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【インタビュー】マガシーク ドコモ傘下で次の成長へ

【インタビュー】マガシーク ドコモ傘下で次の成長への画像

 ファッション通販サイトを運営するマガシークは、競合ひしめく衣料品ネット販売市場でのシェア拡大に向け、NTTドコモの傘下に入ることを決めた。同市場では大手資本の参入が相次いでおり、"ネットで服を買ったことのない層"をどれだけ取り込めるかは、今後の勢力図に大きく影響しそうだ。3月下旬までにドコモによるTOBを受けて新たな一歩を踏み出すマガシークの現状や、今後の取り組みなどについて見ていく。


 NTTドコモによるマガシーク株のTOBが発表された1月30日、業界関係者から「またか」という声が多く聞かれた。

 昨今、ファッション通販 モールの買収・子会社化の動きは活発で、ワールドによるファッションウォーカーの買収や楽天のスタイライフの子会社化、高島屋によるセレクトスクエアの連 結子会社化など業界再編が加速。巨大モールのアマゾンもファッションカテゴリーを強化しており、「競争の土俵が大きくなっている」(井上直也社長)ことは 間違いない。

 マガシークとしても、売上高100億円の大台を目前に控え、BtoB事業が主体の伊藤忠商事だけが親会社でいいのかという議論が数年前から出始めていたという。

 そんな中、スマホを使ったネット販売事業に乗り出したドコモが、ファッション分野のパートナーとして触手を伸ばしたのがマガシークだった。

 ドコモの運営する「dショッピング」は自社で在庫を持って販売するのではなく、提携する通販会社経由で商品を届けるため、物流体制などがしっかりした企業と連携する必要があった。

 マガシークにとっては、消費者との接点が多いドコモと組むことでネット販売の初心者を効率的に取り込めると判断した。

 TOBの成立後、マガシークは主力の「マガシーク」とアウトレット商品を扱う「アウトレットピーク」に続く第3のサイトをドコモと立ち上げることになる。

 「dショッピング」は日用品などが多いため、ファッションは違った見せ方を模索しているほか、新サイトには「マガシーク」の名前を出して認知度向上につなげる。

 業界関係者からは、キャリアに制限されたECのニーズ自体に疑問を持つ声も出ているが「ファッションEC市場は成熟期の少し手前にあり、各社が最後の"のびしろ"をとりに行っている」(井上社長)とし、ドコモと連携して新規客の開拓を進め、規模拡大を狙う。

通期は下方修正

 もちろん、ドコモの傘下入りでマガシークの成長が約束されたわけではない。直近の第3四半期(4~12月)は減収減益で、通期の売上高は期初計画を20億円近く下回る約96億円(前年比1・0%減)、営業損失約5億円に下方修正している。

 競争の激化といった外部要因に加えて、今期はテレビCMを夏と冬に打ったものの、放映期間だけでは投資額を回収しきれなかったほか、昨年10月から2月中旬にかけて2段階で倉庫を移転したが、既存拠点と新センターを二重で借りた期間が長引いたことで移転費用が膨らんだ。

 昨年9月にはシステムリニューアルを実施。刷新前後は残業などで人件費がかさんだことに加え、通販サイトのリニューアル後、売り上げに効果が表れるまでに時間がかかったことも影響した。

 マガシークは赤文字系雑誌との連携が強く、従来のサイトでは「Cancam」などの大型バナーが前面に出ていたため、男性客や少し年齢の高い女性客などはせっかくサイトを訪れても、赤文字系のバナーを見て離脱してしまうことがあった。

 そのため、従来は弱かった層の獲得や、中長期的に見て、センスの高いブランドを誘致するにはサイトの見せ方を変える必要があったようだ。

 新サイトでは商品の見せ方を一新。顧客の行動履歴から好みのブランド、商品がトップページに表示されるようにした。

 これまで大バナーによる集客力が高かった赤文字系やエレガンス系のブランドからは新サイトの見せ方に否定的な意見もあるが、サイト刷新から3~4カ月経ち、ようやくユニークユーザーやページビューが伸び、冬のセール期からは刷新効果が売り上げ面でも出てきているようだ。

