クリエイティブディレクター

セレクトショップはどこへ向かっているのか?

セレクトショップはどこへ向かっているのか?の画像

今回は「セレクトショップはどこへ向かっているのか?」について論じてみたい。この受けとして、一部では「セレクト商品の販売が落ち、オリジナル商品主力に変化してきた」と言われる。だが、筆者は「オリジナル商品主力」の時点で、「すでにセレクトショップじゃないんじゃないの」と、提議したい。

セレクトの定義とは何なのか

そもそも、セレクトショップとはどんなものか。それが出現するまでの「ブティック」「品揃え専門店」「チェーン店」といった業態と、どう違うのか。その辺から再度、整理してみないと、定義もつかめず、提議も理解されないのかもしれない。

筆者が30年近く執筆に携わってきたファッション業界誌では、 セレクトショップとは「編集型品揃え専門店」と、訳していたと記憶している。

本来、専門店とは店のコンセプトを明確に定め、仕入れ商品によるエディトリアルやコーディネート提案で、個性を主張してきたはずだ。しかし、チェーンストア化で売上げ規模や効率を追うようになると、売れ筋ばかりを追求し、没個性に陥ってしまった。

一方、大手のアパレルメーカーは激しいトレンド変化に対応するため、また卸先専門店の経営力の低下から、短サイクルで商品を生産し、自ら販売までコントロールする製造小売業(SPA)にシフトして行った。

もっとも、バイイングパワーと販売力を持つ一部の有力専門店は、大手アパレルから商品を卸してもらえなくなったことで、その対策として仕入れを国内から海外に求めることで、生き残りを図っていった。

こうした規模、効率の追求や同質化への反抗、国内アパレルに頼らず仕入れをワールワイドに求める発想転換などから生まれたのが、セレクトショップだったと思う。それらは真の品揃え専門店として、顧客の顔を見ながら一歩先のファッションを独自の感性で探し出し、絞り込まれたターゲットに対し、こだわりのある商品を選別、アソートメントし提案していった。

じゃあ、どんなフォーマットがあるのかと言えば、まずFBに携わる多くの諸兄が知るところだ。また、「ブティック」と呼ばれた地域の高級専門店では上得意の顧客がいたため、インポートセレクトに転換したところもある。でも、メジャーになりにくいことから、全国的な知名度をもつところは多くない。

セレクトには5つのフォーマットがある

厳密に分析すれば、セレクトショップには5つくらいのフォーマットがあると思う。まず、「欧米のコレクションブランドからバイヤーの目利きでバイイングし編集した業態」(フォーマット1)。パリのコレット、ニューヨークのオープニングセレモニーといったインターナショナルのセレクトショップがこれに当てはまる。

次に「オリジナリティをもつ国内外の主にクリエーター系ブランドをセレクトした業態」(フォーマット2)。仕入れとは別に一部のコラボレーションやプライベートのブランドを持つことも特徴だ。2012年にクローズしたディエチェ・コルソ・コモ コム デ ギャルソン、現役ではパリのレクレールやマリア・ルイザなどだ。

続いて「店舗でブランドのコーナーをストレートに見せる陳列スタイルの業態」(フォーマット3)。最近は少し変わって来たが、エストネーション、そしてストラスブルゴが代表的だろうか。さらに規模を拡大したストア業態では、バーニーズ ニューヨークがある。

そして「仕入れ商品にショップオリジナルをミックスしたSPAセレクト業態」(フォーマット4)。日本でセレクトショップと言うと、まず最初にこれを思い浮かべるはずだ。小売り発ではビームス、ユナイテッド・アローズ、アーバンリサーチ、メーカー発ではアクアガール、エポカ、アダム エ ロペが代表的だ。

最後に「構成を雑貨や飲食まで広げたライフスタイル型業態」(フォーマット5)。米国の20Twelve、同じくロサンゼルスのロンハーマン、パリのメルシー、日本でもワールドのオペークは以前からあるが、最近はナノユニバースのザ オーク フロアなど、既存のショップからの派生が増えている。

番外として、パリのギャラリーラファイエットが展開するル・ラボラトワール・クリエーターやル・ラボラトワール・リュクス、同じくボンマルシェ、日本では伊勢丹のTOKYO解放区、リ・スタイルなど百貨店が自主編集する売場を加えると、6つになる。

意外だが、地方ではブティックやレディス専門店の二代目、三代目が100%仕入れで運営し軌道に乗せているし、独自でフォーマットを開発している地域一番店もある。

店舗が自社の物件であるとか、数店規模に絞っているところなら、一人のバイヤーでもコントロールができて収益が上げられる。仕入れも商社やインポーターと一緒になってブランドを開拓したり、新進クリエーターのトランクショーなどから商品を見つけたりしている。それらもフォーマット1~3と5をミックスしたセレクトショップに該当する。

拡大でセレクトの意義が薄れる

セレクトショップにブランド力がつけば、企業としては拡大路線を進む。いわゆる多店舗化である。 フォーマット4が歩んでいる路線だ。規模を拡大するには市場が大きく、パイがつかみやすいゾーン向けを増やしていった方が効率がいい。

