【2012年春夏バンクーバー・ファッションウィーク総評】エコ・スポーツ・インターナショナルの融合

 浅田真央選手が銀メダルを獲得した冬季オリンピックの記憶も残る、カナダの都市バンクーバー。カナダではトロント、モントリオールに次ぐ第3の都市であり、両市と並んで独自のファッションウィークを開催している。大自然と共存する国カナダでは、ファッションにもエコ志向やアウトドア、スポーツなどが無理なく溶け込んでいる。2012年春夏のバンクーバー・ファッションウイークを通して、次シーズンのトレンドを見通してみよう。

 インターナショナル性が高いのもバンクーバーの際立った特質と言える。香港返還の際、中国系移民が大勢移住し、中国系が人口の約3割を占めるというのも、オープンな土地柄。11月2~6日に開催された2012年春夏コレクションには、ドイツ、オーストリア、ポーランド、ルーマニア、メキシコ、ブラジル、チリ、韓国などの国・地域から、50を超えるブランドが集まった。日本からは東京コレクション参加経験を持つ「tiny dinosaur(タイニーダイナソー)」がエントリーした。

◆Joseph Ribkoff
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 全体に穏やかでスポーティーなテイストが多いバンクーバーにあって、アッパー感の際立つブランドがカナダの「Joseph Ribkoff」。1957年創業の老舗で、デザイナーはJoseph Ribkoff氏は。上流ファッション市場向けのデザインを得意としているが、デイ&イブニング両方に対応できる服。2011年度のミスアメリカが愛用していて、コンテスト本選でも「Joseph Ribkoff」の服をまとった。彼女は今回のショーのファーストルック&ラストルックに登場した。




Joseph Ribkoff 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen

◆Eva Chen
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 クチュール系の筆頭がバンクーバーブランドの「Eva Chen」。ヘッドアクセサリーやデコラティブ装飾を生かした、ドラマチックなドレスを得意とする。パーティーで注目を浴びそうなカクテルドレスはシグネチャーなアイテム。バレエのコスチュームも手がけるというのもうなずけるシアトリカルな仕立てだ。中国生まれの女性デザイナー、Eva Chen氏が2010年に立ち上げたまだ若いブランド。Chen氏は音楽一家に生まれ、音楽や絵を学んで、才能を磨いたという。





Eva Chen 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen

◆Valerio Moda
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 カナダのレザー文化を継承した、ハイエンドのメンズブランドが「Valerio Moda」。レザーアイテムで15年以上の経験を持つAli Mokhtarian氏が2007年に立ち上げた。ジャケットとアウターに特化していて、オートクチュール的な作り込みが持ち味。レザーと異素材のミックスにも冴えを見せる。レザーを扱い慣れないデザイナーは、素材を仰々しく見せてしまいがちだが、皮革品が生活に根付いているカナダらしく、Mokhtarian氏は上質レザーをさりげなく着こなしに溶け込ませている。


Valerio Moda 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen


◆Janine Desjardins
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 天然素材はカナディアンファッションと縁が深い。エコなマテリアルを使いながらも、それを前面に押し出さないところが、環境意識が当たり前に浸透しているこの国らしい。「Janine Desjardins」は麻やコットンなどの天然素材を好んで用いるブランド。精緻なテーラーリングを得意としていて、カットソーやパーカーのようなデイリーアイテムにもこだわりのカッティングを見せる。ボディーラインに沿うシルエットコンシャスな服では仕立ての見事さが一段と目立つ。





Janine Desjardins 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen


◆Henry Apparel by Lisa McLeod
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Henry Apparel by Lisa McLeod 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen

 環境意識がとても高い「Henry Apparel by Lisa McLeod」はバンクーバーの竹ジャージー(竹製の織物)だけを繊維素材に使う徹底ぶり。しかも100%カナダ生産を貫いている。初のランウェイコレクションとなった今回のバンクーバーでは、フィット感と機能性を兼ね備えたヨガスタイルを提案。ヨガ着にもタウンウエアにも使える服を披露した。切り替えのあるレギンスや、Aラインフォルムのフーディーなどはヨガ帰りにディナーにもクラブにも寄れそうな仕上がりだった。

◆mortar & pestle apparel
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mortar & pestle apparel 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen

 環境を重んじる姿勢はリサイクル素材の積極的な使用からも感じ取れた。「mortar & pestle apparel」はコットンやリネンなどのナチュラルファブリックを多用。エコフレンドリーなたたずまいにまとめ上げた。アウトドアのムードに、1950年代スタイルをミックス。ハイウエストのペンシルスカートのようなクラシカルな装いを打ち出したブルーベリーやセージなどの植物・花の鮮やかな色を使ったカラーブロックにもナチュラル感が薫った。

◆Mermaid Moon
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Mermaid Moon 2012 春夏バンクーバーコレクション Photography by Peter Jensen

 カナダブランドの「Mermaid Moon」は、リサイクル素材を使って、いかにも着心地よさげな服を生み出した。旅が好きで、インドをよく訪ねるというデザイナーのJessica Redditt氏はインドの民族衣装「サリー」や、テーブルクロス、カーテンなどをリサイクルして服やバッグを作っている。ランウェイで披露された服はこれが以前はテーブルや窓を飾っていたとは信じられないほど、エレガントで繊細。「リサイクル服=デザインは二の次」という常識を裏切ってみせた。