アナログフィルターJournal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)編集長

パリオートクチュールコレからの凱旋公演的インスタレーション

パリオートクチュールコレからの凱旋公演的インスタレーションの画像

夏の訪れを感じる7月4日、パリ8区、ミロムニルにあるトテム(totem)ショールーム前で、ある人と待ち合わせしていた。その人は、杉野学園出版部が季刊で発行する『ファッション力(FASHION-RYOKU)』を創刊し、ついこの3月に退任した織田晃さんだ。後任編集長を務めることとなった僕としては、繊研新聞社パリ支局長時代、2010年以来のオートクチュールで、メンズウイークの疲れも残る中、後半戦へと突入していた。

トテムでは、前日に初めてのショーを終えた「ユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)」のデザイナー、中里唯馬さんをインタビュー。若いにも関わらず、積極果敢にサンディカにアプローチし、オンスケジュールを勝ち取ったガッツのあるデザイナーだ。

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この写真は、中里さんをインタビューする、在りし日の織田さんの後ろ姿で、取材中に手持ちのiPhoneで何気なく撮った1枚。右手には織田さんの奥様でファッションジャーナリストの萩原輝美さん、左側にはコレクションピースが並び、机上には3Dプリンターで作ったスケルトンの腕が並んでいた。そして、これが織田さんとの最後の仕事になった。この10月のパリコレ中に訃報に接した。繊研新聞のファッション記者として長きに渡り、欧州コレクションを取材してきた織田さんの命日が、パリコレ会期中というのは、「いかにも彼らしい」と多くの人が思うに違いない。彼が話すコレクション・トレンドセミナーには、他の誰も指摘し得ない視点がたくさん盛り込まれていた。毎回、確実に社会情勢との絡みで分析してくれる。20代の頃、その視点からの話を聴くのが楽しみだったことを思い出す。

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さて、パレ・ド・トーキョーで行われたオートクチュールのショーの際には、無機質なコンクリート打ちっ放しの薄暗いスロープをゆっくりとモデルたちが下りてくる演出だったユイマナカザト。

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ひとつだけ気掛かりだったのは、写真のような高い特殊なソールのシューズで、モデルが滑らないかとヒヤヒヤしながら観たこと。何事もなく、無事に終わって良かった。

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そして今回の東京での凱旋インスタレーションは、ホログラムの半円柱形バックパネルを配して、見事なまでにコレクションピースが映り込み、シンクロした未来的で美しいフレームワークができたと思う。そして、とってもゴージャスだった。

>>YUIMA NAKAZATO 2017年春夏コレクション

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その後、渋谷・神南へ移動。Club Camelotで見せた「ユキヒーロープロレス(YUKIHERO PRO-WRESTLING)」はアイドルグループ「夢みるアドレセンス」との踊りあり、歌あり、小芝居ありの楽しいステージで、カラフルなモノグラムや全面グラフィックのアイテムを並べ、元気なコレクションを披露した。

>>YUKIHERO PRO-WRESTLING × YUMEMIRU ADOLESCENCE 2017年春夏コレクション

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クラブを出たところで、方向音痴の同業女史に捕まり、案内がてら、すぐ近くの「アーバンリサーチ神南店」へ。店では澄んだ声のアシッドフォーク男性デュオ「ヤン・アンド・ナオミ(jan & naomi)」のライブが開かれていた。クリアなサウンドと透明感のあるボーカルで魅了する。フジロックに出演しているが、肝腎のアーバンリサーチ主催「タイニー・ガーデン・フェスティバル(TINY GARDEN FESTIVAL)」には出ていないそうだ。かなり曲の方向性もチルアウト的に合いそうなので、次回は是非ともオファーしてほしいものだ。

そんなこんなで、織田さんとの思い出がよみがえり、少しだけ落ち込んでしまったのだが、その後の2つの出来事が、また少しだけテンションを上げてくれ、癒してくれたことに感謝しつつ、渋谷の街をあとにした。明日は「ジャパン・レザー・アワード」審査員のお務めもあり、ショーをあまり見る事ができないが、気を抜かずに最後の原稿を書き上げよう。

【「ジュルナル・クボッチ」編集長久保雅裕の東コレコラム】
ファッションウイークが本物の祭りだとすれば...
色と配置の妙は、日本人のDNAから
自由な表現や主張と「おもてなし」のバランス
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久保雅裕