ウォルマート、ドローン宅配拡大で4000万人にリーチ 社会インフラ化へ

テキサス州のウォルマート店舗駐車場に設置されたウイングのドローン離発着拠点。複数機体が同時に待機し、通常オペレーションとして稼働している様子が分かる。ドローン宅配がもはや実験ではなく、店舗物流の一部として組み込まれている現実を象徴する現場である。

テキサス州のウォルマート店舗駐車場に設置されたウイングのドローン離発着拠点。複数機体が同時に待機し、通常オペレーションとして稼働している様子が分かる。ドローン宅配がもはや実験ではなく、店舗物流の一部として組み込まれている現実を象徴する現場である。

テキサス州のウォルマート店舗駐車場に設置されたウイングのドローン離発着拠点。複数機体が同時に待機し、通常オペレーションとして稼働している様子が分かる。ドローン宅配がもはや実験ではなく、店舗物流の一部として組み込まれている現実を象徴する現場である。

ウォルマート、ドローン宅配を「実験」から「社会インフラ」へ引き上げる
ウォルマートがドローン宅配のアクセルを一気に踏み込んだ。これまでの実証実験フェーズは完全に終わり、全米規模での社会実装という新たな段階に突入したのだ。
アルファベット(Alphabet)傘下のウイング(Wing)との提携を大幅に拡大し、今後1年間でさらに150店舗にドローン宅配を導入する計画を発表した。
これにより、ドローン宅配がリーチできる潜在顧客数は、現在の200万人から一気に4,000万人へと跳ね上がる。
これは全米人口のおよそ10パーセントに相当し、単なる新サービスではなく、生活インフラの一部として成立する規模である。
主要メトロポリタンを一気にカバーする都市集中型展開
今回の拡大で対象となるのは、すでにサービスを展開しているダラス・フォートワース地域やアトランタに加え、ロサンゼルスにセントルイス、シンシナティ、マイアミといった主要メトロポリタンエリアである。
さらにヒューストンでは2026年1月15日からサービス開始が予定され、オーランド、タンパ、シャーロットといった成長都市も展開候補に含まれている。
ウォルマートの戦略は、全米に薄く広げるのではなく、都市圏ごとに複数店舗を集中配置するクラスター化によって配送密度と効率を最大化する点にある。
2027年までに270店舗以上での展開を目標としており、全米約4,600店舗のうちの一部とはいえ、人口密集地を押さえることで、実質的なインパクトは数字以上に大きい。
ドローンにとって距離よりも重要なのは発着拠点の密度であり、ウォルマートの店舗網はそのまま空の物流ハブとして機能する。
週3回利用するヘビーユーザーが示す「日常化」の証拠
この急拡大の背景には、既存地域での圧倒的な利用実績がある。
特に注目すべきは、上位25パーセントの顧客が週に3回もドローン宅配を利用しているという事実である。
過去6ヶ月間で配送件数は3倍に増加しており、ドローン宅配はもはや珍しい体験ではなく、買い物行動の選択肢の一つとして定着しつつある。
利用される商品も実に現実的だ。夕食に足りない卵、急ぎで必要な牛乳やトマト、アボカドといった生鮮品、さらには風邪薬や鎮痛剤、スマートフォンの充電器まで、緊急性と即時性が求められる商品が中心となっている。
特筆すべきは、卵を割らず、しかも熱いコーヒーをこぼさずに庭先へ届ける技術がすでに実用レベルに達している点であり、ここに至って初めてドローン宅配は日常用途として成立したといえる。
30分以内配送を支えるウイングの自律飛行技術
ウイングの最新ドローンは最大5ポンド(約2.27キログラム)の荷物を運搬でき、時速約100キロメートルで飛行し、往復12マイル(約19キロメートル)をカバーする。
店舗の駐車場に設置された専用スペースから自律飛行で発進し、顧客宅の上空でホバリングしながらテザーで荷物を静かに降ろす。着陸しないことで安全性とスピードを両立させている。
注文から到着までの所要時間は多くの場合30分以内であり、これは都市部における車両配送よりも安定した速さである。
料金については、ウォルマート・プラス会員は無料、非会員は1回19.99ドル(約3,000円)と設定されているが、ウイング・アプリ経由では期間限定で無料キャンペーンが行われている。
コスト構造がさらに改善されれば、無料配送の常態化も現実味を帯びてくるのだ。
淘汰が進んだ末に残った最適解としてのウイング
ウォルマートはこれまで、ドローンアップ(DroneUp)やジップライン(Zipline)など複数の事業者と提携しながら最適モデルを模索してきた。
しかしコスト構造や店舗オペレーションとの統合に課題が残り、2024年には主要パートナーであったドローンアップ(DroneUp)との提携を解消し、出資も引き揚げたとされる。
