サイバーウィークのオンライン支出が過去最高を更新、モバイルがオンライン購買の主戦場へ

かつて“戦場”だったウォルマートのブラックフライデーも今はこの静けさ。消費は店からスマホへ移動した結果、店頭は在庫だけが山積みになる。
Image by: 激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

かつて“戦場”だったウォルマートのブラックフライデーも今はこの静けさ。消費は店からスマホへ移動した結果、店頭は在庫だけが山積みになる。
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モバイルが支配したサイバーウィーク:感謝祭からサイバーマンデーまでの「記録更新」と「行動変容」
2025年のアメリカのホリデーショッピングシーズンは感謝祭からサイバーマンデーまでの5日間、いわゆるサイバーウィークにおいて、オンライン支出が過去最高を更新し、力強い立ち上がりを示した。
特筆すべきは、モバイルショッピングが完全に中心的なチャネルとして確立され、AIや後払い決済(BNPL)が購買行動を大きく変容させた点である。
過去最高を更新したサイバーウィークのオンライン支出
オンライン売上は期間合計で442億ドル(約6兆6300億円)に達し、前年比7.7%増となった。
最も取引が集中するサイバーマンデーのオンライン支出は142.5億ドル(約2兆1375億円)であり、史上最大のオンラインショッピングデーとなった。
ピーク時間帯である午後8時から10時には、毎分1600万ドル(約24億円)が消費されたとされ、消費者が夜間にスマートフォンを手に「最後の駆け込み購入」を行う姿が浮かび上がる。
他方、ブラックフライデーのオンライン支出は118億ドル(約1兆7700億円)で前年比9.1%増となり、成長率ではサイバーマンデーを上回った。
早期セールの一般化が後押しし、消費者は「セール開始直後に最も有利な取引を狙う」という行動へシフトしている。
感謝祭当日のオンライン支出も64億ドル(約9600億円)で過去最高となり、祝日の伝統的な家族時間においても、スマートフォンを片手に買い物が行われる新たな文化が根付いたことが示唆される。
モバイルがオンライン購買の「主戦場」へ
オンライン支出の記録的増加を牽引した最大の要因は、モバイルショッピングの定着である。サイバーマンデーではオンライン売上の57.5%がモバイル経由となり、その支出額は82億ドル(約1兆2300億円)で前年比8.0%増となった。
感謝祭ではモバイルシェアが初めて60%を突破し、61.6%に達した。
休日のくつろぎ時間にスマートフォンから即時に購入できる環境が、衝動買いを促進し、売上増に寄与したと推察される。
5年前の2020年にサイバーマンデーのモバイルシェアが41.4%であった点を踏まえると、今回の数字は購買行動の構造がいかに急速に変化したかを象徴する。
ホリデーシーズン累計(11月1日~12月1日)では、モバイルショッピングがオンライン売上の52.8%を占め、737億ドル(約11兆550億円)を計上した。
これにより、モバイルはもはや補完的チャネルではなく、主要なeコマースインターフェースとして確立されたと言える。
消費者調査が示すオンライン志向と倹約行動
調査会社ニューメレーター(Numerator)によると、買い物客の56%がサイバーウィークの購入を「すべて、もしくはほとんどオンライン」で完結させた。
実店舗中心は16%にとどまり、購買行動は完全にデジタル優位となった。
感謝祭からサイバーマンデーまでの買い物客総数は2億290万人で、2017年以降で最多となった。
消費者は外出するよりも、オンライン上で複数の小売業者間を横断して比較・購入する行動へ移行している。
インフレの影響も顕著で、64%が「物価上昇がホリデーショッピングに影響した」と回答した。
これを受け、消費者はセールやクーポンを積極的に探索し、ギフトの数を減らし、別の小売業者への乗り換えを進めるなど、節約と最大化を両立させる行動をとっている。
特に、感謝祭前に実施された早期セールは59%の買い物客が参加しており、その影響で「今週末の購買意欲が高まった」一方、「既に十分購入した」としてサイバーウィークの支出が抑制されたケースも存在する。
訪問先上位企業はアマゾン(87%)とウォルマート(65%)が突出し、ターゲットが続いた。
93%の買い物客は2つ以上の小売業者で購入しており、オンラインは「単一店舗集中型」から「探索型・分散型」へ変化している。
BNPLとAIがデジタル取引を加速
