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ウォルマート、ブラックフライデーから「行列と熱気」が完全消滅 売場が静まり返った理由とは?

ブラックフライデー開店15分前のウォルマート。列に並んだのは私を含めてわずか30名──昨年よりさらに減り、静まり返った朝の光景が“主戦場はオンライン”であることを物語っていた。

ブラックフライデー開店15分前のウォルマート。列に並んだのは私を含めてわずか30名──昨年よりさらに減り、静まり返った朝の光景が“主戦場はオンライン”であることを物語っていた。

ブラックフライデー開店15分前のウォルマート。列に並んだのは私を含めてわずか30名──昨年よりさらに減り、静まり返った朝の光景が“主戦場はオンライン”であることを物語っていた。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

今年のブラックフライデーは、オンライン消費が過去最高を更新し、店舗はかつての熱狂を失いつつあるという“変化の節目”となった。

筆者は例年通り、近所のウォルマートで早朝視察を行ったが、その売場の空気は昨年とはまったく異なるものだった。

現場の変化は、データが示すオンラインシフトとAI台頭の流れを見事に裏付けるものとなった。

現場で感じた「ブラックフライデーの静寂」

ウォルマートのオープン15分前に到着すると、並んでいたのはわずか30名。

昨年の40名弱からさらに減り、行列用のフェンスもバリケードも設置されていない。6時の開店時でも40名強ほどで、昨年の100名弱と比べても明らかな減少である。

広い店内に入っても客はまばらで、家電売場の熱気は完全に影を潜めていた。

テレビの値引きも強烈で、43インチのビイソ製FHDスマートテレビが89ドル(約1万3,350円)という“破格”だったが、購入者の姿は昨年よりも少なかった。

そして、視察して最も驚いたのは、クリスマス装飾が売場から完全に消えていたことだ。

【昨年→今年】これほど変わるのかという売場の落差

▼ 昨年:ブラックフライデーらしい高揚感に満ちた売場

昨年はプライスカードにサンタ帽がかかり、巨大ツリーやボールオーナメントが天井から吊り下がり、売場全体に季節のワクワク感があふれていた。

▼ 今年:驚くほど質素で“平常モード”の売場

今年は装飾が完全に消え、イベント感ゼロ。ブラックフライデーの朝とは思えないほどの静けさが漂っていた。

記録的オンライン売上が示す「買い物の重心移動」

オンライン消費は今年、過去最高を叩き出した。

感謝祭当日のオンライン支出は64億ドル(約9,600億円)で前年比5%増。

ブラックフライデー当日のオンライン売上は117億~119億ドル(約1兆7,550億~1兆7,850億円)と予測され、単日として史上最高額を更新。

午後6時30分時点ですでに86億ドル(約1兆2,900億円)に達し、前年比9.4%増という強さである。

さらに「サイバーウィーク」全体(感謝祭~サイバーマンデー)の支出は437億ドル(約6兆5,550億円)と見込まれ、ホリデーシーズン全体の17.2%を占める。

サイバーマンデー単日でも142億ドル(約2兆1,300億円)が予測されており、オンライン最大のイベントであることを再確認する数字となった。

経済的逆風は確かに存在する。インフレに敏感な低・中所得層は支出を抑える傾向にある。

しかし、ここまでオンライン消費が伸びるのは、割引の深さと利便性によるもので、小売業者が在庫を躊躇なく切り崩している証拠でもある。

AIが購買行動を変える:「発見」から「購入」までを自動化

今年のブラックフライデーを語る上で、AIを外すことはできない。

AIアシスタント経由で小売サイトに訪れたトラフィックは、昨年比で725%増という驚異的数字を記録した。

AIを経由したユーザーは、他のユーザーに比べ購入完了率が54%高く、AIが「買い物の起点」として定着しつつあることを示している。

買い物客はAIを以下の用途で積極的に使用している。

・割引商品の探索

・スペック比較などの製品リサーチ

・パーソナライズされた推奨の取得

企業側もAI統合を急ぐ。オープンAIはチャットGPTに「ショッピングリサーチ機能」を追加し、ユーザーの質問に応じてパーソナライズされたバイヤーズガイドを作成するようになった。

すでに多くの消費者が「AIに選ばせる」という行為を当たり前にしており、買い物は“スマホファースト”から“AIファースト”へ移行しつつある。

モバイルが消費の核に

オンライン売上の58.6%はスマートフォン経由で発生し、51億ドル(約7,650億円)を構成した。BNPL(後払い)の利用も前年比11%増で、取引の82.4%がモバイル経由。

買い物は完全に スマホファースト・アプリファースト へ移行した。

結論:ブラックフライデーの未来は“手のひらの中”にある

店舗のブラックフライデーがかつての熱気を失ったのは寂しいが、これは時代の必然でもある。

今年のウォルマートの静けさは、「買い物はスマホで完結する時代」 が完全到来したことを象徴していた。

とはいえ、早朝の行列30名の中に今年も自分がいたと思うと、「もしかして、行列に並ぶのがブラックフライデー“最後のリアル体験”になるんじゃ…」などとふと思ってしまった。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

今年のブラックフライデーを振り返って強く感じたのは、「売場の空気がここまで変わるのか」という現実でした。

昨年のウォルマートは、プライスカードにサンタ帽がちょこんと乗り、巨大なツリーやオーナメントが天井から吊り下がり、イベントの高揚感にあふれていました。

しかし今年は一転、装飾らしい装飾がほとんど消え、売場は驚くほど静かで質素そのもの。

ブラックフライデーの朝にもかかわらず、家電売場でも人影がまばらで、“特別な日”という雰囲気はほとんど感じられませんでした。

こうした対比は、買い物の主戦場が完全にオンラインへ移行したことを如実に示しています。

いまや「スマホ片手に深夜のソファから買う」のが当たり前で、店舗で並んで買うという行動は過去の文化になりつつあります。

さらにアプリの利便性が圧倒的で、もはや“スマホファースト、アプリファースト”の流れは誰にも止められません。

AIによる商品検索や推奨も一般化し、消費者の買い物プロセスは劇的に進化しています。

その一方で、ブラックフライデー早朝の行列は私を含めて30名ほど。かつての熱気を思い出すと、なんとも言えないノスタルジーを感じる朝でした。

ただ、これだけオンライン時代が本格化すると、もしかしたら数年後には「行列に並ぶ体験」が“レトロ消費”として逆に価値が出る…なんて未来が来るかもしれませんね(笑)。

最終更新日:

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