新しい生活様式はもはや日常へと移行し、それに伴い企業の舵取りも大きく変化している。FASHIONSNAPは経営展望を聞く「トップに聞く 2022」を今年も敢行。第12回は、「ロンハーマン」や「シェイク シャック」を手掛けるサザビーリーグの角田良太社長。「半歩先のライフスタイル」としてアパレルから飲食まで幅広く提案する同社は2022年に創業50周年を迎える。コロナ禍が続き先行きが不透明だが、その中で仕掛ける「半歩先」のビジネスを聞いた。
■角田良太
1969年生まれ。1992年にサザビー(現サザビーリーグ)に入社後、「スターバックス コーヒー(STARBUCKS COFFEE)」の日本での立ち上げに携わり、日本1号店の店長を務めた。2009年にサザビーリーグに帰任し、社長室長執行役員などを務め、2010年に取締役に就任。その後、アイビーカンパニー カンパニープレジデントなどを兼任し、2016年4月から現職。
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「飲食事業縮小」の考えはない
―2021年はどんな年でしたか?
コロナのパンデミックを経て、仕入れ消化率を含む財務基盤から、DX、SDGs、新規事業まで、今までの経営のやり方や捉え方を変えないといけないと強く感じました。我々はいつも「半歩先のライフスタイル」を常に提案し続けることを一つの目的にしていますが、2021年は「新たな半歩先を踏み出す一年」になったと思っています。
―コロナ禍はやはり飲食事業へのダメージが大きいですか?
アパレル、服飾雑貨、生活雑貨とさまざまな事業を展開していますが、一番影響を受けたのはやはり飲食ですね。「キハチ(KIHACHI)」では夜の需要が戻ってきているものの、忘年会や新年会などのビジネスを含む大人数の外食需要はなかなか戻らないですね。ただ、カフェ事業は緊急事態宣言の解除後に回復しましたし、ハンバーガーレストラン「シェイク シャック(Shake Shack)」のようにデリバリーを始めたことで売り上げを伸ばせた事業もあります。
―コロナ収束の見通しが未だにつかず、飲食事業は厳しい状況が続きそうです。
もちろん、ある程度の見通しをつけながら経営していますが、第6波の到来も想定していたよりも早かったですから、短期的な部分の方が見えないですね。長期的には「飲食だから縮小する」という考えはなく、例えばシェイク シャックやカフェ事業はまだ出店の余地があると思っています。カフェに関しては今後需要が必ず戻ってくるはずですし。
―コロナの感染拡大に伴うサプライチェーンの混乱に各社苦戦していますが、マイナス影響は?
海外から輸入しているアパレルやジュエリーでは若干、影響があったことはありましたが、大きな影響を出すまでには及ばなかったのは幸いでしたね。仕入れ量としても大きくはなかったですし、納期が遅れてしまうことによるチャンスロスは特にありませんでした。
―2021年は新疆綿の労働環境をめぐる人権問題が取り沙汰されました。
我々もそれぞれのブランドにおいてできる限りトレーサビリティを明確にするように働きかけをしてきたので、自分たちが把握している部分では取り扱わないようにはしています。ただ正直、仕入れ品となるとトレーサビリティをすべて把握しているわけではないので、特定の材料を使っていないと言い切れるところまでは残念ながらいっていないですね。
―トレーサビリティを担保している取引先は数としては多い?
40以上のブランドをやっているので具体的には申し上げられないですが、肌感としては増えてきているように感じています。みなさんやり方を変えてかないといけないという認識は徐々に広まっているとは思いますし、広がっていかないと生き残っていけないですよね。
―苦境の中でも、2021年で最も手応えがあった取り組みは?
ブランドによって異なりますね。ただ、いずれにしても各ブランドで取り組んだことが、下期の結果に繋がっていると思っていて。「ロンハーマン(Ron Herman)」はまさにセールをやめていくフェーズに入ろうとしていますが、それ自体がプロパー消化率にもつながってきますから。なので、何か1つ大きな取り組みというのは正直ありません。
会社全体のことで言うと、経営陣のキャッシュに対する意識が高まりましたし、教育やコミュニケーションなど「人」の大事さについてもみんなが意識したんじゃないかな。我々の事業はすべてピープルビジネスですから、モチベーションを高く保ってチャレンジできる環境を整えることで会社も成長します。そのために人事制度や教育制度は常に見直しをかけていますし、ジョブローテーションなどでいろんな経験をしてもらうことの重要性が浸透してきたかなと思いますね。
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