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アメリカのZ世代がアルコール離れ レストラン業界に深刻な打撃

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

ブラックフライデーの翌朝、酒販店で割れたボトルと酒の海を残し、トイレ横で泥酔して眠り込んだ“ブラックフライデー・バンディット”ことアライグマの衝撃的な現場。

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昨年末にバズった「酔い潰れアライグマ」

昨年のブラックフライデーの翌朝、バージニア州アッシュランドにある酒販店で、前代未聞の珍客が発見された。

天井のタイルを突き破って店内に侵入したアライグマが、商品である酒のボトルを次々と破壊し、浴びるように飲んだ挙句、トイレの横で泥酔して仰向けに倒れていたのだ。

発見した店長は驚愕し、駆けつけたハノーバー郡の動物管理局員によってこのアライグマは保護された。

被害額はおよそ250ドル(約37,500円)に上ったが、幸いにもアライグマに怪我はなく、数時間ぐっすりと眠って二日酔いを覚ました後、無事に自然へと帰された。

この「ブラックフライデー・バンディット(Black Friday Bandit)」と呼ばれたアライグマの写真はネット上で瞬く間に拡散し、多くの人々の笑いを誘った。

さらには、AI(人工知能)によって生成された偽の犯行動画まで出回るほどのバズりを見せたのである。

酒屋を襲った“泥酔アライグマ事件”をSNLが痛快に風刺――笑いで振り返るブラックフライデー・バンディットの顛末

90年ぶりの低水準を記録したアメリカ人のアルコール消費

しかし、このアライグマが酒を大いに楽しんでいた一方で、現在のアメリカ人はかつてないほどの「アルコール離れ」を引き起こしている

調査会社ギャラップ(Gallup)が2025年に実施した世論調査によると、アルコールを飲むと答えたアメリカ人はわずか54%にとどまり、過去90年間で最低の水準を記録した

しかも、飲酒習慣のある人でさえ、飲む量を意図的に減らしていると回答している。

このアルコール離れの背景には、複合的な要因が絡み合っている。

まず大きいのが健康意識の高まりである。2025年1月、アメリカの医務総監であるビベック・マーシー(Vivek Murthy)は、適度な飲酒であってもがんのリスクを高めるという報告書を発表した。

さらに、アメリカ人の約6%が使用しているとされるGLP-1受容体作動薬(減量薬)の普及も、アルコール消費を抑制する一因となっている

薬の作用によって食欲だけでなく、アルコールへの欲求も低下するためだ。

そして、Z世代やミレニアル世代といった若年層における価値観の変化と経済的な事情も無視できない。

かつて20代の若者が仕事終わりにウイスキーとビールを頼めば7ドルから8ドル(約1,050円から1,200円)程度で済んでいたが、インフレの影響で現在では20ドル(約3,000円)近くに跳ね上がっている。

若者にとって、酒は高嶺の花になりつつあるのだ。ロサンゼルスにあるレストランのオーナーは、Z世代の顧客は店に来ても写真を撮るだけで、ドリンクを一杯飲んだらすぐに帰ってしまうと嘆いている。

利益の柱を失い苦境に立たされる外食産業

この急速なアルコール離れは、アメリカのレストラン業界に深刻な打撃を与えている。なぜなら、レストランにとってアルコール飲料は最も利益率の高い商品だからだ。

食材の仕入れや調理に多大なコストと手間がかかる料理に比べ、酒は注ぐだけで高い利益を生み出す。そのため、酒が売れないことは飲食店の死活問題に直結する。

ニュージャージー州モントクレアにあったバーベキューレストラン「パイナップル・エクスプレス(Pineapple Express)」のオーナーであるデイモン・ワイズ氏は、まさにこの煽りを受けて2026年1月に店を閉じる決断を下した。