柔軟な支払い手段として人気を集める後払い決済(BNPL)は、サイバーマンデーに史上最高の10億3000万ドル(約1545億円)を計上し、初めて1日で10億ドルを突破した。
利用者の多くが、ホリデーシーズンの予算管理を分散化する意図を持っていると考えられる。
注目すべきはBNPL取引の79.4%がモバイル経由だった点である。
モバイルで検索し、そのままスマートフォン上で購入し、分割払いまで完了するというプロセスがシームレスに統合されたことが、支出の増加を後押しした。
さらに、生成AIを搭載したチャットサービスやブラウザが、商品発見や最適な取引検索のアシスタントとして普及しつつある。
サイバーマンデー当日の小売サイトへのAIトラフィックは前年比670%増、ホリデーシーズン累計では760%増となった。AIが購買意思決定の初期段階を支配し始めていることが明らかである。
ソーシャルメディアも売上チャネルとして存在感を増し、売上シェアは3.6%となり前年比56.5%増であった。
特に、動画やライブ配信が商品発見と購買誘導を結びつける役割を果たしている。
値引きが高額商品を押し上げ、消費者は「戦略的消費者」へ
記録的な値引きが提供された結果、消費者はエレクトロニクス、アパレル、家具といった高額商品を積極的に購入している。
シーズン累計では高額商品の「販売台数シェア」が19%増加した。
カテゴリー別ではエレクトロニクスが54%増、スポーツ用品が52%増、家電が41%増となり、消費者が「価格が適正に下がったタイミングで購入する」という合理性を備えた行動へと進化している。
2025年ホリデーシーズンの展望
サイバーウィークの結果を受け、2025年のホリデーシーズン全体(11月1日~12月31日)のオンライン支出は2534億ドル(約38兆100億円)に達し、前年比5.3%増となる見込みである。
この数字は、消費者がモバイルを軸に、BNPLやAIといったツールを駆使しながら、より早期に、より戦略的に値引きを追求する新しい購買行動を確立したことを明確に示している。
結論:購買の意思決定は「デジタルで完結」する時代へ
サイバーウィークの記録更新は、オンライン支出の増加以上に、購買行動の質的変化を示している。
消費者は、情報収集、比較、発見、決済までをモバイルとAIで完結させ、複数の小売業者を横断的に利用する。
小売業はもはや「店舗中心」でも「EC中心」でもなく、消費者のデジタル意思決定プロセス全体を最適化することが競争力の源泉となる。
そして消費者は「最も便利で柔軟な方法」を求め、例年より早く、戦略的に買い物を行う存在へと変化した。
この変化は、アメリカのホリデーシーズンだけではなく、世界中の小売市場に波及するテーマであり、2025年の重要なトレンドとなるだろう。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
今年のサイバーウィークについて、日本のニュースメディアを見ると「オンライン売上が過去最高」「アマゾンとウォルマートが好調」といった記事が並びますが、正直申し上げて、それは“半分しか伝えていない”報道だと感じます。
なぜなら、今回の最大の主役は「オンライン」ではなく、「スマートフォンを中心としたモバイル」であり、購買の主戦場が完全にスマホに移ったことこそが本丸だからです。
サイバーマンデーのオンライン支出のうち57.5%がスマホ経由、感謝祭に至っては61.6%を突破。
5年前に4割程度だったものが、今や「ほぼ6割」まで伸びたというのは、もはやeコマースというより「スマホコマース」と呼ぶべき世界です。
しかも、そのスマホの中でBNPLや生成AIが連携し、検索から決済までが一瞬に完結する。
これは、店舗に行って棚を眺めるのではなく、“手の中に棚とレジと値引き担当者が入っている状態”です。
ところが、日本の報道は「オンラインが伸びた」と総括してしまい、消費者行動の根本的な変化をほとんど説明していません。
まるで、映画のクライマックスで「主人公が勝った」とだけ言って、どう勝ったかは語らないようなものです。
テクノロジーが購買体験を再設計している現実を伝えなければ、読者は“過去のオンライン像”に留まったままになります。
とはいえ、スマホが主役だと報じると「自分も買い過ぎてる気がする…」と読者が焦るかもしれませんね。ちなみに私は、買い過ぎないようにスマホを机の奥に隠す努力をしています。でも、結局そこから引っ張り出して買い物してしまうので、努力の方向が間違っている気がします(笑)。
最終更新日:
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