


ホームデポが現場の職人向けに提供する「プロ・エクストラ (Pro Xtra)」の最新ダッシュボード画面。直近の注文状況や配達の遅延が一目で確認できるだけでなく、見積もり作成から過去の購入履歴の管理まで、親方が抱えるあらゆる事務作業をひとつの画面で完結できる現場の強力な相棒である。
現場の職人を支える最新アプリと実店舗の猛烈な拡大
ホームデポは2026年3月18日、住宅リフォームや建築を請け負う工務店やリフォーム業者などのプロ向けに、スマートフォンで利用できる業務管理アプリの大幅な機能強化を発表した。
ホームデポにとって、こうした現場の職人たちは売上を牽引する最も重要な顧客である。しかし彼らにとって最大の敵は現場での「時間の無駄」だ。
複数のプラットフォームを使い分けたり、資材の到着を待つために立ち往生したりすることは利益の減少に直結する。
ホームデポは今回のアップデートで、工務店やリフォーム業者が抱える悩みをすべてひとつの画面で解決できる現場の相棒を作り上げたのである。
この機能はプロ・エクストラ (Pro Xtra) というロイヤルティプログラムの会員向けに提供されている。
AIが瞬時に資材をリストアップする魔法の機能
今回の発表で最も注目すべきは、チャットGPTなどで注目を集める最新技術を応用した「マテリアル・リスト・ビルダー (Material List Builder) 」というAI主導の新機能だ。
これまで工務店が新しい仕事の入札をする際、必要な木材や釘などの資材を手作業で計算しリスト化するのは非常に骨の折れる作業だった。
しかしこのAI機能を使えば、システムにどのような工事を行いたいかというプロジェクトの意図を読み込ませるだけで、瞬時に実行可能な資材のリストが自動で作成されるのだ。
例えばキッチンリフォームの依頼を受けた際、おおまかな要件を入力するだけで、必要な配管から建材まで数秒でリストアップされるようなイメージである。
これによりリフォーム業者は見積もり作成にかける時間を劇的に短縮し、より多くの仕事を獲得できるようになる。
分刻みの追跡と複雑な配達スケジュールを完全掌握
現場の進行状況に合わせて資材を完璧なタイミングで届けるための機能も強化された。
大きな木材やコンクリートといった重たい資材は現場のスペースの都合上、早すぎても遅すぎても困る。
新しいアプリでは、まるでフードデリバリーの配達状況を見るように、トラックが今どこを走っているのかを1分単位でリアルタイムに追跡できるようになっている。
また、ある資材は別々の店舗から届くといった複雑な状況でも、現場の責任者はスマホから簡単に別々のスケジュールを組み、現場の状況に合わせて確実に手配することができるのだ。
チーム全員で現場を動かす権限共有システム
親方が常に現場に張り付いているわけにはいかないという現実にもホームデポはしっかり対応している。
新しく追加された共有アクセス機能を使えば、親方が離れた場所にいても現場を任せている部下に一時的な発注権限を与えることができる。
部下が足りなくなったネジや追加の木材をアプリから注文し、親方がスマホで承認するといったスムーズな連携が可能になるのだ。
さらに、過去の購入履歴も簡単に検索できるため、面倒な経費の精算や領収書の管理も劇的に楽になる。
オンラインと実店舗を融合させる怒涛の新規出店
デジタル面の強化だけでなく、ホームデポは実店舗の拡大にも猛烈な勢いで投資している。
多くの小売業が実店舗を閉鎖する中、2026年には8州にまたがって12店舗という新規出店を計画しているのだ。
この店舗網の拡大は、工務店やリフォーム業者向けのデジタルツールと密接に結びついている。
実はホームデポにおけるオンライン注文の半分以上が実店舗を通じて処理されており、店舗が現場の近くにあることで、迅速な即日配達や店舗での素早い受け取りが可能になる。
新しい店舗には職人専用のチームが配置され、1店舗あたり150人以上の雇用を生み出す地域貢献も果たしている。
デスクワークをなくしトラックをオフィスに変える
ホームデポの職人・業者向け部門の責任者は、現場の職人はデスクではなくトラックの中や工事現場、あるいは店舗の通路で仕事をしていると語っている。
この言葉の通り、今回の機能強化と新規出店は徹底的に現場で働く人々のリアルな動きに合わせて作られている。
マジック・エプロン (Magic Apron) のようなAIを使った店舗内ナビゲーション機能もあわせて活用することで、店舗に行く前から仕事が終わるまで、すべてがスムーズに繋がっている。
業界全体が3.3%の株価下落を見せる中、ホームデポの株価も直近3ヶ月で4.5%下落しているものの、工務店や職人向け事業は依然として力強い成長を見せている。
ホームデポの店舗網がもたらす600億ドル(約9兆円)もの莫大な税収などの経済効果と、こうしたAIによるデジタル支援の両輪が、激しい競争が続くアメリカ小売業におけるホームデポの圧倒的な強さを確固たるものにしているのである。
AIが現場の「段取り」を一瞬で変える──ホームデポの最新アプリが、工事内容の入力から資材リストの自動生成、発注、配送追跡、チーム共有までをスマートフォン一つで完結させる様子をデモ形式で紹介している。従来は手作業で行っていた見積もりや手配業務が、数秒で可視化・自動化され、現場の時間ロスを劇的に削減する“次世代のプロ向けワークフロー”が体感できる映像である。

ホームデポ国内店舗数の増減と既存店売上高前年比の推移 緑の棒グラフが示す通り、ホームデポは2000年代前半の猛烈な出店攻勢の後、2009年頃から投資をオムニチャネル化に向け長らく新規出店を極端に抑制してきた。しかし直近の数年間を見ると、再び出店ペースを上げ、店舗網の拡大へと舵を切っていることがはっきりとわかる。本文で触れた2026年の新規出店計画は、実店舗を単なる売り場としてではなく、オンライン注文の処理や現場の職人への迅速な配送拠点として再定義したホームデポの力強い成長戦略の表れだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!
ネットスーパー向けにソリューションを提供するベンチャー企業から、「米国の最先端アプリや顧客体験を学びたい」と相談を受けたことがあります。
そこで私がまずお伝えしたのは「同業界だけを見ていては進化しない」という点です。
多くの企業は同じ業態の事例ばかりを追いかけ、深く掘っているつもりが、いつの間にか狭い井戸の中で競争してしまいます。
今回のホームデポのマテリアル・リスト・ビルダーは、その典型的な“越境事例”です。
工事内容を入力するだけでAIが必要資材を瞬時にリスト化するこの機能は、建築業界の話に見えて、実はネットスーパーの発注や補充、さらには飲食チェーンの仕込み計画にも応用できる発想です。
顧客の「考える手間」を奪い、「次の行動」まで一気に導く。この設計思想こそが共通言語なのです。
お客様にとっては業界の違いなど関係なく、スマホの中で体験は横並びで比較されます。
それでも「うちは特殊だから」と言ってしまうのは、視野が狭くなっているサインかもしれません。
むしろ学ぶべきは遠くの優等生です。
井戸の中で泳ぎ続けるか、大海に出るか――ただ最近は、その井戸の中にもAIが入ってきて「外の方が便利ですよ」と教えてくれる時代です。
カエルもそろそろ引っ越しのタイミングかもしれませんね。
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