販促強化を継続

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 マガシークは今期、広告宣伝費を前年より4割以上増やして認知度向上を目指している。昨年の夏と今冬に2回、テレビCMを放映。とくに冬のCMは、夏の失敗を生かしたことで会員獲得数が前年のセール期と比べて約2倍になった。

 昨夏は3週間にわたってCMを打ったが、冬のセールは年末年始で在宅率が高いこともあり、夏とほぼ同じ本数を1週間に集中して放映した。また、夏のCMでは1回だった「マガシーク」というフレーズを冬は3回入れたことで、キーワード検索が増えたようだ。

 同社によると、「マガシーク」の認知度は昨年初めの7%強に対し、冬のCM放映後は、放映地域で約30%、未放映地域でも約16%に上昇。「認知度が60%くらいになるまでテレビCMは有効」(井上社長)とし、引き続き宣伝費を投下する。

  一方、リアルとの接点を強化。O2Oの経験を積みながら、新規会員の獲得を狙っている。例えば、昨年10月に開催されたファッション誌「GLOW」の読者 イベントや、12月にホリプロなどが開いた40~50代女性向けのイベント「THE MADAM SHOW」に参加し、ファッションショーで披露された コーディネートをネットで販売する試みに着手した。

 今年1月には「アウトレットピーク」の期間限定店を新潟市内の「ラフォーレ原宿・新潟」に構え、その場で新規会員登録した来店客には代金を10%割り引くキャンペーンを展開した。

 ただ、今期の新規客の獲得ペースは、「同じ経費をかけても前年より効率が落ちている」(井上社長)とし、苦戦している。

  実際、今期の当初計画で売上高115億円とした根拠は「アクティブ会員40万人×客単価1万3100円×平均年間購入回数2・2回」を積み上げたものだ が、最近のアクティブ会員比率(約20%)を考慮すると早い段階で会員数200万人を目指す必要があるが、昨年12月末時点で約168万人、アクティブ会 員数で32万人強にとどまっている。

 現状、ネットで服を購入することに慣れている消費者が選ぶ売り場は固まってきていることもあり、マガシークとしては、ドコモが持つ顧客基盤に向けて効率的な会員獲得や認知度拡大につながる取り組みが不可欠で、とりわけEC初心者の開拓が急務と言えそうだ。

中国展開を強化


  楽天やヤフーに続き、ライバルのゾゾも1月末で中国サイトを閉鎖するなど日本企業が中国のネット販売市場で苦汁をなめる中、マガシークは昨年11月に中国 のヴァンクル社と組んで同社運営の仮想モール「V+(ヴイプラス)」に出店。単価は安いもののメンズを中心に売れているという。

 流入数は想定を下回るがコンバージョン率は高く、全体としては想定範囲内の立ち上がりとなった。現状、三十数ブランドを扱っており、3月をメドにブランドを増やしたい意向で、来年度中には単月黒字化を目指す。

 黒字化に向けては、「V+」以外のサイトに売り場を広げることも検討している。品ぞろえの面ではまず日系アパレルの商品をしっかり売る。セール品の販売比率が高いものの、「いまは顧客を増やすステージ」(井上社長)として割り切る。

 今後1~2年をかけて中国のECでノウハウを得た後は、「現地の数十億円規模の衣料品ネット販売事業者を買収するなどの選択肢もあり得る」(同)ほか、将来的には香港や台湾などへの横展開も検討する。

井上社長に聞く、TOB賛同の背景は? 
新規客獲得の切り札に、「ドコモもECに本気」

 NTTドコモによるTOBに賛同し、3月下旬には同社の傘下に入る見通しとなったマガシーク。出資を受け入れた背景と、携帯キャリアと組んだネット販売の方向性についてマガシークの井上直也社長に聞いた。(聞き手は本紙記者・神崎郁夫)

――ドコモによるTOBが発表された。

 「親会社の伊藤忠商事はBtoBが強い会社で、消費者の顧客基盤はない。これまでに伊藤忠の持つアパレルとのネットワークやロジスティクスの強みは十二分に活用した。ただ、アマゾンさんを含め、ファッションECの競争の土俵が大きくなってきている中で、伊藤忠と当社も良い提携があればやろうという議論が2~3年前からあった」

