
アカデミー授賞式後、主演男優賞のオスカー像を横にイン&アウトバーガーの3X3バーガーをかじりつくマイケル・B・ジョーダン。
オスカー像を片手にハンバーガーへ——セレブが証明する「イン&アウトバーガー」という文化装置
ハリウッドの祭典、アカデミー賞。その余韻が残る夜、ひとつの象徴的な光景がSNSを駆け巡った。
主演俳優として脚光を浴びたマイケル・B・ジョーダン(Michael B. Jordan)が、オスカー像を片手に向かった先は高級レストランではない。
選んだのは、カリフォルニア発のハンバーガーチェーン、イン&アウトバーガー(In-N-Out Burger)であった。
授賞式後のパーティーで「お気に入りの映画は?」と問われ、『もののけ姫』と答えたエピソードと相まって、日本でも話題が一気に広がった。
しかし本質はそこではない。世界的セレブが、最も“アメリカ的な日常”に回帰する象徴としてイン&アウトバーガーを選んだことにこそ意味がある。
なぜセレブはイン&アウトバーガーに向かうのか
イン&アウトバーガーは、単なるファストフードチェーンではない。
1948年創業の家族経営を貫き、出店エリアも西海岸中心に限定してきたことで、希少性とブランド価値を維持してきた。上場もせず、フランチャイズも展開しない。
その結果、店舗数は約400店規模にとどまりながらも、1店舗あたりの売上は業界トップクラスを誇る。
セレブがこのブランドを好む理由は明確である。「誰でも同じ体験ができる」という平等性と、「本物志向」の両立だ。
メニューは極めてシンプルだが、裏メニューによってカスタマイズ性を確保している。この“シンプルだが奥深い”構造が、日常と非日常をつなぐ装置となっている。
マイケル・B・ジョーダンの行動は偶然ではない。
過去にもアカデミー賞の夜、セレブがイン&アウトバーガーに立ち寄る光景は繰り返されてきた。
豪華絢爛な世界から一転、紙に包まれたハンバーガーをかじる。そのギャップこそが、ブランド体験の核心である。
大谷翔平が生んだ「日本人にとっての聖地化」
この現象に拍車をかけているのが、大谷翔平である。大谷がイン&アウトバーガー好きを公言したことで、日本人ファンにとってこのチェーンは単なる飲食店ではなくなった。
ロサンゼルスを訪れる日本人の多くが、観光ルートにイン&アウトバーガーを組み込む。
特にロサンゼルス国際空港近くの店舗は、飛行機を見ながらバーガーを食べられることで知られ、“聖地巡礼”の場となっている。
スポーツスターとハリウッドスターという二大セレブの交差点に位置するブランド——それがイン&アウトバーガーである。
この構図は、日本のコンビニやラーメンチェーンでは再現できない。
なぜなら、イン&アウトバーガーは「行かなければ体験できない」ブランドだからだ。日本未進出という事実そのものが、価値を高めている。
最新動向①——ワシントン州・テネシー州進出が示す“熱狂の再現性”
2025年以降、イン&アウトバーガーは従来の西海岸中心の展開から一歩踏み出し、ワシントン州やテネシー州といった新市場への進出を進めた。
ここで注目すべきは、その“出店の仕方”ではなく、“受け入れられ方”である。
新規出店した店舗では、オープン初日から数時間待ちの行列が発生し、ドライブスルーの渋滞が周辺道路にまで波及する現象が繰り返された。
これは単なる新店効果ではない。「ついに来た」という期待が、地域全体を巻き込んだイベントへと昇華しているのである。
特にテネシー州では、従来イン&アウトバーガーが存在しなかった東側エリアでの初展開となり、SNS上では“西海岸の味がやってきた”という文脈で語られた。
ワシントン州においても同様に、スターバックス文化とは異なる“もうひとつの西海岸アイコン”として受け入れられている。
重要なのは、この熱狂が広告ではなく「ブランドへの憧れ」によって生まれている点である。
最新動向②——拡大しないことで価値を守る戦略