仕入れはメーカーの掛け率で、粗利益が決まってくる。また、インポートブランドはアパレル側が掛け率を決めるし、間に商社やインポーターが介在するとさらに掛け率が上がり、ショップ側の利益が薄くなる。つまり、儲けが少なくなるわけだ。

しかも、ショップの顔として見せるブランドほど「お客の好き嫌いが激しい」から、消化率を悪化させる場合もある。どんなに優秀な=カリスマバイヤーでも高感度、高価格帯のブランドで、買い上げ率100%になる商品を仕入れることは不可能だ。

だから、ショップとしては「確実に売れる」「売りやすい」「粗利益がとれる」といった商品も必要になり、オリジナル商品の企画にも走っていく。そこで「見せる部分」と「売っていく部分」のバランスが大事になってくる。

見せる部分は高感度、高価格帯、クリーター系ブランド、インポートなどで、売っていくのは定番デザインや定番ブランド、値ごろ感のあるもの、利幅が大きいもの。定番的な売れ筋で、しかも粗利益を取ることを重視するなら、やはり仕入れよりオリジナルを作った方が確実だ。

当然、オリジナルを作るにはある程度のロットが必要になるから、それを捌くルートが不可欠だ。結果として、多店舗化、多チャンネルシフトの中で、ショップMDのバランスは仕入れ4割、オリジナル6割とか、同3割、同7割とかになっている。

また、オリジナルと言っても、小売りスタートのセレクトショップに商品企画のノウハウはない。だから、間にODMやODMの業者を介在させてオリジナル商品を企画していく。しかも、こうした業者を入れても自店は出来る限り粗利益を稼ぎたいから、当然、原価率は圧縮される。

それが折からのアジア生産シフトとシンクロして、「中国生産」を当たり前にしていった。それでもセレクトショップとしてのロイヤルティ、最低限の商品クオリティは失われてはいないから、お客にとっては原産国はどこでも構わないということもはっきりしたのである。

言い換えれば、こうしたお客の安心感が、日本の「SPAバイイングセレクト業態」を売る側の都合=粗利益が取れる業態へと変化させていったと言ってもいいだろう。この傾向はこれからもいっそう高まっていくと思う。

根本的に言えるのは、オリジナル商品がどこまで増えていくかである。それがOEMでもODMでも業者から仕入れるのだから、セレクトの内だとのへ理屈は成り立つ。極論すれば、オリジナル99%、仕入れ1%でもセレクトショップと言えばそうかもしれない。

仕入れ、個性というコンセプト維持

ここからは筆者独自の見解である。セレクトショップと呼ぶならやはり100%仕入れで、一部の別注オリジナルを含む程度が正解ではないかと思う。筆者はバイヤーが日本を含め世界中のアパレルや小物のメーカーを巡り、ショップコンセプトとターゲットに沿った商品を買い付け、編集して提案することが「セレクト」と考えるからである。

店舗体制、売上げ目標に沿って、メーカーが企画したショップオリジナルやメーカーに依頼したオリジナルの中から吟味して買い付け、売場に並べるフォーマットのなら、それはしまむらやフォーエバー21と何ら変わらない。でも、それらをセレクトショップとは呼ばないだろう。メディアを含めて、ご都合主義だ。

ビジネス的に見ると、100%仕入れではお客の好き嫌いに左右され、消化率が悪く、粗利益が高くないなどのデメリットがある。でも、オリジナル商品が増え、ショップがSPA化すればするほど、セレクトショップのロイヤルティは失われていくような気がする。

考えてみればセレクトショップとは、「店のコンセプトを明確に定め、仕入れ商品によるエディトリアルやコーディネート提案で個性を主張する」「顧客の顔を見ながらその一歩先を独自の感性で提案し、結果絞り込まれたターゲットに、こだわりのある商品を選別し、アソートメントしていく」「真のスペシャリティストア」のはずだ。

それから外れれば、外れるほどセレクトショップ然とはしなくなる。現に駅ビルやファッションビルに溢れるSPAバイイングセレクト業態を見ると、どこもかしこも同じテイストのアイテムばかりで、逆にオリジナリティさえ感じない。

アーバンリサーチのラシックなどスピンオフで毛色を変えて来ているところもある。ただ、総じて一歩先を独自の感性で提案すること、絞り込まれたターゲット、こだわり、キレのある上質な商品といったキーワードが店から見えづらくなっているも事実だ。

SPAバイイングセレクト業態が限りなくSPAに近づくとどうなるか。結局、チェーン専門店が辿ったのと同じ轍を踏むような気がする。どこも売れ筋ばかりを追求していき、同じターゲット層のベクトルに合わせてしまうと、ODMやOEMの商品では差別化はされなくなっていく。

本来、オリジナル商品はショップの個性を主張するためのものだが、粗利益をとるための売れ筋商品と化し、味が薄く面白みを無くしてしまっている。店舗規模も全国30店を超え、さらにネット通販まで増えると、それはセレクトショップではなく、売り上げ効率を追求した単なるチェーン店と変わらない。