――TOBに賛同した理由は。

 「ドコモさんから、かなり本気でECをやりたいという話があった。伊藤忠はビジネスが多岐にわたり、社長が『ECをやるぞ』という会社ではない。ドコモさんは今後、ECにも本腰を入れると言っており、会社を挙げて当社を応援してくれるという意味で良いパートナーだと思った。6000万人という顧客基盤もあり、当社が飛躍するための株主としてふさわしいと感じた」

――昨年夏から資本提携の話が進んでいた。

 「元々は資本提携とは関係なく、ドコモさんが『dショッピング』の中でファッションを始める際に当社と組みたいという話があった。ただ、『dショッピング』で売れた商品の手数料などを考えると、折り合いのつけどころが難しかったというか、当社としても本気で『dショッピング』に商品投入できるかを考えたときに、資本提携して一体化すれば問題もクリアになると判断した」

――伊藤忠が25%の株を保有し続ける。

 「ドコモさんとしても、ネットワークや人脈、商品調達力などの面で伊藤忠の強みを引き続き発揮してもらいたいと考えているのだろう」

――TOB成立後のサイト運営については。

 「当社が運営する『マガシーク』と『アウトレットピーク』の両サイトはもちろんこれまで通りで、第3のサイトとしてドコモさんと新サイトを立ち上げる計画だ」

――『dショッピング』内にファッションカテゴリーを開設するのか。

 「現状の『dショッピング』は日用品や飲料などが多く、その並びでファッション商材を売るのは難しい。ファッションは違った見せ方をしようという議論が始まったところだ」

――スタイライフはKDDIと「ブランドガーデン」を共同運営するが、自社サイトの周知につながっていない。

 「われわれの場合は、ダブルネームのサイトを立ち上げる予定だ。『マガシーク』という名前が出せる点は、資本提携の話が出る前から提案されていた」

――ドコモに一番期待することは。

 「いまの顧客層からユーザーを広げられることが大きい。成長が見込まれるファッションECにあって、当社も縮小均衡に入るタイミングではなく、ブランド認知を高めるために広告宣伝を打ち、送料無料などのサービス面も拡充する必要がある。ドコモさんが持つ顧客に向け、効率的な会員獲得や認知拡大につながると期待している」

――ドコモのプロモーションにひっぱられることも予想されるが。

 「『マガシーク』というブランドを大事にするということでは一致しているし、当社が『マガシーク』サイト自体のブランディングは今まで通り手がけたい」

――「dショッピング」はこれまでに150万人の訪問者があった。

 「ドコモさんはECのライトユーザーをまず囲い込むという戦略のようなので、コアのリピーターは『マガシーク』で買ってもらいたいし、もう少し裾野を広げたところが、ドコモさんと組んだ"のびしろ"の部分になる。単価は多少低くても、ネットで初めて服を買ってもらい、徐々にヘビーユーザーになってもらえればいい」

――ドコモ傘下の通販企業との連携は。

 「いまは具体的に何もないが、兄弟関係に当たる会社とは今後、情報交換して一緒にできることはやっていきたい」

――キャリアが運営するサイトの設備投資額は大きくなりがちだ。

 「今回のシステム投資はドコモさんが行うことになるだろう。新サイトも『dショッピング』の横展開のような形で構築するわけで、当社の投資負担はあまりない」

――ファッションECにおけるM&Aの流れをどう見ている。

 「それだけ市場が伸びそうだということで、注目を集めているのは悪いことではない。大手が参入し、各社の体力がある分、いろいろな取り組みが出てきてトータルとして利用者は増えていくだろうし、競合が宣伝をしてくれれば、比較として『マガシーク』への来訪者も増えるだろう」

――サービス競争が過熱気味だ。

 「やり過ぎはまずいが、マーケットが成熟してくればサービス競争も落ち着いてくる。いま、ファッションEC市場は成熟期の少し手前にあり、各社が"のびしろ"をとりに行っている。当社としても短期的な利益よりポジショニングを重視している。今まで、あまりにも平和な時代が続いていただけだ」