こうした人気の高まりにもかかわらず、イン&アウトバーガーは依然として急拡大には踏み切らない。東海岸への進出は見送られ、出店はあくまで段階的に行われている。
その背景には、徹底した品質管理がある。冷凍を使わないビーフ、毎日配送される食材、店舗での手作業調理。
このオペレーションを維持するためには、物流圏内での展開に限定せざるを得ない。成長よりも一貫性を優先するという、ウォルマートやアマゾンとは対極の戦略である。
しかしこの“制約”こそがブランド価値を高めている。
新市場に進出するたびに行列が生まれるのは、供給が需要に追いつかないからではない。「待つ価値がある」と消費者が認識しているからである。
セレブ×地方拡大が生む「全国ブランド化」
これまでイン&アウトバーガーは、西海岸のローカルブランドという側面が強かった。しかし、セレブによる露出と内陸部への進出が重なったことで、その位置づけは変わりつつある。
マイケル・B・ジョーダンのようなハリウッドスターが象徴的な利用シーンを提供し、大谷翔平が国際的な認知を押し上げる。
そして新たな州への進出が、実際の体験機会を広げる。この三位一体の構造によって、イン&アウトバーガーは“体験できる憧れ”へと進化している。
これは従来のナショナルチェーンとは異なる成長モデルである。
広告で全国に知られるのではなく、体験と物語によって徐々に浸透していくブランド戦略だ。
ハンバーガーは「文化」から「巡礼地」へ
オスカー像を持ったままハンバーガーを食べる。その光景は一見ユーモラスだが、実は極めて象徴的である。イン&アウトバーガーは、食事の場を超え、文化的なアイコンとなった。
そして今、その文化はさらに一歩進んでいる。ワシントン州やテネシー州で見られた熱狂が示す通り、イン&アウトバーガーは“巡礼地”としての性格を帯び始めている。
大谷翔平が愛し、ハリウッドスターが訪れ、新市場で行列が生まれる。そこにあるのは、単なる商品ではなく「体験」であり「物語」であり「到達すべき場所」である。
イン&アウトバーガーは、もはやハンバーガーチェーンではない。セレブと一般消費者、そして地域をも巻き込む“移動する文化資本”である。
親日家としても知られているジョーダン氏は超有名インフルエンサーの着物ママともコラボしている。とても紳士的でハンサムだ。

その着物ママとは昨年、流通DXワークショップ研修中にブリストルファームでお会いすることができた。彼女はとても気さくで素敵な女性だ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
イン&アウトバーガーのワシントン州やテネシー州への進出は、単なる新店オープンの枠を超えた“イベント”になっています。
SNSを見ていると、寒空の中で12時間以上並び「一番乗り」を狙う人や、ニュージャージーから飛行機で駆けつけるファンまで現れています。
もはやハンバーガーを買う行為ではなく、人気アーティストのライブに並ぶような熱量です。
こうした現象に拍車をかけているのが、セレブの存在です。
オスカー像を片手にイン&アウトバーガーを訪れたマイケル・B・ジョーダンの姿や、大谷翔平が好物として語るエピソードは、「あの人と同じ体験をしたい」という感情を強く刺激します。
結果として、新店舗のオープンは単なる飲食店の開業ではなく、“物語の舞台に参加する機会”へと変わっているのです。
興味深いのは、これが企業主導のプロモーションではなく、完全に自発的に広がっている点です。
行列そのものがSNSで拡散され、それを見た人がさらに集まる。気づけば店舗前はフェス会場のような一体感に包まれています。
冷静に考えればハンバーガー1つのために飛行機で移動するのは非合理ですが、その非合理さこそがブランドの強さです。並ぶ時間すら価値に変えてしまう——それがイン&アウトバーガーという“文化装置”なのかもしれませんね。
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