志がグリーンデザインを手がけた屋上テラスが広がる。

 住所:東京都渋谷区神宮前3-25-18
 形式:スモールオフィス、パーソナルデスク、フリーデスクなど
 設備:ロビー、ダイニング、ラウンジ、キッチン、ライブラリー、シアタールームなど
 規模:約3,800㎡・地上6階建て
 運営:リビタ
 URL:https://www.the-share.jp/


クリエイティブ・ディレクションはトランジットジェネラルオフィス






■co-ba

 24時間使用可能なクリエイターのためのシェアードワークプレイスとして、2011年12月に渋谷の新南口から徒歩3分の渋谷区渋谷3丁目にオープンした「co-ba(コーバ)」は、空間デザインやクリエイティブディレクションなどを手がけるツクルバが運営。個室や仕切りを設けず、最大で約40名程が入るフルオープンなつくりが特徴で、入居者同士でコミュニケーションを図ることができるところがポイントだ。2012年5月には、利用者が蔵書をシェアするライブラリー「co-ba library」が「co-ba」の上階にオープン。ツクルバ代表の村上氏は、「スペース全体をオープンな形にすることで、場所を共有するだけではなくお互いのアイディアやビジネスも共有してほしい」と話しており、「施設をつくって終わりではなく、『co-ba』という空間にひもづいたコミュニティを形成して行くことで、そこから生まれる新たな動きに注目していきたい」と語る。

 住所:東京都渋谷区渋谷3-26-16 第5叶ビル5階・6階
 形式:パーソナルデスク、フリーアドレスデスクなど
 規模:co-ba 約120㎡/co-ba library 約120㎡
 運営:ツクルバ
 URL:http://co-ba.jp/







カラフルな椅子が並ぶミーティングスペース


co-ba library


ツクルバ代表の村上浩輝氏






■Creative Lounge MOV

 クリエイティブに働きたい人や団体のために「渋谷ヒカリエ」の開業と同時にオープンした「Creative Lounge MOV(モヴ)」は、コクヨファニチャーが運営するメンバー制ラウンジ。施設内で最も人気だという街の広場をイメージしたオープンラウンジでは、テーブルやソファ席、ステージ状のデッキなどが並び、その日の気分に合わせてワークスペースをセレクトすることができる。広場の周りは9つのミーティングルーム、スモールオフィス、起業家のためのレジデンススペース、ショーケース「aiiima(アイーーーマ)」などを設置。4月26日のオープン以来、30代を中心に300人を超える会員が集まっており、男女比は7:3。「せっかく外にミーティングルームを借りるなら、おしゃれなところがいいのでMOVにした」という声があがるなど、駅直結の利便性と施設のデザイン性を活かして利用されているようだ。また、7月30日からの期間限定で、全国300以上の生き方・働き方を伝えてきた「東京仕事百貨」が南青山から丸ごと会社を移転。「aiiima」の社会社見学企画の第6弾として開催されるされるもので、「東京仕事百貨」のスタッフ一緒に働くことができる他、就職や仕事の相談を受け付けるそうだ。

 住所:渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ 8/(ハチ)内
 規模:約900㎡
 形式:パーソナルブース、パーソナルデスク、オープンラウンジ、ショーケースなど
 運営:コクヨファニチャー
 URL:http://www.shibuyamov.com/







 ツクルバのようなベンチャー企業をはじめ、大手企業グループのコクヨファニチャーも「シェアオフィス」の運営に乗り出すなか、「アメーバ」を手がけるサイバーエージェントはエンジニア・クリエイター職の社員を対象にしたシェアハウスを2012年12月、渋谷に開設する。全47戸の居住スペースに加え、ラウンジ・キッチンやリラクゼーションルーム、トレーニングルームなどの充実した共有スペースを用意。また、漫画・雑誌・ビジネス書などを揃えたライブラリやゲーム部屋、集中開発ルームなど、エンジニアやクリエイターが開発をする上で新たなサービスのヒントやきっかけを生む環境を用意し、シェアハウス発の新サービス開発を促進する狙いだ。


©サイバーエージェント






 「渋谷ヒカリエ」の開業に加えて、2012年度中に東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転がスタートする予定。さらに利便性を高めていく渋谷の街。駅ビルの開発、駅前広場や道路などの公共施設の再編・拡充など、"日本で一番訪れたい街"渋谷を目指して引き続き大規模な再開発が実施される。多くの再開発プロジェクトの動きに合わせて、サイバーエージェントの社員用スペースの他、渋谷区神宮前6丁目のキャットストリート沿いにはコワーキングオフィス&イベントスペース「しぶや川」の建設が進行しているなど、今後も渋谷を拠点に活動するクリエイターや起業家に向けて、様々な個性を打ち出した「シェアオフィス」がオープンしていく予定だ。

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