とすれば、人口減少の中でマーケットは縮小しているのだから、そんなショップが何店もいるわけがない。いずれどこかが撤退していかざるを得ないと思う。

個店も淘汰される時代に

一方、フォーマット1から3にも、課題は山積する。まず、1~3に共通することでは、ターゲットのお金持ち顧客が年齢を重ねていけば、店には定着しなくなっていく。ファッションよりも他にお金をかける必要が生じるからだ。高齢層が多い日本ではこの傾向は顕著だ。

現状でもインポートのラグジュアリーブランドを扱うと、エクスクルーシブやミニマムロットという取決めから、予算よりはるかに高い仕入れ額を要求されている。また、インポートは総じて掛け率が高いし、完全に買い取りである。プロパーで7割以上の消化率でないと、まず利益は出ていないだろう。

かといって、インポートに変わる感度の国内ブランドがあるかと言えばそれもない。売れなければ、キャッシュが入って来ないわけだから、ますます資金繰りは苦しくなる。

すでにインポートセレクトは大都市周辺で一定の富裕層がいないところでないと成り立たないと思う。日本は今後、高齢社会がますます進み、客離れが激しくなるわけだから、この業態がいちばん厳しいのではないかと思う。

フォーマット2は、クリエーター系ブランドが安定供給されないという構造的な問題を抱えている。ショップ側が勢いがあるときは、次々と新ブランドを開拓できるからまだいい。ただ、あまりにクリエーターがころころ変わると、店のコンセプトとズレが生じてしまう。今後はこうした課題がジワリと響いていくだろう。

特にクリエーター系ブランドを好むお客さんほど感性が鋭く、目が肥えている。商品では簡単に妥協しないし、財布の紐も堅くなっている。それをクリエーターとのコラボレーションで解決できればいいのだが、ロットの問題もあり、クリエーター側も譲れないだろうから、商品づくりは簡単でない。

感度、生地、縫製のすべてでこだわりをもつ大人のお客をいかにクリエーターとともに捉まえていけるか。若者の服離れが激しいだけに、若者に訴えるようなテイスト、デザインのままでは、今後は顧客が定着せず、経営は立ち行かなくなると思う。

フォーマット3は、現状でもそれほどブランドのアイテム数が豊富ないので、コーディネートする場合のタマ不足は否めない。というか、売れ残りのリスクを恐れて、どうしても絞り込んで仕入れている。表向きはセレクトを謳っているが、裏面では在庫を残すことで利益率が下がるのが怖いのである。

また、提案力やVMDの点でもお客に対する訴求力を感じない。売り切れご免の商売では、ブランド好きのお客にとって、品切れの場合に他の商品になびくとは思えない。

結局、つまり、ヒットアイテムが出ると、売り逃しも避けられず、逆に販売ロスを生んでいるのではないかと思う。セレクションもさることながら、他にも全く売りを感じないので、ストア規模でないショップは1に取り込まれていくか、淘汰されていくのではないかと思う。

セレクトではなくなっていく

セレクトショップと言ってもビジネスである以上、市場ニーズに合わなければ必要とされなくなる。ショップのロイヤリティをもつところは、大なり小なり、都市地方を問わず、経営力次第で生き残ることはできるだろう。しかし、それがセレクトの概念かと言えば、必ずしもそうとは言えないと思う。

特に大手セレクトの実態は「ショップブランドショップ(SPA)」となり、企画力をもつバイヤーを抱えているところは、その意思をダイレクトに反映させてオリジナリティを出しやすい「工場直発注系SPA」となって、差別化していくのではないか。

つまり、大手ではセレクトショップという名前は完全に形骸化していくということだ。それでもSPAになれば、商品の味が薄く面白みを無くしていくのは避けられないから、どちらにしても生き残るところは限られる。

逆に地方のセレクトショップは、自社の土地で家賃が不要、経営者が店長とバイヤーを兼ねるなどの条件付き=ローコスト経営なら、100%仕入れでも存続はできると思う。ただ、こちらも厳密にセレクトショップというカテゴリーで生き残るところは、限られてくるというのが筆者の見解である。

大手は生き残りをかけてSPAに向っているが、それもこれからは頭打ちになっていく。中小はセレクトショップのフォーマットは残せるが、顧客の高齢化や服離れで生き残るところはこちらも少数派になる。生き残るためには、大手同様に商品やサービスのバリエーションを広げるなどの経営手法はとっていくはずだ。

売る側の都合で真の意味とはほど遠く、形骸化してしまったセレクトショップ。周辺では「モノを売るな、体験を売れ」だの、「お客さまが欲しいのは体験」だのと、言われているが、じゃあそれでどれほどの売上げがあがるのか、損益分岐点をクリアしてペイするのか。

筆者が知っている大手セレクトショップでカフェを担当していた人は、その後のポストは無く飼い殺しの状態と聞く。セレクトショップは小売業であって、文化事業ではない。売れなければ、多くのスタッフや業者が路頭に迷うし、これから潰れていくショップも枚挙に暇がないだろう。

さらに現在では商品仕入れて売るという商業発生の時代から続く仕組みさえ変わっている。セレクトショップの行く末は、前途多難であることだけは確かである。

釼 英雄