開業当初、彼のビジネスモデルは料理で40%、アルコールで60%の売上を上げるという理想的な比率を描いていた。

しかし、ここ2年でその比率は崩れ、最終的には料理が70%を占め、アルコールはわずか30%にまで落ち込んでしまったのである。

テクノミック(Technomic)の調査でも、レストラン経営者の31%がアルコール売上の深刻な減少を報告しており、これはカジュアルな飲食店から高級レストランに至るまで業界全体の構造的な危機となっている。

代替策としてのモクテルと高級志向

この危機を乗り越えるため、飲食店もただ手をこまねいているわけではない。

アイダホ州コールドウェルにあるメキシコ料理店「アマノ(Amano)」のレベッカ・アラミラ氏は、記念日の客に無料で提供していたスパークリングワインが断られるようになったことに気づいた。

そこで、ノンアルコールのスパークリングワインを選択肢に加えたところ、客に喜ばれて受け入れられたという。

これを機に同店ではノンアルコール飲料のモクテル(「擬似的な」を意味するMockとカクテルを組み合わせた、ノンアルコールカクテルの呼び名)のメニューを拡充し、落ち込んだアルコール売上の穴埋めに成功している。

しかし、モクテルへの移行には課題もある。ニューヨークのレストラン「ハース(Hearth)」のオーナーシェフであるマルコ・カノーラ氏が指摘するように、良質な茶葉や新鮮な果汁を使用するモクテルは、アルコール以上に原価や手間がかかる場合がある。

それにもかかわらず、消費者は「アルコールが入っていないのに18ドル(約2,700円)もするのか」と割高に感じてしまう傾向があるのだ。

一方で、単に酒を飲まなくなったわけではなく、より質の高い体験を求める「より思慮深い飲酒」へのシフトも見られる。

アリゾナ州フェニックスにあるメキシコ料理店「チルテ(Chilte)」では、希少なメスカル(アガベを原料として造られるメキシコの蒸溜酒)やメキシコ産ワインなどを揃え、あえて高価格帯の路線を攻めることでアルコール売上を伸ばしている。

若者たちは何杯も安い酒を煽るのではなく、40ドルから50ドル(約6,000円から7,500円)もする珍しいメスカルをグラスで頼み、バーテンダーにその背景や製法を熱心に質問しながら、一晩かけてじっくりと味わうのだという。

小売と外食が直面する新たな消費のパラダイム

アライグマが酒屋で大暴れしたというニュースは滑稽であるが、現実のアメリカ市場で起きているアルコール離れは、外食・小売業にとって笑い事では済まされない構造的なシフトだ。

消費者は健康を重視し、インフレ下で支出を厳しく選別し、アルコールに対して「量より質」、あるいは「全く飲まない」という選択を明確に下すようになっている。

利益率の高い酒に依存してきた従来のビジネスモデルは通用しなくなりつつあり、アメリカの業界全体が、この新しい消費のパラダイムにいかに適応するかを激しく問われているのである。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

昨年、SNSのタイムラインを豪快に駆け抜けた“あの主役”ですから、もうご存じの方も多いのではないでしょうか。

そう、ブラックフライデーの翌朝、酒販店の天井をぶち破って乱入し、店内のボトルを次々と破壊しては浴びるように飲み干し、最後はトイレの横で見事に撃沈していたアライグマです。

まるで宴会で自分の限界を見誤り、気づけば記憶も理性も置き去りにしてしまった“あるあるな光景”を、野生動物が完璧に再現してしまったような出来事でした。

店内に広がる酒の海と割れたボトル、そして仰向けでぐっすり眠る姿は、もはや事件というよりコント。

しかもこの“ブラックフライデー・バンディット”、数時間後には何事もなかったかのように目覚めて帰っていったのですから、二日酔い耐性までプロ級です。

人間界ではいま、Z世代を中心に「アルコール離れ」が進み、飲まないことがむしろ普通になりつつあります。

一方で、野生界ではここまで振り切った飲みっぷりが披露されるわけですから、なんとも皮肉な対比です。

もし次に彼が現れるなら、酒瓶の代わりにノンアルのモクテルを差し出してみたいところですが……たぶん彼は見向きもしないでしょうね。

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