現在の主軸はウイングであり、店舗業務とシームレスに統合された運用モデルこそが拡張性の鍵となっている。
一方で、医療物流に強みを持つジップラインとの連携も維持しており、用途別に最適な技術を使い分ける姿勢が見て取れる。
実験段階を終え、経済合理性とスケーラビリティを重視するフェーズに入ったことは明らかである。
目視外飛行の規制緩和がもたらした構造転換
ドローン宅配を阻んできた最大の壁は規制であった。
操縦者の目視範囲内でしか飛行できない制約は、オペレーター人件費と拠点数を膨張させ、事業化を困難にしていた。
しかし連邦航空局(FAA)が目視外飛行を前提とした運用ルールの整備を進めたことで、1人のオペレーターが複数機体を遠隔監視する体制が可能となり、コスト構造は一変した。
これにより、道路渋滞にも天候以外ほぼ影響されず、排気ガスも出さず、最短距離で商品を運べる空の物流網が現実のものとなった。
ウォルマートのデジタル・フルフィルメント部門を統括するグレッグ・キャシー(Greg Cathey)氏は、ドローン宅配は顧客の即時性ニーズを満たす戦略の中核に位置付けられていると語っており、もはや実験的取り組みではない。
アマゾンを凌駕する店舗ネットワークという決定的優位
ドローン分野ではアマゾンも独自開発を進めているが、現時点での最大の差は物理拠点の数である。
ウォルマートは全米人口の約90パーセントが店舗から10マイル以内に住んでいるという圧倒的地理的優位を持ち、店舗そのものがドローンの発着基地として機能する構造をすでに完成させている。
新たな倉庫建設を必要とせず、既存資産を最大活用できる点は、他社が容易に追随できない強みである。
さらにウォルマートは、AIやチャットGPTを活用した買い物体験の高度化を進めており、ドローン配送はその最終到達点として組み込まれている。
ドアダッシュやインスタカートも即配分野に力を入れているが、空の物流まで含めた統合モデルを構築している点で、ウォルマートは明確に一歩先を行く。
ドローン宅配はすでに「未来」ではなく「現在」
ウイングの幹部は、ドローンが来るかどうかではなく、いつあなたの街に来るかの問題だと語っている。
これは誇張ではなく、対象顧客4,000万人規模という数字が示す通り、ドローン宅配はすでに日常インフラへの道を歩み始めている。
かつて高速道路網が物流と都市構造を変えたように、空の配送網は買い物の概念そのものを塗り替えようとしている。
今後、ウォルマートのアプリで配送手段として「ドローン」が当たり前に選択され、30分後には庭先に商品が届く生活が全米に広がっていく可能性は高い。
ドローン宅配は実験室のテクノロジーではなく、ウォルマートの競争戦略そのものであり、ラストワンマイルの主戦場を空へと引き上げる決定打となりつつある。
テキサス州フリスコのウォルマート店舗から離陸し、住宅地の庭先へ商品を静かに降ろすウイングのドローン。卵やホットコーヒーのような繊細な商品でも破損やこぼれなく届けられる段階まで技術は成熟しており、ドローン宅配がすでに日常インフラとして機能し始めていることが分かる実際の配送シーンである。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
最近の米国流通視察でまず最初にお伝えしたいのは「スマホのアプリが使えなければ、視察の半分は見えません」という事実。
AIもアプリ、ロボタクシーに乗るのもアプリ、ネットスーパーで注文するのもアプリ、店での支払いもアプリ、そしてドローン宅配の注文まで全部アプリです。
例えるなら、遊園地に来たのに入場券も地図も持たずに歩き回っているようなもので、「ここは何の乗り物ですか?」と聞いているうちに、肝心のアトラクションは全部通り過ぎてしまいます。
売場を見るだけでは、今のアメリカ小売の“裏側の仕組み”はまったく見えてこないのです。
当社の視察研修では、参加者全員が実際にアプリを操作し、注文し、支払い、受け取るところまで体験します。頭で理解するのではなく、指で理解するわけです。
正直に言えば、これをやらずにDXを語るのは、泳ぎ方を本で読んでオリンピックに出るようなものです。
ちなみに、アプリ操作に慣れていない方ほど最後にこう言います。「最初からやっとけばよかった」と。
ええ、私も最初はそうでした。でも正直に言えば、アプリを使わない視察はDXではなく、ただの海外出張。しかも一番高い航空券を使った社内研修という、なかなか贅沢な趣味です。
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