アメリカで苦戦するユニクロ、原因は返品条件の厳しさか?

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■小売業界にとって1月は山のような返品に対処しなければならない繁忙期となる。あまりセンスのよくないセーターや退屈なオモチャを返品するため大手チェーンストアのカスタマーサービスに行列ができる。クリスマス後の年間行事にとどまらず、返品は小売業界にとって大きな負担だ。2014年だけでも2,840億ドル分の商品が返品となった。最近はオンラインショッピングが増えていることで返品も上昇している傾向にある。スマートフォンで気軽に買い物すれば、返品もより多くなることは想像に難しくない。小売業界の返品率は平均でおよそ8%だが、実物を見たり確認できないオンラインショッピングでは返品率は急激にあがるのだ。その一方で返品が小売店にプラスの結果を与えているとの報告がテキサス大学ダラス校から出された。購買と返品についての複数の研究結果を統合し、より高い見地から分析するメタアナリシスを用いた結果では、30日間や90日間などの「返品期間」や、一部もしくは全額などの「返金額」、セール品など除外される「返品対象」、オリジナルの包装やパッケージ、値札の有無などの「商品コンディション」、ストアクレジットや代替商品の取り換えの「交換」の5つの条件で調べた結果、寛大な返品条件であるほど返品は増えるものの売上を増大させているという。返品期間を延ばすほど「保有効果(Endowment effect)」で返品率が下がるのだ。保有効果とは、自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと感じる心理現象のことをいう。返品期間2週間では返品しやすいが、90日近くも所有していると保有効果が働き返品しにくくなるのだ。
返品はお店の最終利益を損なうが、売上を上げるということでは効果があるのだ。

トップ画像:ユニクロ・ニューヨーク34丁目店。ユニクロはアメリカでも最悪の返品条件?

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。ニューヨークに行く機会もあり、寒さ対策でユニクロでヒートテックを何枚か購入しました。レシートをもらって気づいたのは返品条件の厳しさです。「すべての商品はタグ(商品札など)が付いたままのオリジナルの状態での返品でなければならない」とあります。こんな厳しい返品条件では、アメリカで認知度が低いユニクロは売れません。ヒートテックの評判を知っているので私は購入しますが、機能をあまり知らないアメリカ人なら返品条件が厳しいので購入をためらうでしょう。レビューサイトのイエルプでは、例えばユニクロ・サンフランシスコ店のレビューに「返品条件に注意してください。ユニクロはアメリカでも最悪の返品条件となっています(Buyer Beware with Return Policy. UniQlo has one of the worst return policies in the US) 」と書かれています。私は最悪とまでは言いませんが、メイシーズや競合店に比べて厳しいのは確かです。

⇒ニューヨークの34丁目にあるユニクロでは客の多くがアジア人で、近くのH&Mにより多くお客が集まっているようでした。アメリカでユニクロは苦戦していると聞きます。日系の小売店はアメリカの商慣習をよく分かっていないようです。少なくとも日本にいる役員は理解できていません。アメリカでは着古した下着でも返品してくるのです。日本では考えられないような返品もアメリカでは常識です。日本で「それはおかしい!」と叫んでもアメリカでは常識なんですね。後藤はコンサルタントとして(実験として)、また生活者としてこれまで数多くの返品を行ってきました。500ドルを超える高額なコピー機から4、5年前に購入し使い倒した家具まで返品してきました。何度か店長を青ざめさせたこともあります。アメリカの消費者としての経験法則から、返品条件が厳しすぎるお店の売上が上がらないことが分かりました。一方で「もったいない」を美徳とする日本人には寛大な返品条件は理解できないことだと思います。

⇒返品されたものの多くは、そのまま廃棄同然となります。もったいないですよね。商品を子供のように扱う商人としては、否定されたような気持になり、ものすごく悲しい気分になります。が、アメリカでは必要なことなのですね。特に知名度の低いユニクロは、より多くの人に知ってもらうための投資として返品条件を緩和するようにしなければなりません。自分たちがリスクを負わず、消費者にリスクを押し付けているのでは、消費大国で小売り先進国のアメリカでは通用しません。なぜ大手チェーンストアは寛大な返品条件にしているかというと、それは顧客の生涯価値を知っているからです。気に入らないだけで購入した商品を気軽に返してくるけれども、それ以上に生涯にわたる購入金額は莫大となるからです。厳格な返品条件では顧客を不愉快にさせます。返品で不快な思いをした客は、生涯価値を大きく減少します。返品をコストではなく投資と考えていれば(アジア人以外のアメリカ人にも)ヒートテックは定着するでしょう。
アメリカ市場への参入を模索する企業のコンサルティングでは、実際に返品を視察してもらいます。それでも日本人(特に物のない時代に育った世代)には感覚的に返品を理解するのは難しいのです。

後藤文俊