

■ロサンゼルス郊外にはニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が絶賛する食品スーパーがある。それが中南米系スーパーマーケットの「メルカド・ゴンザレス・バイ・ノースゲート・マーケット(Mercado Gonzalez by Northgate Market)」だ。
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NYTの料理評論家のテジャル・ラオ氏が1992年に公開されたディズニー・アニメーション映画『アラジン』の有名バラード曲"ホール・ニュー・ワールド(A Whole New World)"から「巨大なメキシコ系スーパーがオレンジ郡に"ホール・ニュー・シーン"をもたらしている(A Vast Mexican Market Has Become a Whole New Scene in Orange County)」と記述した。
ロサンゼルス郊外コストメサ地区に2023年11月にオープンした「地元密着型」ヒスパニック系の食品スーパーは、目の肥えたプロだけでなく、地域の生活者にとっても高く評価されている。
中南米系スーパーやエスニック系スーパーというフレームを外しても見てもメルカド・ゴンザレスは売り場のプレゼンテーションが素晴らしく、まさに「生きた売り場」でお客を圧倒している。
スーパーマーケット利用者の「生の声」は、レビューサイトのイェルプ(Yelp)でも知ることができる。
イェルプでメルカド・ゴンザレス(2300 Harbor Blvd, Costa Mesa, CA 92626)は767件のレビューがついており、5ツ星評価でなんと4.3ポイントの高評価になる。
5ツ星と評価した人は497人で全体の65%。4ツ星評価も130人(17%)もいて合わせれば82%にもなる。
驚くのはイェルプにアップロードされた店内等の画像数だ。なんとメルカド・ゴンザレスの店内画像や商品を写した画像は3,200枚にもなる。
イエルプではプロフィールに本名を記載し、積極的にレビューを投稿している、いわばプロのレビューワーをエリート(Elite)認定している。
メルカド・ゴンザレスにもエリート認定されたレビューワーが多数投稿しているのだ。
店内画像など10枚アップしたエリートレビューワーのクリスタルMは「ここはメキシコ市場のディズニーランドのようなものです」とし「店内は清潔でモダン、そして明るい色と美味しそうな食べ物で溢れています」と書いている。
同様に5ツ星と評価したエリートも「本格的な沢山のメキシコ料理が並び、素晴らしい味がいっぱいです。ここを歩いていると、まるで遊園地にいるような気分になります」と高評価だ。
なぜこれほどまでにメルカド・ゴンザレスはプロや生活者、さらにレビューワーからも高評価に映るのだろうか?
カフェやレストランが集まるメキシコシティのコヨアカン市場をモデルにしたメルカド・ゴンザレスは生鮮品の売り場の周囲にイートインスペースをもつデリやレストランが囲んでいるフードホールとなる。
このフードホールとは、広義としてショッピングセンター内にあるフードコートのことだ。
一般的にフードコートのテナントの多くがファストフードチェーンであるが、フードホールでは地元の素材や新鮮さにこだわったレストランや有名シェフがプロデュースするグルメ飲食店、人気フードトラックのベンダー等、コンセプトがはっきりした外食店がテナントになる。
メルカド・ゴンザレスはオーセンティック・メキシカンをコンセプトに本格的なメキシカン食にメキシカンバー、さらに日本食の寿司や韓国の食事さえフュージョンしたテナントも入っているのだ。
画期的なメキシカンフードホール・コンセプトが高い評価を得ている要因になっている。
メルカド・ゴンザレスを展開するノースゲート・ゴンザレス・マーケットは全米最大のメキシコ系スーパーマーケットチェーンの一つであり、南カリフォルニア全域に43店舗を展開している。
年間売上高は10億ドルを超えるも、家族経営の店でもある。新フォーマットのメルカド・ゴンザレスでは、ホールフーズ・マーケットや高額スーパーマーケットのエラワン・マーケットを真似ることはなかったのだ。
その代わりにノースゲートはパン屋や肉屋、トルティーヤなどメキシコの特産品を扱うフードサービス業を一つ屋根の下にまとめた7万平方フィート(1,960坪)の戦略的フォーマットとなった。
大人気のメルカド・ゴンザレスは問題も抱えている。人気がありすぎて特に週末、駐車場に車を停めるのも難儀なほどに大混雑するのだ。
デスティネーションストアを目指すならロサンゼルスに来た際、必ず見ておきたい食品スーパーとなる。
トップ画像:メルカド・ゴンザレス。"市場"をイメージさせる圧倒的なプレゼンテーションにエントランス近くにあるトルティア工場、五感に訴えかけるフードホール、さらにお客の多さにも感動する。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。現地の顧客の生の声を知るにはイエルプを参考にしています。不人気な店はレビューも低く、アップロードされる画像も少なくなります。逆に大人気なら5ツ星評価も必然的に高くなり、アップロードされる画像数も3桁になります。エントリー記事にあるメルカド・ゴンザレスと同じほぼ時期にオープンしたのがニューヨーク市マンハッタンにあるウェグマンズ・アスター・プレイス店。このウェグマンズは5ツ星評価で3.5ポイントと低く、レビュー数も93件と極端に少ないですね。画像数も930枚と3,000枚を超えるメルカド・ゴンザレスとは大きく水を開けられています。価格が高いし、欠品も多くて品揃えもイマイチで期待外れだったというのがレビューワーの感想。流通視察で参加者と一緒に行くと期待が大きいこともあり「...」という残念な気持ちになるようです。ちなみに食品スーパーのディズニーランドとも呼ばれたスチュー・レオナード最新店(昨年5月にオープン)の評価は4.1です。一方で日本人も虜にするのがメルカド・ゴンザレス。
売り場に入った時、一斉に足を止めて目が輝きます。まずは同店のインスタグラムを眺めて、LAのフードメディアのLa Eaterの記事をご覧になってください。スーパー関係者なら一度は見るべきお店です。
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