㈱三越伊勢丹 婦人第一商品部 バイヤー

若手から10周年デザイナーまで、バイヤー視点で綴る東京コレクション最終日

若手から10周年デザイナーまで、バイヤー視点で綴る東京コレクション最終日の画像

 今回から名称が「Amazon Fashion Week TOKYO」となった東京コレクション。 今シーズンもFASHIONSNAPさんにて、公式スケジュール最終日10月22日(土)のコレクションレポートを書かせて頂くこととなりました。どうぞ宜しくお願い致します。

 バイヤーという役職は文字通り役割としてはバイイング(買付け作業)ですが、私の場合はTOKYO解放区という場所の企画立案をやっていることもあって、勿論バイイングもしますが、どちらかというと意味合いはディレクター・キュレーターに近い感覚かもしれません。

商品側の出来事をすべて行うのがバイヤー、つまり商品担当側の仕事です。

とはいえ商品だけを見るわけではなく、私の場合はその人自身の"ひととなり"を大事に考えています。

確かに「モノ」としての服を売ってはいますが、私のなかではそれだけではだめで、お客さまには服のその先にある、想いの部分や心の部分も含めて多くの人に伝えたいと思うのです。

自分があることはとてもとても大事なことだし、芯がある・思いがあることにはなりますが、私たちは少なからず着るための服を作り・販売し、そしてお客さまの手にお届けし、その方達がいてくださるから素敵な服が届けられている以上、独りよがりではそれぞれの役割にならないと思っています。

この日は「レナ ルメルスキー(Lena Lumelsky)」、「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」、「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」、「プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)」、そして最後に「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」へ。 前置きが長くなりましたが、最終日にショーを拝見したデザイナーさんはどの方もどんな人となりなのかをよく知るデザイナーさん達。 下らないこともよく話をしますが、厳しいこともはっきり言わせて頂く仲という意味合いです。

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「KEISUKEYOSHIDA」は展示会で先にサンプルを拝見してからショーを拝見しました。展示会で先に見たときは大人っぽくなったのが少しよくなった印象で、ただ今までのブランドファンの方が戸惑ったり急に買うものがなくなったりしないようにしたほうがいいなと感じました(それは裏毛、ニットなどの素材感でフォローしているようでしたが) 。今後支持してくださるお客さまのイメージは、若い頃はやんちゃをしていたけれど今はある程度の地位・役職になり自由なお金を持っているファッションが大好きなやんちゃな大人ですね笑。ファッション業界によくいそうな。

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「AKIKOAOKI」は、個人的には彼女が描く女性像の中に潜んでいるアンニュイな感じ、少し官能的でもあり気の強い芯も感じるこの世界観が好きです。 シェイプやシルエットが美しくなり、1シーズンのなかでのまとまり感が出てきていました。ITS2016ファイナリスト・時澤ちなみさんのスティックジュエリーとのコラボも相性のよい提案でとても素敵でした。

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「PLASTICTOKYO」は、前回よりもアイテム・スタイリング・素材の提案力が良くなっていて、スカーフ使いやツイード素材により、単なるストリート系などとは言わせないという印象でした。スイーツ男子・今崎さんの今後の発展が楽しみです。

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そして最後に、坂部さんとジェンファンの「MIKIOSAKABE」へ。 LOOKの体数に圧倒、これまでにはないほどにモデルが飽きることなく続々と出てきます。そして、様々な時代のキーとなるものが混ざり合い、"ごちゃまぜ"になっていました。昭和のアイドル風にブローされたヘアやシンディー・ローパーを思わせるメイクアップ、ツィッギーみたいな超マイクロミニ、バブル時代のボディコンなど、時代を感じさせながらも新しい形にアップデートされています。

私の中で坂部さんは、デザイナーでもあるけれど、社会学者や哲学者のような印象です。現象・事象・地域性・思想・嗜好など、ファッションを通して人間の根源を探っているかのように感じています。

東京カルチャーをけん引する存在でしたが、先シーズンからはモードの筋へと舵を切ったような印象です。そして今シーズンは、ブランドとして、ファッションとして、新しい何かを構築していこうとしている気概みたいなものを感じました。 いろいろ言われると思いますが(笑)、思うところを信じて進んで行って頂きたいです。

MIKIOSAKABEは今年で10周年。ショーのあと、WALLさんで開催した10周年記念PARTYの店頭イベントへ伺いました。

坂部さんもジェンファンも主役だし、挨拶すらままならない感じだったので、声をかけずに帰ろうとしたその時、私の肩を叩く人がいました。ジェンファンでした。

ジェンファンが「ありがとう」と言ってくれました。私のほうこそ「素敵なファッションをありがとう」と思い、少し涙が出てきました。膨大なルック数だったけれどよく頑張ったねと声をかけたら「死ぬかと思ったー」といつもの変顔とともにコメント(笑)。

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「またね」と言いながら握り合ったジェンファンの手があたたかく柔らかくて、3年前のTOKYO解放区のオープニングイベント(写真上)の準備最中に行ったコレクション準備を思い出しました。イベントもお互いやったことないことだらけで死ぬ思いで作り上げたあの時に交わした言葉。

「ショーの準備大変なとき、てらさわの顔思い出しながら作ったよ」。

こんなことを言ってくれるデザイナーさんの人となりも全て含めて、私はお客さまに伝えていきたいとより強く思った素敵なコレクション最終日になりました。