Changefashion.net 代表兼編集長

無口で、不愛想なデザイナーがショーに込めた想い

無口で、不愛想なデザイナーがショーに込めた想いの画像

2006S/Sに「ベッドサイドドラマ(bedsidedrama)」がスタートしてから10周年を迎え、パーティーの代わりにブランド初のショー形式でコレクションを発表した。テーマは、原点回帰の意味も込めて、"DAYDREAMBELIEVER"、様々な夢をインスピレーションソースに夢と現実の境界にいるようなショーを表現した。

bedsidedramaというブランドはSTOFのデザイナーでもある谷田浩とアーティストさとうかよの出会いからスタート。2010年にブランドを卒業するまで約半分の歴史を彼女が共にデザイナーとして支えてきました。アーティストさとうかよは夢でみたものを記憶の中に強く残る素材で作品を制作。人間の持つ「感情の二面性」を揺るがすようなものを、動物というモチーフにより比喩的に具現化してきました。bedsidedramaを離れたのちも自身のアート作品を制作する傍ら、「ストフ(STOF)」「ジュヴェナイル ホール ロールコール(JUVENILE HALL ROLLCALL)」 「イェーライト(YEAH RIGHT!!)」「kanvas」「ジュン オカモト(JUN OKAMOTO)」など親交のある友人のファッションデザイナー達とコラボレーションしてきました。

実は僕がbedsidedramaを知ったのはかよさんの紹介からでした。アーティストとしてのさとうかよに興味を持ち、インタビューしたことをきっかけに仲良くなり、bedsidedramaの展示会にも伺うようになりました。かよさんは無邪気でいつも笑顔で、人懐っこくて、思ったことをはっきりと口にする、そんな人間でした。一方の谷田さんは無口で、不愛想で、何を考えてるかわからなくて、、、普通に話が出来るようになるまで時間がかかったような気がします。FASHIONSNAPにもニュースになっていますがそんな友人でもあるかよさんが長い闘病生活の末、永眠したのは昨年の7月のことでした。一報を聞いた時は言葉ではとても言い表せないような気持になりました。

bedsidedramaのショーのフィナーレで流れた "DAYDREAM BELIEVER"の曲を聴いた時、ふと彼女のことを思い出しました。その意図を知りたくショー後に電話で谷田さんに今日のテーマってどういう意味だったの?と聞いたら「そのテーマの通りだよ。」といつも通りのそっけない返事。言葉足らずというか、あまり思っていることを口にしたくない人間というか、どんなことを聞いても基本的にはあまり饒舌には答えてくれない彼らしい言葉が返ってきました。さとうかよの名前を出してもう一度訊ねてみたら、「フィナーレで流した曲の通り。10周年を記念したショーをする上でさとうかよ抜きには語れない。でもそれはあえて自分の口では言いたくない」。ショーではかよさんが生前bedsidedramaの為に描いたもので一つだけ使わずに残っていたグラフィックを使用したピースも登場しています。ルックブックの中でもさとうかよさんが作ったアートピースが使われている一方、アーティスト"さとうかよ"がデザイナーであったらお願いしていなかったであろうアーティストたちとも今回のショーでは積極的にコラボレーションしたそうです。

ここからは谷田さんが言ったことではないのですが、僕はかよさんに捧げたというコレクションではなくbedsidedrama、そしてSTOFの一員としてかよさんは今も生き続けているんだよって言うことを言いたかったんじゃないかなって。それは捧げるという意味ではなくこれからもともに歩んでいくということの意思表示なんじゃないかなって勝手に思っています。無口であまり本心を語ろうとしない谷田さんなのでたとえ正解だとしても正解だとも言わないと思いますけど。

今回のショーが客観的に見て、ショーとして素晴らしいものだったのかどうか僕にはわかりません。でも少なくとも自分に取って凄く想い出に残るショーであったことは間違いありません。谷田さんには「素敵な演出でかよさんのことを思い出させてくれてありがとうございました。そしてこれからもさとうかよのことをよろしくお願いします。」と言いたいです。

谷田浩もさとうかよもきっと"DAYDREAM BELIEVER"なんだろうなと思います。そして今それを支えているのが西本さんなのかなと。

あまりにプライベートな感じになりましたので少しだけ普通の質問もしてみました。ファッションショーは今後も継続してやっていきたいと思いますか?「ファッションショーをやる費用対効果が自分たちのブランドにとってあるとは思えないから継続してやることはないと思う。でも自分もこういうことをするのは嫌いではないからまたそのうちやる時がくるかもしれない。」どこまでも谷田さんらしい答えだなって。

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滝田 雅樹