繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー

服飾専門学生の「よく買うブランド」ランキングに見る危機

先日、6月20日繊研プラスに掲載されたアンケート結果を見て驚いた。


服飾系専門学校生1601人を対象としたアンケートである。
「よく買うブランド」という項目に登場したブランドを見てもらいたい。

http://www.senken.co.jp/news/fashionstudent-favoritebrand-senkenshirabe/

1位ユニクロ
2位ZARA
3位H&M
4位アースミュージック&エコロジー
5位ジーユー
6位ローリーズファーム
7位フォーエバー21、アクシーズファム
9位ウィゴー
10位ジーナシス、ニコアンド、マウジー

となっている。

1位から9位まですべて低価格SPAである。
10位もマウジーが同率で入っている以外は2つともアダストリアホールディングの低価格SPAである。

ファッション業界人は驚かれたのではないか。

もちろん「よく買うブランド」と「欲しいと思っているブランド」は異なる。
〇〇は欲しいけど高いからユニクロで我慢しておこうということは普通にある。

そういう専門学校生も相当数いたに違いないと推測する。

若者層の就職先、アルバイト先がなかったため、可処分所得が減少したせいもあるだろう。
しかし、20年前、10年前の専門学校生の中には、少ないアルバイト代を貯めて高額なデザイナーズブランドを買うという人もちょくちょく見かけた。

生活を切り詰めてまで不相応な高額ブランドを買うという行為の良し悪しは当然ある。
けれどもファッション好きが高じて専門学校へ進学したという生徒らしいといえば生徒らしさがある。

このラインナップだとそこら辺の一般人と何ら変わらない。


こういうブランドのみを愛用した人が、今後、企業に入ってデザイナーになったり、独立してブランドを立ち上げたり、バイヤーになったりするわけである。
彼らにとっては低価格SPAが基準となるわけだから、それ以上の物作りや企画案など出てくるはずがない。
バイヤーだって同じである。

シナジープランニングの坂口昌章さんが以前に「今の若いバイヤーは良い物に触れずに育ってきたから、良い物がわからない」ということをおっしゃったことがあるが、アンケート結果のラインナップを見ていると、そういう傾向がより深刻化しているといえる。

ちなみに先ほどの記事には3年前のランキングも掲載されている。
見比べてみよう

1位ユニクロ
2位ZARA
3位ローリーズファーム
4位ジーナシス
5位H&M

とここまでは今年とあまり変わらないが、

6位ヴィヴィアン・ウエストウッド、リミ・フゥ
9位コムデギャルソン
10位アクシーズファム

となっている。

高額ブランドが3つ(ヴィヴィアン、リミ・フゥ、ギャルソン)ランクインしている。
これがもっと以前だとさらに高額ブランドのランクインが増えているであろう。

坂口さんのご指摘よりもそういう事態はさらに進んでいるといえる。


さて、アパレル業界では低価格化はそろそろ底打ちとなり、価格は現状維持ないしは値上げへと向かおうとしている。

原料高、中国工場の人件費高騰、円安基調などを考慮するとこれ以上の値下げは難しい。
最悪でも現状維持、できれば値上げをしたいというのがアパレル各社の本音である。
中小・零細規模のブランドは、大手の低価格ブランドとの競合に見切りをつけ、高付加価値高価格路線を進もうとしている。

5年後、10年後はますますその動きが顕著になっていると考えられる。
(世界経済・日本経済が現在の延長線上にあると仮定した場合)


例えば、10年後だと先ほどのアンケートに答えた専門学校生は30歳前後になっている。
アパレルに入社しているならそろそろ中堅に差し掛かろうかという年代といえる。
零細企業だったら企画チーフくらいには抜擢されているかもしれない。
そうなったときに、高付加価値高価格路線への舵取りができるのだろうか。
本人の努力次第という側面もあるが、よほどさまざまなブランドに実際に触れてみないと、難しいのではないか。


単に危機を叫んでいても仕方がないので、アパレル業界のエライサンたちが真に人材育成を考えているなら、せめて専門学校生に対して何か手を打つべきではないだろうか。
彼らに良い物に触れさせる機会を増やすような取り組みを考える必要がある。


真に人材育成を考えているのならネ。

南 充浩